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『歴史学についての、一エッセー』

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 私は、福岡大学人文学部歴史学科で、日本史を専攻していた。一年次から、基礎ゼミがあって、担当教官が付いて、歴史学の基礎から叩き込まれた。私は元々、司馬遼太郎の歴史小説が大好きで、高校卒業後、徹底して、読み漁っていて、それが、福岡大学にて、歴史学を学びたいことの主たる動機となったのだが、入学してみて、事情がまるで違った。歴史学は、史料を元手に、歴史を検証して、卒論などを仕上げないと、卒業できないのだ。はっきり言って、単なる歴史好きで、歴史オタクだった私は、事情の違いに唖然とした。だが、いいこともあった。基礎ゼミで、基本的な文章の書き方を教えてもらったし、歴史学の基礎素養は、除籍されるまでの三年半で身に付いた。ただ、悔しいのは、教養科目の授業にほとんど出なかったことだ。それが、一番悔しかった。大学の授業は、一コマ辺り、二千円ぐらい、受講料が掛かる。私はたぶん、三年半を通じて、納めた授業料の半分以上を損しているだろう。そう感じている。行かなかった講義は、多分、全科目登録数の六十%以上。大損失だ。それが一番悔しかった。ちなみに、私は、基礎ゼミの時から、中世の日本史に興味があって、二年次、三年次、四年次と、日本史は、中世を主に勉強させてもらった。ただ、卒業はしていない。歴史学に関しては、未だに分からない。いや、分かるわけもないだろう。膨大な文献を全部読み込んで、それを全部記憶して、まとまった知見を得ることなど、できるはずがないからだ。それだけは、はっきりと断言しておく。最後に一言。大学で歴史学を学びたいと思っている人は、はっきり言って、止めておいた方がいいと、先輩から、きつく忠告しておく。卒業できない人の方が、圧倒して多いので……。これにて、稿を結んでおく。
                            (了)
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