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蜜月
馬鹿二人
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こんな状況でこの部屋の二年が戻ってきたら、どうなってしまうのか。冷や汗がドッと出て目眩がする。あまり回ってない頭でも分かる、誰にとっても悲劇でしかない。
必死で押し返すが、本気で怒っている先輩が手加減なんてするはずもなく、オレを拘束する手は全く動かない。てか、本気でおっ始めようとしているとしか思えない熱量にたじろぐ。すると、いつもと違う先輩のノリにちょっと興奮してしまう自分がいるのを確認。情けなさに理性が一喝、身を任せようとしていた体に力が戻った。
「ばっかッやろう!」
誰に対する悪態か、呼吸するより先に怒声が飛び出す。全力で抵抗する中、唇が切れたのかジワリと舌に血の味が滲むと、ふと体が自由を取り戻した。唇を舐めながら顔を上げると、怒りはどこへ行ったのか、困惑の表情をした先輩と目が合う。
「……せいしゅん」
泣き出しそうな声を聞いて、オレは大袈裟に口元を手で押さえ、呻きながらその場に蹲った。
「セイシュン!」
ハッと息を呑み、慌ててオレの元へと飛びついてくる先輩。優しく温かい手が体に触れて、オレはほっとしながらもニヤリと笑う。そして、ちゃんと唇の血を拭った事を確認し、そろりと顔を上げる。
「すまん、俺が無茶したせ」
先輩が全てを言い終わる前に、盛大に音を立て口端に吸い付いてやった。面食らう姿をニヤニヤしながら見ていると、先輩の体から妙な力が抜けて、いつもの先輩に戻ったのが分かった。
「オレが寮長と一緒にいるの嫌なんだ?」
逃がさないと言うように目を見ながら聞けば、ばつの悪そうな顔をした後、諦めたみたいな溜め息を吐いて「お前が俺以外の奴と一緒にいるのは…………いやだ」と素直に白状した。
「毎日葛見に会いに言ってるだろ。何の用があるんだ?」
開き直ったのか本気で尋問を始める先輩。
「ちょっと分からない所があってさ、勉強を教えて貰ってる」
「勉強なら葛見を頼らず、直接先生に聞けばいいだろ」
まあ正論だな。しっかり詰めてくる先輩をちょっと微笑ましく思いながら、オレは薄い嘘で巻いた答えを返す。
「英語のリスニング苦手なんだ。今回の試験でミスったから何か対策したくてさ。でもオレの担当中島なんだよ」
壊滅的な発音で有名な中島の授業を知っているのだろう、先輩はしぶしぶ納得してくれる。やましくはないが、先輩に本当の事を言えないのは歯痒くて、オレは早々に話題を切り替えた。
「てか、知らない奴って誰だよ。なんの話してんの?」
「ん……教室で、セイシュンの教室、の前を、たまたま通りかかったら、金髪の外国人に抱かれてるのを見ちまったんだ」
金髪の外国人が圏ガクにいるわきゃねぇだろ、と思ったがド派手な奴が確かにいた事に気付いた。
「それスバルだ。あいつが冬休みに髪染めて戻って来てるだけだから。あと、抱かれてねぇから。のしかかられてただけだから勘違いすんな」
納得出来ないと顔に書いてあったが、これからは面倒がらずに引っぺがすと約束する。
「出来れば友達は選んで欲しいんだが……」
出来ればオレもそうしたいが、友達になってしまった手前、今更「縁を切る!」みたいなノリにはなれない。
「んで、どうすんの?」
スバルの話題は平行線になりそうだったので、オレは強引に話題を変える。先輩の首に手を伸ばし、グイッと自分の方へ引き寄せ誘うように囁く。けれど、こちらの意図を察してくれない先輩は、どういう意味なんだと首を傾げやがる。
「さっきの続き、やる?」
まあ本気で再開されると困るのだが、なんとなくノリで言ってみた。すると先輩はするりとオレの手から逃れ、数歩距離を取った。内心ほっとしていると、先輩が一瞬焦ったような表情を見せる。
必死で押し返すが、本気で怒っている先輩が手加減なんてするはずもなく、オレを拘束する手は全く動かない。てか、本気でおっ始めようとしているとしか思えない熱量にたじろぐ。すると、いつもと違う先輩のノリにちょっと興奮してしまう自分がいるのを確認。情けなさに理性が一喝、身を任せようとしていた体に力が戻った。
「ばっかッやろう!」
誰に対する悪態か、呼吸するより先に怒声が飛び出す。全力で抵抗する中、唇が切れたのかジワリと舌に血の味が滲むと、ふと体が自由を取り戻した。唇を舐めながら顔を上げると、怒りはどこへ行ったのか、困惑の表情をした先輩と目が合う。
「……せいしゅん」
泣き出しそうな声を聞いて、オレは大袈裟に口元を手で押さえ、呻きながらその場に蹲った。
「セイシュン!」
ハッと息を呑み、慌ててオレの元へと飛びついてくる先輩。優しく温かい手が体に触れて、オレはほっとしながらもニヤリと笑う。そして、ちゃんと唇の血を拭った事を確認し、そろりと顔を上げる。
「すまん、俺が無茶したせ」
先輩が全てを言い終わる前に、盛大に音を立て口端に吸い付いてやった。面食らう姿をニヤニヤしながら見ていると、先輩の体から妙な力が抜けて、いつもの先輩に戻ったのが分かった。
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逃がさないと言うように目を見ながら聞けば、ばつの悪そうな顔をした後、諦めたみたいな溜め息を吐いて「お前が俺以外の奴と一緒にいるのは…………いやだ」と素直に白状した。
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開き直ったのか本気で尋問を始める先輩。
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「勉強なら葛見を頼らず、直接先生に聞けばいいだろ」
まあ正論だな。しっかり詰めてくる先輩をちょっと微笑ましく思いながら、オレは薄い嘘で巻いた答えを返す。
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壊滅的な発音で有名な中島の授業を知っているのだろう、先輩はしぶしぶ納得してくれる。やましくはないが、先輩に本当の事を言えないのは歯痒くて、オレは早々に話題を切り替えた。
「てか、知らない奴って誰だよ。なんの話してんの?」
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「んで、どうすんの?」
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「さっきの続き、やる?」
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