『ビデオの女』

篠崎俊樹

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ビデオの女

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 俺は、自宅の部屋のパソコンで、アダルトDVDを見ている。何と言うか、毎日やっていることで、甲斐性なのだ。パソコンは、デスクトップとノートで、DVDは、適当にアマゾンで買ってから、見ている。別に俺にとって、DVD鑑賞は日常的なもので、アダルトじゃなくても、映画でも、ドキュメンタリーでも、何でも見ている。俺にとって、DVDは、生活の一部なのだ。
 普段見ているアダルトDVDに、女優の女が出てくる。目つきが独特で、俺も最初、違和感があったが、どうやら、専門でDVDに出ているようで、俺は躊躇いがなかった。また、あるわけもない。俺の家の隣に住んでいる、初老のオヤジも、その女優が好きで、しょっちゅう、DVDを見ているらしい。何と言うか、好きなのだろう。俺も、暇があれば、パソコンのDVDインサート口に、DVDを挿入して、再生してから、見ている。
 ビデオの女は、俺にとって、虜みたいなものだ。一番好きで、俺も、好き好きとは言っても、結構、頻繁に見ている。実際、俺には妻がいるが、妻とは、もう、何年も性交渉等がなく、もっぱら、DVDを見ながら、オナニーなどの自慰行為に耽っているのだ。俺も寂しいけど、それでもいいと思う。実際、妻は、五十代で、俺より、十歳以上年上だ。俺としても、仕事は、新聞配達で、早朝の三時間頑張れば、あとは、自宅に帰ってきて、通っている精神科で処方されている睡眠導入剤を、コップの水で服用して、寝る。何と言うか、規則正しすぎて、しょうがない。ビデオの女の性行為の芝居にお世話になるのは、寝付けない夜だけだ。実際、俺は、新聞配達以外に、作家という副業を持っていて、夜はパソコンに向かって、原稿を書いてから、ネット上の投稿サイトにアップするのだった。新聞配達で足りないお金は、創作で稼ぐ。実際、投稿サイトは、アクセスに応じて、課金される仕組みになっていて、俺も、お金にして、一万円ほど、原稿料代わりにもらった。薄謝だが、貴重なお金である。俺はそう思っている。ちなみに、この短編小説の結びに言っておくと、俺は、これからも、創作を続けるつもりだ。ビデオの女が出てくるDVDは、たまに見る程度でいい。そう思っている。俺にとって、今通っている新聞配達のアルバイトと、創作の両輪で、日常は十分すぎるぐらい、十分に回る。そう思っている。余暇は、頭休め程度だ。俺にとって、さっき言及した二つの道は、決して終わることのない道であって、永遠に続くことはないにしても、簡単には放擲しないだろう。そう書き記して、この短編小説を結稿することにする。
                          (了)
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