350 / 411
蜜月
小さなゆめ三つ
しおりを挟む
「今の人が君の言う『先生』なんだね?」
先輩に弄ばれている中、慌てた様子で店長が尋ねてきた。そうだと答えると、小吉さんに肘をブチ込んでくれた店員を連れて、担任たちの後を追いかけていった。
「お前ら、何をやってたんだ?」
先輩の疑問に一から答えてやると、放置されていたカートの中を覗いて、何故か溜め息を吐きやがった。
「他に買う物いっぱいあっただろう。なんで酒からいっちまったんだ」
「オレらに関係ない物だったから。オレらの物を買うのは先輩が戻ってからにしたかったんだよ。何食いたいか一緒に相談しながら買いたいじゃん」
自分たちの食いたい物を買っていいなんて、滅多にない。予算はあるだろうが、真剣に考えたいって思うのは普通だと思うのだが、先輩には笑われてしまった。
「金の事は考えなくていい。セイシュンが欲しいって思う物、全部買って帰ろう」
全力でオレを甘やかす気だ。だが、そうはさせない。せっかく今日の食い扶持は担任……が出すのは変だよな、じゃあと学校が出してくれるのか? いまいち金の出所が分からないが、とにかく先輩が自腹を切る必要はないのだ。
「全部買ったら車一台じゃあ足らないだろ。先輩を破産させる気はないからな。担任に予算聞いて、食いたい物を厳選しようぜ」
オレの提案に残念そうな顔を見せる先輩を「ルールがある方がゲームみたいで楽しいじゃん」と説得していると、色々と片付けてきたらしい担任が戻って来た。しかし、拉致られた小吉さんの姿はなかった。
「先生、小吉さんは?」
軽く鼻を打った程度だと思ったのだが、具合が悪くなったのかと心配になり、担任に詰め寄ると「大丈夫だ」と疲れた顔で答えてくれた。
「……念の為、小吉は病院に連れて行って貰った。買い出しの帰りに響総合病院に寄るぞ」
本格的に拉致られたらしい。小吉さんは担任を呼び寄せる為の餌に違いない。まあ、念の為に診てもらうのは有りだと思うが。
「店の人の誤解は解けましたか?」
小吉さんの安否確認の後、何故か先輩が申し訳なさそうに尋ねた。
「問題ない。お前ら、とっとと買い出し済ませるぞ」
担任の疲れの原因は、店とのやり取りではなく、響先生の娘さんとのアレコレのようで、そちらはサクッと解決したようだった。
それから、オレらは文字通り車に食料を山のように積み込み、スーパーを後にした。
担任の食べたい物を選べという言葉は本気だったらしく、オレらが両手に菓子を持ってどちらにしようか真剣に迷っていると「下らん事で悩むな」と両方カゴに放り込んだ。そのせいで、帰りの車内は荷物でいっぱいになり、小吉さんが乗り込めるスペースはなかった。最悪、オレの膝の上に乗せるか、オレが先輩の膝に乗るしかなさそうだった。
「響さん所に行く前に昼飯調達するぞ」
担任はそう言うと、スーパーを出て少し走った先にあったコンビニに入り車を駐車した。適当に買って来るから、車内で待っているように言われたが、オレは一つ思いつき、コンビニで買い物をしてもいいか質問した。
「……好きにしろ」
スーパーで同じやり取りをした時は、反射的に怒鳴られたが、今度はあっさりと承諾を得る事が出来た。先輩が一緒に車から出ようとしたが、すぐ戻るからとそれを押し止める。これだけ荷物をねじ込んだ車を放置するのも不用心だ、ロックのかかっていない場所(鍵の壊れている扉)もある。少し残念そうな顔を見せたが、納得してくれた先輩を置いて、担任に続いて久々のコンビニへと足を踏み入れた。
去年は毎日のように出入りしていた場所だったが、こんなにソワソワした気持ちになったのは初めてだ。
適当に選ぶと言っていたのに、担任は食いたい物はあるかと聞いてくれた。特に希望もなかったので、なんでもいいと答える。すると、から揚げと白飯みたいなシンプルで肉の割合が多い弁当と温かいお茶を四人分、カゴに放り込んだ。それにプラスして、ちょっと興味をそそる酒の肴をいくつか見繕い、レジへと向かう。
オレも担任の後ろに並び、ポケットから五百円玉を取り出した。一人で食べようという気にならず、今まで気になってはいたが食べた事がなかった物の値段を担任越しにチェックする。よし、金は足りる。
「肉まん下さい。三つ」
色々な種類があって、ちょっと迷ったがシンプルなやつを注文した。まあ、意外と値が張って、凝ったやつは予算オーバーだったのだが、ほかほかと湯気を上げる肉まんは十分に美味しそうだった。
車に戻ると先輩が荷物を整理してくれたようで、人が乗れるスペースが若干増えていた。
「欲しい物は買えたか?」
二人ならゆったり座れる。迎えてくれた先輩の隣に早速座ると、先輩がオレが持ち帰った小さな袋に視線をやりながら聞いてきた。
「うん、小吉さん返してもらったら三人で一緒に食べよう」
たかが肉まんだが、ちょっと誇らしい気持ちになってしまうのは、我ながら恥ずかしかった。
冷めてしまわないよう、外気に触れないようコートの中で袋を保温しながら、小吉さんを迎えに行く。
先輩に弄ばれている中、慌てた様子で店長が尋ねてきた。そうだと答えると、小吉さんに肘をブチ込んでくれた店員を連れて、担任たちの後を追いかけていった。
「お前ら、何をやってたんだ?」
