『老父』

篠崎俊樹

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『老父』

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 くたびれたものだ。うちの父親は、もはや、廃人同然なのである。夜は必ず、茶の間を占領して、お酒。しかも、浴びるほど飲む。酩酊じゃすまない。俺は思う。父親をどこの老人施設に入れてやろうかと。はっきり言って、すべてが悪条件という悪条件に満たされている。俺が最近、ネットの検索エンジンで、認知症を検索したら、どうやら、父親の言動などをうかがうと、統合失調症や双極性障害などと違って、レビー小体型認知症のようだと把握できた。深刻な病気だ。まず、記憶が飛ぶ。血糖値が悪化する。尿酸値が悪くなる。コレステロール値が上がる。オールバッドなのである。これが、父親の現時点での実態だ。はっきり言って、いい薬もなければ、認知症の症状は悪くなる一方。俺はもう、はっきり言って、父親を相手したくないのである。また、興味もない。今日、ヤマダ電機が父親宛に、テレビを配達して、設置に来る。だが、俺は立ち会わない。午後二時からのオンラインのエッセー講座の方に時間を使う方が、遥かに有益だ。俺は有益なことにしか、時間を使わない。父親のことはもう投げた。俺にとって、例えば、テレビに出てくる若い女優さんなどは魅力的で、見ていて、一向に飽きないのだが、父親は終わった存在なのである。繰り返し言うが、俺は父親に関しては、すべて放擲した。俺にとって、自宅二階の部屋が城で、父親の寝るタコ部屋など、もはや、どうだっていい場所なのである。そう結論付けて、この雑文もどきの短編小説を結構することにする。
                                 (了)
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