16 / 19
第二章 まさかのんびり生活からの……地獄!?
五歳にして……家出!?
しおりを挟む
初めは、この力を隠しながら家族を守ろうと思っていた。
そうすれば、皆から避けられずに仲良くして暮らせると思っていた。
そして、俺が記憶が戻って数ヶ月。
母さんや父さん、執事たちは俺に優しく接してくれる。
五歳ではありえない身体能力、頭脳、理解力を持っていても、みんなは俺のことを避けずに喜んで受け入れてくれた。
嬉しかった、化け物のような目で見る人達が居なくて。
だが……それは、この過程がおかしかったからに過ぎない。
世界最強の剣士と言われた父、ガイヤ。
高位を魔法を容易く扱う天才魔法使い、マリア。
そして、それを昔から見てきた世界最強の右腕、執事のセバス。
もうこの時点で普通の生活は送れない。
だから、多少力を見せたって、そこまで驚くことではなかったし、世界最強と天才の間に生まれたのなら、このぐらいできて当然、という偏見もあった。
だから、みんなは俺を見てもすごいとだけしか言ってなかった。
だが、やはり化け物は化け物。
「……ごめん、ね」
木に寄りかかって眠る父に、俺は言う。
世界最強の渾身の一撃を粉砕し、殺しかけた相手を、軽く殺した世界最強の息子。
父のプライドはもうボロボロ。
自分よりも強くなっていた息子を見て、無意識に拒絶したのだろう。
まだ、自分が世界で一番強いと思いたかったのだろう。
分かってる。
だけど、それでも心ってのは傷つく。
ましてや、俺も人間。
精神が強い人でも、親に拒絶され、『化け物』と言われたら……
「っ……うぅ……」
誰だって、泣いてしまう。
前世の記憶を持っていても、やはり今の自分の本当の親に嫌われたら。
愛していた、愛されていた親に嫌われたら。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺だって号泣する。
化け物と言った時、瞬間的に父さんを気絶させてしまった馬鹿な自分は。
感情的になり、今も泣く時分は。
これは夢だと思いたいのだ。
数分間、俺は無邪気の子供のように泣いた。
「……」
俺は父さんを抱え、そのまま家の方角へと向かう。
ちゃんと傷はすべて完治して、服も修正した。
このまま記憶ごと封印して、他の記憶にすり替えても良かった。
だが、そうして母さんと話し合いになると、話がごちゃごちゃになる。
だから……俺という存在が、ユトというこの存在が消えれば、問題ないと思った。
そして、新たな記憶……世界最強のガイヤを超える剣士が現れ、アルシュードを殺したという、デタラメながらも、内容としては良いと思った。
俺の自己満足……でもないか。
「……この家の玄関を通るのも、これで最後か」
俺は倒産を抱えながら、玄関の扉を開ける。
すると……
「ユト様……!」
セバスがこちらを振り向き、俺の方へと走ってくる。
そして……俺に抱き着く。
「ご無事で、本当にご無事で……!」
抱き着く力から、本当に心配をしてくれてたんだなと、俺は涙が出そうになる。
だが……それでも、もうやることは決まってる。
「セバス……会えたら、また会おうね」
「え……」
俺はセバスの額に指をつけ、眠らせる。
もう、屋敷に向かう途中、とうさんの記憶変換は完了していた為、もう済んだ。
眠る二人を壁に寄りかからせ、母さん達のいる部屋へと向かう。
その途中、メイド達と遭遇するが、眠らせて記憶変換を繰り返す。
そして……母さん達の気配がする部屋へと入る。
「母さん……」
「!」
ばっと、顔を上げる母さん。
そのまま俺を見た瞬間、母さんは強く抱きしめる。
この、母親の温もり……本当に、俺を愛していると無意識に感じるくらいの愛。
だが……これもお別れ、か。
「ユト、生きてて本当に良かった……良かったよぉ」
「母さん……心配させてごめんね」
「本当よォ……それと、あの人は!?」
「父さんなら、下で……怪我をしたから、セバスに手当てをしてもらってるよ」
心が、痛む。
「そう……」
すると、他の……三人が俺へと突っ込んでくる。
まだまだ小さい俺の体に、飛び込んでくる光景は悪夢そっくりだ。
「あにさまぁぁ! ふぇぇぇ!」
ユリは、もう言葉にならずに泣き喚いている。
「この、ユト様のバカぁ! どれだけ心配したと思いですか!?」
ユキナは、流石にいつものクールな感じは一切無く、少女らしく泣いている。
「ふにゃぁぁぁぁぁ!」
ミゥに関しては、もう猫の言葉で泣いている。
「ごめんね、心配させて……」
母さんが、状況を知らせたのだろう。
みんながみんな、泣いていた。
「ユト、本当に大丈夫だった?」
「ん、あぁ……もう魔族は父さんが倒してくれたよ……だから」
俺は、目から涙を流しながら……魔法を発動させる。
これ以上、自分の身を自分で傷つけないように。
母さんたちを早く楽にさせてあげるために。
「ユ、ト……!?」
瞬間、ここにいる皆が、全員眠ってしまう。
「……へ?」
否、一人だけ。
一人だけ、眠ってはいなかった。
「兄、さま?」
ユリだった。
魔法の不発? いや……魔法に対する適性を持っていたのか?
