転生令嬢の幸福論

はなッぱち

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第二章

無礼な輩を一喝してやりました。

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 ぞんざいな扱いで、全体的に埃を被り白っぽくはなっておりますが、贅沢は言えません。洗濯はしてあるのかしらと、一瞬、鼻を近づけそうになりましたが、自衛の為に自重します。

 埃を精一杯はたき落とし、可能な限り皺を伸ばして、意を決して袖を通しました。

「そ、そんな、どうしてっ!」

 スカートの丈も膝を十分に隠してくれますし、無駄にスリットが入っていたり、胸元が大きく開いていたりもしていません。

 それなのに……どうして、こんなに扇情的なってしまうのでしょうか!

 胸元が膨れているだけで、どうして人は真っ当な判断が出来なくなってしまうのか。私、今は自分自身だというのに、フィア嬢から溢れるフェロモンで心が麻痺しているようでした。

「このままでは、私はこのお部屋から出ることすら出来ないではないですか!」

 半ば崩れ落ちながら、残りの少ない衣装ケースを漁りました。しかし、出て来る物は、世の男性全てを精も根も絞り取ってやろうという心意気を感じる、破廉恥な物ばかりです。

 人目を避けてブティックに飛び込み、このフィア嬢という名のフェロモンの檻を破らねば、そのようにある種の覚悟を決めました頃、実に荒っぽい足音が廊下から近づいて来たかと思うと、扉を蹴破らん勢いで何者かが部屋に乱入してきました。

「おっ、なんだい、今回はシスター様でいくのかい」

 並の殿方よりも大柄な年輩の女性が、私の姿を見てガハハと豪快に笑います。

 そして、肩からかけたバックパックを床に放り出すと、こちらへ寄って来るなり、私を無遠慮に上へ下へと舐めるように眺め回しました。

「あ、あの、なんですの?」

 お知り合いのようですが、どのような関係なのか、私にはまるで分かりません。

「はっ、なんだそりゃ。芝居のつもりかい、笑わすねぇ」

 私の動揺など、鼻で笑い飛ばされます。そして、それだけに留まらず、胸元に手を伸ばされたかと思うと、さっき必死で止めた胸ボタンを指先で弾き飛ばし、強引に肌を露わにされてしまいました。

「何をなさいますの、無礼者!」

 勢いよく飛び出した谷間を押さえ、私は淑女などとは呼べるはずもない、山賊のような女性に向かって一喝しました。
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