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蜜月
箱入りのエロ事情
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オレの下らない企みは大失敗に終わった。突き付けられる現実は、楽しいはずの休日を後悔で塗り潰す。罰のように虚無った一日を過ごす事になった。
「夷川君、あの……大丈夫?」
一度も起床する事なく正午まで、部屋でうつ伏せになって寝ているオレに、狭間は恐る恐る声をかけてきた。頭だけを動かして見上げると、狭間の視線はオレの下半身に注がれている。ケツを負傷した事はバレているようで、気まずさで返事するのを躊躇ってしまう。
「あのね、辛いなら医務室で診てもらった方がいいよ」
「……」
大丈夫と言う事も出来ず見上げていると、狭間は視線に気付いたのか諭すように続けた。
「多分、ちゃんとお薬か湿布があると思うんだ。同じような症状の人が医務室に入っていくの見た事あるから」
「……ケツを腫らした馬鹿がオレ以外にもいるのか」
「うん、結構な数ね」
そんな馬鹿なと思ったが、その馬鹿は野村の体罰で量産されていると聞き、即座に木刀でケツを叩かれている姿が思い浮かび納得してしまった。今は何時代なんだと思わなくもないが、情けない理由での医務室訪問の前例があるのはありがたい。
狭間に手を借りながら、布団から起き上がり、死体のような足取りでオレは医務室に向かう。
よほど頼りない足取りだったらしく、布団を片づけた狭間が追いかけて医務室前まで付き添ってくれた。何から何まで申し訳なく思う。きっと狭間なら、惚れた奴に愛想を尽かされるような痴態は死んでも見せまい。現実が重くのしかかって、ちょっと泣きそうになった。
「清ボン、どないしたんやぁ、けったいな歩き方して」
医務室に先客はおらず、オレは遠慮なくケツを丸出しにして、じいちゃんの疑問に答えた。いきなりパンツまで脱いだというのに、じいちゃんは別段驚くでもなく「はあはあ、またえらい腫れてしもて」と治療台を引っ張って近づいてくる。
「どれ、見せてみ……虫にでも刺されたんか?」
虫刺されではないと言うと、じいちゃんは怪訝な顔になった。
「清ボンは一年生やろ。野村先生の授業はないはずや。なんで叩かれたんや」
ケツ叩きとイコールで野村の名前が出て来るというのは、圏ガクでは常識のようだ。こんなふうに生徒の怪我を見れば、どの教師の体罰か分かってしまうというのは、圏ガクならではだなと微笑ましく思った。
「野村……先生じゃないよ。先輩に怒られたんだ」
「勝ボンにか? なんや、いたずらでもしよったんか」
野村が相手ではないと分かり、じいちゃんは真面目な顔を崩した。緑色っぽい軟膏を湿布に塗りたくり、べちゃっとオレのケツに貼りつける。熱っぽいケツに湿布の冷たさは気持ちよかった。
「はよ勝ボンに謝って仲直りしいや」
ケツの治療を終え医務室を出る前、じいちゃんがニコニコしながらそう言った。
「出来るかな……めちゃくちゃ怒ってた。オレ、先輩に迷惑しかかけてない」
弱気がここぞとばかりに外へ飛び出した。
「そんなもん、勝ボンが気にするかいな。今ごろ怒ってしもたぁっ言うて後悔しとるわ。せやから、はよう謝りぃ」
けれどオレの弱気は全部、ケツの痛みと一緒に、じいちゃんが笑い声で追い払ってくれた。
先輩に謝る! 活力が満ちても、勢いだけで突撃する訳にはいかない。それだけじゃあ駄目なのだ。先輩が手を上げるくらい怒ったのは初めて。それだけ本気で怒っている。
『なんで怒られたか、ちゃんと分かってるか』
その理由をしっかり考えなければいけない。生徒会との関わりは断った。オレが甘えた気持ちを出さなければ、生徒会は元から関係ない。オレが行かなければ柏木から絡んでくる事はないのだ。
「問題はコレ……だな」
自室で問題のエロマンガを広げ唸る。この行為が先輩を激怒させた原因と言って間違いない。なら、ここから先輩の怒りの原因を探る!
