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『侍ありき』
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江戸時代初期に、筑前国に、伊東源左衛門という侍がいた。黒田藩の武士で、禄高は二百石。小禄ながら、黒田家に召し抱えられて、福岡城の門番の警固を務めている。源左衛門は名うての剣の達人で、刀捌きが得意だった。藩の家老たちから、その腕を誉められ、重用されている。
源左衛門が、福岡城下を歩いていると、前方から、不審な男が一人やってきた。素浪人だ。名もろくにないような人間で、源左衛門は不審に思った。
「お主、何者じゃ?」
源左衛門が問うと、その素浪人が、
「私は、たまたま、ここ筑前に来ておる、佐賀鍋島藩の浪人、岡田善兵衛でございます」
と返してきた。ずいぶんと失礼な人間であると、源左衛門は思った。そして、どうやら、この岡田とか言う素浪人が、卑しい身分であると踏んで、
「お主と、この場で決闘して、斬り捨ててもよいか?」
と問うてみた。岡田が、
「真っ向勝負なら、受けて立つところです」
と自信満々に言い、持っていた太刀を抜いて、構えた。源左衛門も同時に刀を抜き、正眼に構えて、早速、城下で決闘が始まった。道行く通行人は、皆、それをじっと見ている。
しばらく、二人の間で、鍔迫り合いと応酬が続いていたが、源左衛門が隙をついて、岡田の心臓部を狙い、思いっきり、刀を突きたてた。岡田はその刹那、大量の血を流して、絶命し、死んだ。源左衛門は安堵し、刀を鞘に納めて、腰に差し直してから、颯爽と歩いていった。それから先のことは、もう、いまさら、申すまでもない。岡田の骸は、江戸の外れの死体置き場に置かれて、その後、幕吏によって、穏便に処分されたのだった。
(了)
源左衛門が、福岡城下を歩いていると、前方から、不審な男が一人やってきた。素浪人だ。名もろくにないような人間で、源左衛門は不審に思った。
「お主、何者じゃ?」
源左衛門が問うと、その素浪人が、
「私は、たまたま、ここ筑前に来ておる、佐賀鍋島藩の浪人、岡田善兵衛でございます」
と返してきた。ずいぶんと失礼な人間であると、源左衛門は思った。そして、どうやら、この岡田とか言う素浪人が、卑しい身分であると踏んで、
「お主と、この場で決闘して、斬り捨ててもよいか?」
と問うてみた。岡田が、
「真っ向勝負なら、受けて立つところです」
と自信満々に言い、持っていた太刀を抜いて、構えた。源左衛門も同時に刀を抜き、正眼に構えて、早速、城下で決闘が始まった。道行く通行人は、皆、それをじっと見ている。
しばらく、二人の間で、鍔迫り合いと応酬が続いていたが、源左衛門が隙をついて、岡田の心臓部を狙い、思いっきり、刀を突きたてた。岡田はその刹那、大量の血を流して、絶命し、死んだ。源左衛門は安堵し、刀を鞘に納めて、腰に差し直してから、颯爽と歩いていった。それから先のことは、もう、いまさら、申すまでもない。岡田の骸は、江戸の外れの死体置き場に置かれて、その後、幕吏によって、穏便に処分されたのだった。
(了)
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