『毒の水』

篠崎俊樹

文字の大きさ
上 下
1 / 1

『毒の水』

しおりを挟む
 俺は、福岡県某所の田舎町に住んでいる。普段、町にある新聞店に勤めていて、早朝から働いており、自宅に帰ってきたら、寝るだけだ。統合失調症の持病があって、薬を飲んでいて、サプリメント類も服用している。俺自身、普段は、何でもなく過ごせているのだけれど、毒の水を飲みそうになることがある。これは、本当の話だ。新聞配達の途中に、電動自転車に乗って、行っているのだけれど、田舎町なので、思わぬところで、毒を飲みそうになる。何というか、飲めば、まずい類の毒だ。俺は、この小説で、その恐怖を書こうと思っているのだけれど、実際、毒の水は恐ろしい。そう思えてならない。俺自身、普段は、気分が安定している。睡眠導入剤も服用していて、夜も、疲れて寝てしまう。俺にとって、毒の水を呷りそうになるのは、配達の途中で、大雨などが降って、天から降ってくる雨粒が口の中に入りそうな時だ。それを一番、警戒している。これは、恐怖譚とは関係ないのだけれど、実際、そういった時が一番苦しい。俺も、吐き気を堪えて、電動自転車を飛ばし、その場を立ち去る。まあ、俺にとって、新聞店での仕事は慣れたもので、もう、半年になるから、平気なのだけれど、俺も、毒の水に対しては、極力、警戒している。俺自身が、怖いことを散々経験してきているのだけれど、この恐怖は、未だ、冷めやらない。また、冷めやるわけがない。俺にとって、心が一番落ち着くのは、自宅の自室に帰ってきて、睡眠導入剤をコップの水で服用して、寝る時だ。その時が、一番落ち着く。何というか、もう、今日はこれ以上、外出することもないな、と思えて、一番、気が楽になるのだ。まあ、気休めみたいなものだけれど、俺にとって、睡眠導入剤は一番の薬であって、飲めば、立ちどころに眠くなる。ゆっくりと、一晩眠って、また、真夜中に起き出して、新聞店に行くのだ。その繰り返しで、この半年間が過ぎ去った。俺にとって、さっき言及した毒の水は、配達途中に、飲みたくなくても、飲んでしまうもので、苦しいものだが、それも、俺は、自宅に帰って、顔を洗って、歯を磨いてから、洗い落として、払拭している。俺は、この新聞配達の仕事を、あと、十年以上は続けるだろう。今、四十代半ばだから、まだ、続けられる。十分可能だ。そう思っている。この小説では、〝毒の水〟と派手に、タイトルを銘打ったけど、俺も、飲まなくていいなら、飲みたくない類の水なのであって、できれば、避けたい。最後に、この小説の結びに言っておくと、俺の住む田舎町は、水も空気も美味しく、過ごすには、快適で、俺自身、特に不自由なく暮らせている。電動自転車さえあれば、スーパーも、ホームセンターも、コンビニも、市役所も、圏内にあるし、十分暮らせる。ただ、最後に言っておくと、俺は、再三言及している毒の水に関しては、極力、気を付けたいと思っている。毒は毒だ。飲めば、死ぬ。そうならないように、気を付けながら、新聞店の仕事も頑張ろうと思っている。この小説は、短編小説だけれど、あまり、恐怖譚の印象はなかった。でも、一応、タイトルは、〝毒の水〟と銘打ったので、ホラー小説として、扱わせてもらおうと思う。また、最後にもう一言、付言しておくと、この毒の水の内容は、俺の実体験であって、嘘とか、虚飾の類じゃない。ということで、小説そのものを、結稿させていただく。
                            (了)
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...