どういうことだ?
「ユリ……兄様はね、今から兄様じゃなくなるんだよ」
俺はユリの頭を撫で、最高の……俺の心からの笑顔を見せる。
まだ、誰にも見せてなかった、最高の笑顔を。
「へ……あ、兄さまは、ユリの兄さまだよ!? なんでそんなこと……ぁ」
涙を流しながら叫ぶユリに、俺は再度魔法を掛ける。
すると、すんなりと魔法を受け、眠ってしまうユリ。
「……ごめんね、自分勝手な馬鹿野郎で」
記憶変換をして、皆の記憶をすり替える。
ちゃんと、絶対に本当の記憶が解けないように、頑丈に、小さく、薄くして……封印をかける。
例えどんなに俺の姿を見て、匂いをかいでも分からないように。
「……母さん、父さん、ユキナ、ユリ、セバス」
俺は全員の家族の名前を呼ぶ。
そして、ユリの唇にキスをする。
元々ファーストキスは俺なんだ、問題ない……よな?
「俺は……お前たちのことを忘れず、死ぬまで愛している」
どんなに世代が変わろうと、俺はこの五人の名前だけは、忘れないように誓う。
「ここまでしなくても……良かったのかな」
目から溢れ出る大量の涙をみる。
やっぱり、俺。
「ひぐっ……うぅぅぅ!」
悲しいよ。
そして、俺はこの家を……五歳にして旅立った。
~神の間~
「……これで、良かったのかのぉ」
最高神が、言う。
「さぁ……ですが、これでこの家族は助かり、五大貴族が欠けることなく、人間国の均衡は保たれます」
天使が、言う。
「……やはり、人間の心というものは、深いのぉ」
「貴方の心は変態キモすぎカスゴミ以下ですがね」
「君ね、今シリアス的な展開でしょ? それをぶち壊すのはどうかと思うぞ?」
だが、この神たちも、他の神たちも知らなかった。
この先の展開が、まさか神々にも影響することとなるのは。
そうすれば、皆から避けられずに仲良くして暮らせると思っていた。
そして、俺が記憶が戻って数ヶ月。
母さんや父さん、執事たちは俺に優しく接してくれる。
五歳ではありえない身体能力、頭脳、理解力を持っていても、みんなは俺のことを避けずに喜んで受け入れてくれた。
嬉しかった、化け物のような目で見る人達が居なくて。
だが……それは、この過程がおかしかったからに過ぎない。
世界最強の剣士と言われた父、ガイヤ。
高位を魔法を容易く扱う天才魔法使い、マリア。
そして、それを昔から見てきた世界最強の右腕、執事のセバス。
もうこの時点で普通の生活は送れない。
だから、多少力を見せたって、そこまで驚くことではなかったし、世界最強と天才の間に生まれたのなら、このぐらいできて当然、という偏見もあった。
だから、みんなは俺を見てもすごいとだけしか言ってなかった。
だが、やはり化け物は化け物。
「……ごめん、ね」
木に寄りかかって眠る父に、俺は言う。
世界最強の渾身の一撃を粉砕し、殺しかけた相手を、軽く殺した世界最強の息子。
父のプライドはもうボロボロ。
自分よりも強くなっていた息子を見て、無意識に拒絶したのだろう。
まだ、自分が世界で一番強いと思いたかったのだろう。
分かってる。
だけど、それでも心ってのは傷つく。
ましてや、俺も人間。
精神が強い人でも、親に拒絶され、『化け物』と言われたら……
「っ……うぅ……」
誰だって、泣いてしまう。
前世の記憶を持っていても、やはり今の自分の本当の親に嫌われたら。
愛していた、愛されていた親に嫌われたら。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺だって号泣する。
化け物と言った時、瞬間的に父さんを気絶させてしまった馬鹿な自分は。
感情的になり、今も泣く時分は。
これは夢だと思いたいのだ。
数分間、俺は無邪気の子供のように泣いた。
「……」
俺は父さんを抱え、そのまま家の方角へと向かう。
ちゃんと傷はすべて完治して、服も修正した。
このまま記憶ごと封印して、他の記憶にすり替えても良かった。
だが、そうして母さんと話し合いになると、話がごちゃごちゃになる。
だから……俺という存在が、ユトというこの存在が消えれば、問題ないと思った。
そして、新たな記憶……世界最強のガイヤを超える剣士が現れ、アルシュードを殺したという、デタラメながらも、内容としては良いと思った。
俺の自己満足……でもないか。
「……この家の玄関を通るのも、これで最後か」
俺は倒産を抱えながら、玄関の扉を開ける。