先輩の疑問に一から答えてやると、放置されていたカートの中を覗いて、何故か溜め息を吐きやがった。
「他に買う物いっぱいあっただろう。なんで酒からいっちまったんだ」
「オレらに関係ない物だったから。オレらの物を買うのは先輩が戻ってからにしたかったんだよ。何食いたいか一緒に相談しながら買いたいじゃん」
自分たちの食いたい物を買っていいなんて、滅多にない。予算はあるだろうが、真剣に考えたいって思うのは普通だと思うのだが、先輩には笑われてしまった。
「金の事は考えなくていい。セイシュンが欲しいって思う物、全部買って帰ろう」
全力でオレを甘やかす気だ。だが、そうはさせない。せっかく今日の食い扶持は担任……が出すのは変だよな、じゃあと学校が出してくれるのか? いまいち金の出所が分からないが、とにかく先輩が自腹を切る必要はないのだ。
「全部買ったら車一台じゃあ足らないだろ。先輩を破産させる気はないからな。担任に予算聞いて、食いたい物を厳選しようぜ」
オレの提案に残念そうな顔を見せる先輩を「ルールがある方がゲームみたいで楽しいじゃん」と説得していると、色々と片付けてきたらしい担任が戻って来た。しかし、拉致られた小吉さんの姿はなかった。
「先生、小吉さんは?」
軽く鼻を打った程度だと思ったのだが、具合が悪くなったのかと心配になり、担任に詰め寄ると「大丈夫だ」と疲れた顔で答えてくれた。
「……念の為、小吉は病院に連れて行って貰った。買い出しの帰りに響総合病院に寄るぞ」
本格的に拉致られたらしい。小吉さんは担任を呼び寄せる為の餌に違いない。まあ、念の為に診てもらうのは有りだと思うが。
「店の人の誤解は解けましたか?」
小吉さんの安否確認の後、何故か先輩が申し訳なさそうに尋ねた。
「問題ない。お前ら、とっとと買い出し済ませるぞ」
担任の疲れの原因は、店とのやり取りではなく、響先生の娘さんとのアレコレのようで、そちらはサクッと解決したようだった。
それから、オレらは文字通り車に食料を山のように積み込み、スーパーを後にした。
担任の食べたい物を選べという言葉は本気だったらしく、オレらが両手に菓子を持ってどちらにしようか真剣に迷っていると「下らん事で悩むな」と両方カゴに放り込んだ。そのせいで、帰りの車内は荷物でいっぱいになり、小吉さんが乗り込めるスペースはなかった。最悪、オレの膝の上に乗せるか、オレが先輩の膝に乗るしかなさそうだった。
「響さん所に行く前に昼飯調達するぞ」
担任はそう言うと、スーパーを出て少し走った先にあったコンビニに入り車を駐車した。適当に買って来るから、車内で待っているように言われたが、オレは一つ思いつき、コンビニで買い物をしてもいいか質問した。
「……好きにしろ」
スーパーで同じやり取りをした時は、反射的に怒鳴られたが、今度はあっさりと承諾を得る事が出来た。先輩が一緒に車から出ようとしたが、すぐ戻るからとそれを押し止める。これだけ荷物をねじ込んだ車を放置するのも不用心だ、ロックのかかっていない場所(鍵の壊れている扉)もある。少し残念そうな顔を見せたが、納得してくれた先輩を置いて、担任に続いて久々のコンビニへと足を踏み入れた。
去年は毎日のように出入りしていた場所だったが、こんなにソワソワした気持ちになったのは初めてだ。
適当に選ぶと言っていたのに、担任は食いたい物はあるかと聞いてくれた。特に希望もなかったので、なんでもいいと答える。すると、から揚げと白飯みたいなシンプルで肉の割合が多い弁当と温かいお茶を四人分、カゴに放り込んだ。それにプラスして、ちょっと興味をそそる酒の肴をいくつか見繕い、レジへと向かう。
オレも担任の後ろに並び、ポケットから五百円玉を取り出した。一人で食べようという気にならず、今まで気になってはいたが食べた事がなかった物の値段を担任越しにチェックする。よし、金は足りる。
「肉まん下さい。三つ」
色々な種類があって、ちょっと迷ったがシンプルなやつを注文した。まあ、意外と値が張って、凝ったやつは予算オーバーだったのだが、ほかほかと湯気を上げる肉まんは十分に美味しそうだった。
車に戻ると先輩が荷物を整理してくれたようで、人が乗れるスペースが若干増えていた。
「欲しい物は買えたか?」
二人ならゆったり座れる。迎えてくれた先輩の隣に早速座ると、先輩がオレが持ち帰った小さな袋に視線をやりながら聞いてきた。
「うん、小吉さん返してもらったら三人で一緒に食べよう」
たかが肉まんだが、ちょっと誇らしい気持ちになってしまうのは、我ながら恥ずかしかった。
冷めてしまわないよう、外気に触れないようコートの中で袋を保温しながら、小吉さんを迎えに行く。
0
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※この物語はフィクションです。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。
■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
狂わせたのは君なのに
一寸光陰
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる