圏ガク!!

はなッぱち

文字の大きさ
307 / 411
蜜月

箱入りのエロ事情

しおりを挟む
 オレの下らない企みは大失敗に終わった。突き付けられる現実は、楽しいはずの休日を後悔で塗り潰す。罰のように虚無った一日を過ごす事になった。

「夷川君、あの……大丈夫?」

 一度も起床する事なく正午まで、部屋でうつ伏せになって寝ているオレに、狭間は恐る恐る声をかけてきた。頭だけを動かして見上げると、狭間の視線はオレの下半身に注がれている。ケツを負傷した事はバレているようで、気まずさで返事するのを躊躇ってしまう。

「あのね、辛いなら医務室で診てもらった方がいいよ」

「……」

 大丈夫と言う事も出来ず見上げていると、狭間は視線に気付いたのか諭すように続けた。

「多分、ちゃんとお薬か湿布があると思うんだ。同じような症状の人が医務室に入っていくの見た事あるから」

「……ケツを腫らした馬鹿がオレ以外にもいるのか」

「うん、結構な数ね」

 そんな馬鹿なと思ったが、その馬鹿は野村の体罰で量産されていると聞き、即座に木刀でケツを叩かれている姿が思い浮かび納得してしまった。今は何時代なんだと思わなくもないが、情けない理由での医務室訪問の前例があるのはありがたい。

 狭間に手を借りながら、布団から起き上がり、死体のような足取りでオレは医務室に向かう。

 よほど頼りない足取りだったらしく、布団を片づけた狭間が追いかけて医務室前まで付き添ってくれた。何から何まで申し訳なく思う。きっと狭間なら、惚れた奴に愛想を尽かされるような痴態は死んでも見せまい。現実が重くのしかかって、ちょっと泣きそうになった。

「清ボン、どないしたんやぁ、けったいな歩き方して」

 医務室に先客はおらず、オレは遠慮なくケツを丸出しにして、じいちゃんの疑問に答えた。いきなりパンツまで脱いだというのに、じいちゃんは別段驚くでもなく「はあはあ、またえらい腫れてしもて」と治療台を引っ張って近づいてくる。

「どれ、見せてみ……虫にでも刺されたんか?」

 虫刺されではないと言うと、じいちゃんは怪訝な顔になった。

「清ボンは一年生やろ。野村先生の授業はないはずや。なんで叩かれたんや」

 ケツ叩きとイコールで野村の名前が出て来るというのは、圏ガクでは常識のようだ。こんなふうに生徒の怪我を見れば、どの教師の体罰か分かってしまうというのは、圏ガクならではだなと微笑ましく思った。

「野村……先生じゃないよ。先輩に怒られたんだ」

「勝ボンにか? なんや、いたずらでもしよったんか」

 野村が相手ではないと分かり、じいちゃんは真面目な顔を崩した。緑色っぽい軟膏を湿布に塗りたくり、べちゃっとオレのケツに貼りつける。熱っぽいケツに湿布の冷たさは気持ちよかった。

「はよ勝ボンに謝って仲直りしいや」

 ケツの治療を終え医務室を出る前、じいちゃんがニコニコしながらそう言った。

「出来るかな……めちゃくちゃ怒ってた。オレ、先輩に迷惑しかかけてない」

 弱気がここぞとばかりに外へ飛び出した。

「そんなもん、勝ボンが気にするかいな。今ごろ怒ってしもたぁっ言うて後悔しとるわ。せやから、はよう謝りぃ」

 けれどオレの弱気は全部、ケツの痛みと一緒に、じいちゃんが笑い声で追い払ってくれた。





 先輩に謝る! 活力が満ちても、勢いだけで突撃する訳にはいかない。それだけじゃあ駄目なのだ。先輩が手を上げるくらい怒ったのは初めて。それだけ本気で怒っている。

『なんで怒られたか、ちゃんと分かってるか』

 その理由をしっかり考えなければいけない。生徒会との関わりは断った。オレが甘えた気持ちを出さなければ、生徒会は元から関係ない。オレが行かなければ柏木から絡んでくる事はないのだ。

「問題はコレ……だな」

 自室で問題のエロマンガを広げ唸る。この行為が先輩を激怒させた原因と言って間違いない。なら、ここから先輩の怒りの原因を探る!

「んあ、なんじゃ、賢者タイムか?」

 部屋に戻ってきた由々式が嫌そうな顔をした。違うと答えれば、ずかずかと近づいてきて、オレの手元をのぞき込んだ。

「これ、夏休みにワシが餞別に渡したやつじゃな」

 その通りだ。こんなにエロいのは正直初めてだった。だから、参考にした。

「なあ由々式、これってエロいよな」

 問題のページを指さし質問する。当然のように肯定が返ってくる。

「だよな……こうゆう事されたら嬉しいよな」

「え?」

 オレの相づちに由々式が妙な声を上げた。思わずオレも「え?」と返してしまう。

「普通に引くじゃろ。こんなんただのビッチだべ。リアルにこんなんしとる奴は頭イカレとるべ」

 衝撃的な指摘にオレは言葉を失った。ビッチ? 頭イカレとる? どういう事だ。オレは頭イカレててビッチなのか? そんなまさか!!

「じゃ、じゃあ普通ってどんなだよ! 普通にエロいってどうゆうのだよ! 見せてみろよ!」

 屈辱的な言葉を浴びせられ、条件反射的に食ってかかる。すると、面倒くさそうに由々式は手にしたタブレットを操作し、オレに手渡してきた。

「嗜好なんて人それぞれじゃがのう、ま、男子高校生(校内調べ)に人気のエロっていう意味じゃあ……この辺じゃ」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

僕、天使に転生したようです!

神代天音
BL
 トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。  天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

姉が結婚式から逃げ出したので、身代わりにヤクザの嫁になりました

拓海のり
BL
芳原暖斗(はると)は学校の文化祭の都合で姉の結婚式に遅れた。会場に行ってみると姉も両親もいなくて相手の男が身代わりになれと言う。とても断れる雰囲気ではなくて結婚式を挙げた暖斗だったがそのまま男の家に引き摺られて──。 昔書いたお話です。殆んど直していません。やくざ、カップル続々がダメな方はブラウザバックお願いします。やおいファンタジーなので細かい事はお許しください。よろしくお願いします。 タイトルを変えてみました。

fall~獣のような男がぼくに歓びを教える

乃木のき
BL
お前は俺だけのものだ__結婚し穏やかな家庭を気づいてきた瑞生だが、元恋人の禄朗と再会してしまう。ダメなのに逢いたい。逢ってしまえばあなたに狂ってしまうだけなのに。 強く結ばれていたはずなのに小さなほころびが2人を引き離し、抗うように惹きつけ合う。 濃厚な情愛の行く先は地獄なのか天国なのか。 ※エブリスタで連載していた作品です

処理中です...