すると……
「ユト様……!」
セバスがこちらを振り向き、俺の方へと走ってくる。
そして……俺に抱き着く。
「ご無事で、本当にご無事で……!」
抱き着く力から、本当に心配をしてくれてたんだなと、俺は涙が出そうになる。
だが……それでも、もうやることは決まってる。
「セバス……会えたら、また会おうね」
「え……」
俺はセバスの額に指をつけ、眠らせる。
もう、屋敷に向かう途中、とうさんの記憶変換は完了していた為、もう済んだ。
眠る二人を壁に寄りかからせ、母さん達のいる部屋へと向かう。
その途中、メイド達と遭遇するが、眠らせて記憶変換を繰り返す。
そして……母さん達の気配がする部屋へと入る。
「母さん……」
「!」
ばっと、顔を上げる母さん。
そのまま俺を見た瞬間、母さんは強く抱きしめる。
この、母親の温もり……本当に、俺を愛していると無意識に感じるくらいの愛。
だが……これもお別れ、か。
「ユト、生きてて本当に良かった……良かったよぉ」
「母さん……心配させてごめんね」
「本当よォ……それと、あの人は!?」
「父さんなら、下で……怪我をしたから、セバスに手当てをしてもらってるよ」
心が、痛む。
「そう……」
すると、他の……三人が俺へと突っ込んでくる。
まだまだ小さい俺の体に、飛び込んでくる光景は悪夢そっくりだ。
「あにさまぁぁ! ふぇぇぇ!」
ユリは、もう言葉にならずに泣き喚いている。
「この、ユト様のバカぁ! どれだけ心配したと思いですか!?」
ユキナは、流石にいつものクールな感じは一切無く、少女らしく泣いている。
「ふにゃぁぁぁぁぁ!」
ミゥに関しては、もう猫の言葉で泣いている。
「ごめんね、心配させて……」
母さんが、状況を知らせたのだろう。
みんながみんな、泣いていた。
「ユト、本当に大丈夫だった?」
「ん、あぁ……もう魔族は父さんが倒してくれたよ……だから」
俺は、目から涙を流しながら……魔法を発動させる。
これ以上、自分の身を自分で傷つけないように。
母さんたちを早く楽にさせてあげるために。
「ユ、ト……!?」
瞬間、ここにいる皆が、全員眠ってしまう。
「……へ?」
否、一人だけ。
一人だけ、眠ってはいなかった。
「兄、さま?」
ユリだった。
魔法の不発? いや……魔法に対する適性を持っていたのか?
どういうことだ?
「ユリ……兄様はね、今から兄様じゃなくなるんだよ」
俺はユリの頭を撫で、最高の……俺の心からの笑顔を見せる。
まだ、誰にも見せてなかった、最高の笑顔を。
「へ……あ、兄さまは、ユリの兄さまだよ!? なんでそんなこと……ぁ」
涙を流しながら叫ぶユリに、俺は再度魔法を掛ける。
すると、すんなりと魔法を受け、眠ってしまうユリ。
「……ごめんね、自分勝手な馬鹿野郎で」
記憶変換をして、皆の記憶をすり替える。
ちゃんと、絶対に本当の記憶が解けないように、頑丈に、小さく、薄くして……封印をかける。
例えどんなに俺の姿を見て、匂いをかいでも分からないように。
「……母さん、父さん、ユキナ、ユリ、セバス」
俺は全員の家族の名前を呼ぶ。
そして、ユリの唇にキスをする。
元々ファーストキスは俺なんだ、問題ない……よな?
「俺は……お前たちのことを忘れず、死ぬまで愛している」
どんなに世代が変わろうと、俺はこの五人の名前だけは、忘れないように誓う。
「ここまでしなくても……良かったのかな」
目から溢れ出る大量の涙をみる。
やっぱり、俺。
「ひぐっ……うぅぅぅ!」
悲しいよ。
そして、俺はこの家を……五歳にして旅立った。
~神の間~
「……これで、良かったのかのぉ」
最高神が、言う。
「さぁ……ですが、これでこの家族は助かり、五大貴族が欠けることなく、人間国の均衡は保たれます」
天使が、言う。
「……やはり、人間の心というものは、深いのぉ」
「貴方の心は変態キモすぎカスゴミ以下ですがね」
「君ね、今シリアス的な展開でしょ? それをぶち壊すのはどうかと思うぞ?」
だが、この神たちも、他の神たちも知らなかった。
この先の展開が、まさか神々にも影響することとなるのは。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
20
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる