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第三章
成金を見抜いてやりました。
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シスターに案内されて通されたのは、質素なお部屋でした。飾り気が一つもない粗末な私室。
しかし、私の目は誤魔化されません。質素に見えて、部屋に置かれた一つ一つの家具や小物は全て、王室御用達のブランド品ばかりです。
「さあ、どうぞ召し上がれ」
目の前に置かれたティカップも、そこから立ち上る芳しい香りも、全てシスターの懐具合を物語ります。
この方、シスターとは名ばかりの成金です。
「確か……エレノアさん、だったからしら」
自身も席に着き、シスターは私の方へ視線をやり呟きます。
「いいえ、フィアとお呼び下さい。シスター」
もう正直、自分の名前など、どうでもよろしい。今後はフィア嬢として動くのですから、ややこしいのは御免です。
「手紙では全く乗り気じゃないってお話だったけれど、彼女はやる気になってくれているみたいね」
「そう言うこった。アタイもサリーとして動くよ」
「まあ頼もしいわ」
サリー様がそう言うと、シスターは豊満な胸の前で手を組み少女のような、実にアンバランスな表情をお見せになります。
「じゃあ、この依頼、引き受けてくれるのね」
「替え玉の件は了承だ。相方がやる気になってるからね。だが、それ以上のことは話を聞いてからだ」
私が欠員の出た穴埋めにフィア嬢の替え玉として遠征軍に参加する。それ以上に何かあるのでしょうか。サリー様と一緒にシスターへ視線を向けます。
「先に返事は頂けないのね。まあ、仕方ないわ。貴女と私の仲だしね。ここからは他言無用でお願いね」
シスターは意味深な視線をサリー様に向けると、随分ともったいを付けた前置きをしました。
「今回の援軍にガルーダ王子がお忍びで参加されるのよ」
ガルーダ王子は王位継承権をお持ちの我が国の第二王子です。確か第一王子は側室の子だとかで、色々ときな臭い噂の絶えないご兄弟仲だとか。
「おいおい、冗談は止しとくれよ」
サリー様は手で顔を覆います。
「冗談ではないの。窮地を救い隣国の姫に求婚すると、今回の援軍を送る件は彼が言い出したことなのよ」
それはなんと夢見がちな王子様でしょうか。我が国の将来が不安です。
しかし、私の目は誤魔化されません。質素に見えて、部屋に置かれた一つ一つの家具や小物は全て、王室御用達のブランド品ばかりです。
「さあ、どうぞ召し上がれ」
目の前に置かれたティカップも、そこから立ち上る芳しい香りも、全てシスターの懐具合を物語ります。
この方、シスターとは名ばかりの成金です。
「確か……エレノアさん、だったからしら」
自身も席に着き、シスターは私の方へ視線をやり呟きます。
「いいえ、フィアとお呼び下さい。シスター」
もう正直、自分の名前など、どうでもよろしい。今後はフィア嬢として動くのですから、ややこしいのは御免です。
「手紙では全く乗り気じゃないってお話だったけれど、彼女はやる気になってくれているみたいね」
「そう言うこった。アタイもサリーとして動くよ」
「まあ頼もしいわ」
サリー様がそう言うと、シスターは豊満な胸の前で手を組み少女のような、実にアンバランスな表情をお見せになります。
「じゃあ、この依頼、引き受けてくれるのね」
「替え玉の件は了承だ。相方がやる気になってるからね。だが、それ以上のことは話を聞いてからだ」
私が欠員の出た穴埋めにフィア嬢の替え玉として遠征軍に参加する。それ以上に何かあるのでしょうか。サリー様と一緒にシスターへ視線を向けます。
「先に返事は頂けないのね。まあ、仕方ないわ。貴女と私の仲だしね。ここからは他言無用でお願いね」
シスターは意味深な視線をサリー様に向けると、随分ともったいを付けた前置きをしました。
「今回の援軍にガルーダ王子がお忍びで参加されるのよ」
ガルーダ王子は王位継承権をお持ちの我が国の第二王子です。確か第一王子は側室の子だとかで、色々ときな臭い噂の絶えないご兄弟仲だとか。
「おいおい、冗談は止しとくれよ」
サリー様は手で顔を覆います。
「冗談ではないの。窮地を救い隣国の姫に求婚すると、今回の援軍を送る件は彼が言い出したことなのよ」
それはなんと夢見がちな王子様でしょうか。我が国の将来が不安です。
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