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貧乳お嬢様「あなたはエッチなもの見るの禁止ですわ!」

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トイレに行って帰ってきた途端に彼女である美月にそう言われ、あまりにいきなりだったので面食らった。

「急にどうしたんだ、美月」

「どうしたもこうしたもありませんわ!なんですの!これは!」

そう言って美月が指さしているのは俺のパソコン......の秘蔵ファイル、”えちえち巨乳”。
そのファイルは開かれた状態で、数多の女性たちが惜しげもなくそのボンッッ!!キュ、ボンな体を披露していた。

「なんですの!やっぱり乳ですの!あんな脂肪の塊のどこがいいんですの!」

「落ち着け美月」

「これで落ち着いていられますの!こんなもの....っ」

美月がいきなり落ち着いてパソコンを操作し始めた。
全選択....右クリック....削じ....

「スト―ップ!」

美月の凶手からギリギリのところでパソコンを奪取した。
中学のころからコツコツとネットの海で拾い上げてきたお宝たちを、こんなことで失うのはなんとしてでも避けなければならない。

「美月、世の中にはやっていいことと悪いことがあるんだ」

「貧乳の彼女がいるのに巨乳のエロ画像を集めることですわ」

それはそう。

「と、ともかく、この画像たちを消すのは駄目だ」

「しかたありません、その画像を削除することは諦めますわ。しかし、あなたがエッチなもを見るのは禁止にすることは決定事項ですわ」

そこは譲歩してもらえなかったか.....。
まあ仕方ない、美月の言う事なら....

あれ?

俺だけ一方的に我慢させられるのは理不尽じゃないか?

「ならば美月はスイーツ禁止だ!」

「――――なんですの!!」

「俺だけ我慢させられるのは理不尽だから、美月にも我慢してもらうぞ!」

そう言って美月のお腹を一突き。ぷに。
胸を一突き。コツン。

「がはッ!」

仕返しにお腹にキックを貰ってしまった。

「等価交換ですわ」

「全ッ然つりあってねぇ.....」

「しかしながら、たしかに最近少しお腹周りが丸くなってきているのは事実ですわ。お互い、あの、その.....えっち....な画像を見ることと、スイーツを食べることが禁止ということでよろしいですわね」

えっち、という言葉に恥じらいを覚える美月カワイイ。

「あとでしんどいって弱音吐くんじゃないぞ~」

「こちらこそ、あなたがエッチな画像を見たら今度こそあのフォルダを全て削除しますわ」

流石に美月のスイーツ欲に負けるなんてありえない。

「ところで、どうやって俺がエッチな画像を見たって判定するんだ?」

「あなたがエッチな画像を見た後には、栗の花のような匂いがしますわ」

....。
今までのナニ、モロバレだったってこと....?


・・・


1日目

「どうだ美月? そろそろスイーツが食べたくなったんじゃないのか?」

「なめないでくださいまし! ダイエットは私の得意分野ですわ!」

あの勝負が始まって翌日、俺たちは普段と変わらないように生活を送っていた。
忙しい時期なんかは数日出さなかったりすることはままあることだし、また美月もダイエットは何度も繰り返しているので慣れたものだ。

「何度も繰り返しているは余計ですわ!」

「別にそんなこと思ってないデス、ハイ」

ともかく、その後はいつも通り授業、部活と過ごし、1日目は何事もなく終わった。


・・・


2日目

「あー」

起床。このベッドには俺しか寝ていないはずなのに、起き上がったシルエットは2つ....。
って、おれの息子か!

......。
....。

すっげぇムラムラする。

普段は1日2日抜かなかっただけでこんなにも性欲を持て余すことはなかったが、一日中えっちなもの禁止だということを意識してしまうと、自然と貯まるのも早くなってしまったのかもしれない。

それによく考えれば美月がスイーツ断ちの最高記録は15日。俺の性欲は到底15日もの間抑えられるものではないため、この勝負負け確定なのではないだろうか。

こうなればとるべき手段は一つ。

美月にスイーツを食わせるのだ。



「失礼しますわ」

「きたか、美月」

授業が終わって放課後。
部員二人の紅茶部のため、いつも通り美月が部室にやってきた。

「はっ......それは....!?」

「うめー!」

昨日2時間並んで買った、超人気店のケーキ。
俺はそれをこれ見よがしに口にしていた。

「クリームが最高だなー!!」

「あなた! ずるいですわよ!」

「なになに、ちゃんと美月の分も買ってあるぞ」

「ほんとですの!? って、私に約束を破らせようとする魂胆ですわね!」

「でも今日中に食べないとだめらしいぞ」

「ぐぬぬ......」

美月は唸りながら俺の周りをグルグル回り、俺の食べているケーキにチラチラと視線を送っている。

「ほらほら、食べ終わったぞ~。いらないなら冷蔵庫の美月の分も食べないとな~」

俺は冷蔵庫におもむろを開け2つ目のケーキを取り出し、それをおもむろに美月の前に置いた。
美月はどうやらケーキから目が離せない様子。

「いいのか、見るだけで? まあ、いらないってことなら、いただきまーす!」

「あ......」

俺は大きくケーキの先をフォークで切り、それをゆっくりと、見せつけるように口に運んだ。

「んーうま――ッ!!」

突然の異変に、頬張る際に閉じた目を開ける。

美月の顔。

美月はいきなり俺の唇を奪っていたのだ。

え、舌入ってない!?
顔エロ......。
甘......。

「!!!???」

かなり長いキスから開放され、いきなりのことで呆然としていると、

「私はあなたにキスをしただけで、スイーツは食べてませんわ」

と美月。

勝ち誇ったようにそう言う美月も、顔が真っ赤でうつむいていてはキマらない。

俺はその場の空気をごまかすように残りのケーキを急いで口に入れた。

「じゃあ、ダージリンでも淹れるか.....」

「そうですわね......」

今日はいつも以上にカップに触れる美月の唇に目がいって、紅茶の味は全く分からなかった。
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