「んあ、なんじゃ、賢者タイムか?」
部屋に戻ってきた由々式が嫌そうな顔をした。違うと答えれば、ずかずかと近づいてきて、オレの手元をのぞき込んだ。
「これ、夏休みにワシが餞別に渡したやつじゃな」
その通りだ。こんなにエロいのは正直初めてだった。だから、参考にした。
「なあ由々式、これってエロいよな」
問題のページを指さし質問する。当然のように肯定が返ってくる。
「だよな……こうゆう事されたら嬉しいよな」
「え?」
オレの相づちに由々式が妙な声を上げた。思わずオレも「え?」と返してしまう。
「普通に引くじゃろ。こんなんただのビッチだべ。リアルにこんなんしとる奴は頭イカレとるべ」
衝撃的な指摘にオレは言葉を失った。ビッチ? 頭イカレとる? どういう事だ。オレは頭イカレててビッチなのか? そんなまさか!!
「じゃ、じゃあ普通ってどんなだよ! 普通にエロいってどうゆうのだよ! 見せてみろよ!」
屈辱的な言葉を浴びせられ、条件反射的に食ってかかる。すると、面倒くさそうに由々式は手にしたタブレットを操作し、オレに手渡してきた。
「嗜好なんて人それぞれじゃがのう、ま、男子高校生(校内調べ)に人気のエロっていう意味じゃあ……この辺じゃ」
「夷川君、あの……大丈夫?」
一度も起床する事なく正午まで、部屋でうつ伏せになって寝ているオレに、狭間は恐る恐る声をかけてきた。頭だけを動かして見上げると、狭間の視線はオレの下半身に注がれている。ケツを負傷した事はバレているようで、気まずさで返事するのを躊躇ってしまう。
「あのね、辛いなら医務室で診てもらった方がいいよ」
「……」
大丈夫と言う事も出来ず見上げていると、狭間は視線に気付いたのか諭すように続けた。
「多分、ちゃんとお薬か湿布があると思うんだ。同じような症状の人が医務室に入っていくの見た事あるから」
「……ケツを腫らした馬鹿がオレ以外にもいるのか」
「うん、結構な数ね」
そんな馬鹿なと思ったが、その馬鹿は野村の体罰で量産されていると聞き、即座に木刀でケツを叩かれている姿が思い浮かび納得してしまった。今は何時代なんだと思わなくもないが、情けない理由での医務室訪問の前例があるのはありがたい。
狭間に手を借りながら、布団から起き上がり、死体のような足取りでオレは医務室に向かう。
よほど頼りない足取りだったらしく、布団を片づけた狭間が追いかけて医務室前まで付き添ってくれた。何から何まで申し訳なく思う。きっと狭間なら、惚れた奴に愛想を尽かされるような痴態は死んでも見せまい。現実が重くのしかかって、ちょっと泣きそうになった。
「清ボン、どないしたんやぁ、けったいな歩き方して」
医務室に先客はおらず、オレは遠慮なくケツを丸出しにして、じいちゃんの疑問に答えた。いきなりパンツまで脱いだというのに、じいちゃんは別段驚くでもなく「はあはあ、またえらい腫れてしもて」と治療台を引っ張って近づいてくる。
「どれ、見せてみ……虫にでも刺されたんか?」
虫刺されではないと言うと、じいちゃんは怪訝な顔になった。
「清ボンは一年生やろ。野村先生の授業はないはずや。なんで叩かれたんや」
ケツ叩きとイコールで野村の名前が出て来るというのは、圏ガクでは常識のようだ。こんなふうに生徒の怪我を見れば、どの教師の体罰か分かってしまうというのは、圏ガクならではだなと微笑ましく思った。
「野村……先生じゃないよ。先輩に怒られたんだ」
「勝ボンにか? なんや、いたずらでもしよったんか」
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「はよ勝ボンに謝って仲直りしいや」
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「出来るかな……めちゃくちゃ怒ってた。オレ、先輩に迷惑しかかけてない」
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先輩に謝る! 活力が満ちても、勢いだけで突撃する訳にはいかない。それだけじゃあ駄目なのだ。先輩が手を上げるくらい怒ったのは初めて。それだけ本気で怒っている。
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