圏ガク!!

はなッぱち

文字の大きさ
327 / 411
蜜月

冬休みのはじまり

しおりを挟む
 呼吸が落ち着くまで、立ち止まって先輩の姿を目で追う。

「…………」

 さっきまでは自分と比べて、その差に絶望感しかなかった。けれど、今は自然とその姿に見入っていた。

 先輩の姿を真似て走る。そんな事をしてもオレの体力のなさは埋まらないが、愚痴るのは止めて、ただ走った。

 先輩が何度か横を走り抜けていく。最初は「大丈夫か?」とか「無理するなよ」とか、心配そうに速度を落として声をかけてくれていたが、オレの走るペースが安定すると、先輩は自分のペースで走り続けた。

 走った距離を換算すると、とてつもない差が出来てしまっているだろうが、最後まで一緒に走り続けてからオレはぶっ倒れた。

 朝飯前にマラソンは出来ないと痛感。本気で立ち上がれなくなったオレは、部屋まで自力で帰れなくなり、心配そうな先輩の背中の上で全力の反省をした。

 この件で身の程を知り、今後のトレーニングはオレに合わせてメニューを組んで貰えるよう頼んだ。先輩もどこかホッとした顔で承諾してくれた。

 先輩との差を見せつけられた早朝マラソン後は、自分の中にあった妙な焦りも消え、心と体に余裕を持てるようになった。別に先輩を格闘や競技で倒す事が目的じゃあない。要は体力や気力を鍛え、セックスにかけられる時間を増やせばいいのだ。毎朝フルマラソンを敢行する必要は断じてない。

 無理せず体を動かし、徐々にでも先輩の性欲を受け止められる量を増やす。目標設定としては小さいが、毎日続ければ、いつの日か一晩に四回くらいヤレるはずなのだ。

 冬休みに入る頃には、絶頂時に絶望だけでなく、そんな希望も感じられるようになった。二回戦に挑戦する事は出来なくとも、先輩が射精するのを見届けてから睡魔に身を任せる……くらいの成長は出来たからな。

「冬休みの目標は一回で二回ヤル事だな」

 冬休み初日。身内を見送り食堂で一人冬休みの野望を胸に刻んでいると、帰り支度を済ませたじいちゃんに呼び止められた。

「清ボン、ちょっと来ぃ。ええもんやろ」

 飴でもくれるのかと思い、下山の挨拶がてら付いて行くと、じいちゃんが自室として使っている医務室の隣の部屋へと招かれる。

「毎日寒いやろ。せやから、これ貸したろな。先生に見つからんよう部屋に持って行き」

 そして、実に魅力的な餞別を置いて行ってくれた。



「おぉー、これは……」

 人気がなくなった旧館にやってきた先輩をじいちゃんの部屋に連れて行き、事情を話すとオレと同じく嬉しそうな顔をしてくれた。

 じいちゃんがオレらに残してくれたのはコタツだった。

「オレ、コタツって初めてなんだ」

 テレビのドラマか何かで見た事はあったが、実物を見るのは初めてだ。

「ん、これはありがたいな。今日は天気も良いから、布団を干して今夜から使わせてもらおう」

 部屋に持ち帰る事に先輩も快諾してくれたので、早速コタツと大量のみかんが入った段ボール(これも餞別)を抱え、いそいそと先輩の部屋へと運び込む。

 しばらく干されていなかったろう、くったりした布団を屋上のフェンスで天日干しして復活させ、狭い部屋のど真ん中へとセッティングする。布団を干している間に選別したみかんを新聞紙で作った箱に積み上げ、コタツの中央に置くと、先輩の部屋は冬休みを過ごす上で最強と呼ぶに相応しい部屋へと変貌した。

 そろりとコタツに下半身を突っ込む。外を走り回っていた足がじんわりと温まり、オレは堪らず頭からコタツに潜り込んだ。

「ヤバイ。オレここから出たくない」

 顔だけをコタツから出すと、先輩もオレの隣に腰を下ろして「おぉ、こうゆう感じか」と嬉しそうな声を上げる。先輩に合わせる為、オレも改めて座り直すと、狭いコタツの中で自然と足が当たった。先輩は足が触れる度、オレに場所を譲るよう避けるのだが、それを追いかけ爪先で先輩の足をくすぐる遊びをしていると「こっち来るか?」と先輩が困ったように笑う。

「さすがに一つの場所に二人で入るのは狭いって。コタツ浮いちゃうじゃん」

「そうだな、じゃあ手でも繋ぐか」

 暗に足癖の悪さを注意されているのだろうが、くれると言うなら遠慮なく手も貰う。もちろん、足もガッチリと絡めてやると、先輩も諦めてオレの方を向いて寝転がってくれる。外の作業で冷え切った先輩の手を握ると、ふにゃっと先輩の表情が緩む。

「冬休みは夏休みと違って、朝はそんなに早くないんだって」

 先輩と合流する前、残留連中を集めた場で、冬休みのスケジュールが発表された訳だが、早朝四時起床……なんて事はなく、割と常識的なタイムスケジュールだった。と言うか、夏休みの部活組と同じなんじゃあないか? そんな生ぬるくていいのかと思わないでもないが、コタツの魔力か、心地良い眠気が幅を効かせる附抜けた思考回路は、何の疑問もなく好待遇を受け入れていた。

「奉仕作業自体が少ないらしいな。公民館を借りて、冬休みの課題をやったりするって聞いたぞ」

「え、それって先輩も?」

 先輩の言葉で一気に目が覚める。あっさり頷かれてしまい、オレはがっくりと肩を落とした。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

狂わせたのは君なのに

一寸光陰
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※この物語はフィクションです。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。 ■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。 ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...