『雨天殺人事件』

篠崎俊樹

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第14話。

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 六つの集落を、全部回り終えて、自宅に帰ってきたら、母の幸子がいて、
「謙。明日も、配達があるんでしょう?いい加減、寝たら?」
 と言ってきた。俺も、そのほうがいいと思って、
「ああ。今から、部屋で、テレビドラマ聴きながら、寝るよ」
 と返し、部屋に引き返した。ドアを閉めて、独りになる。俺は元々、孤独を託つほうで、別に、独りでも、寂しいと思うことはない。また、疲れれば、すぐに、ベッドに突っ伏して、寝てしまうほうだ。その日だって、配達が終わってから、橋本や今川に付き合って、疲れていた。もう、寝たほうがいいと思えたし、実際、寝るほうが、休養が取れていい。
 幸子の旦那、つまり、俺の父親の順三は、四年前、他界した。悪い病気に罹って、助からなかったのだ。俺は今のところ、病気とか一つもない。単に、夜、眠りが浅いとか、不眠症が高じる程度で、別に、そう酷い病気などはない。俺にとって、今の新聞店勤務は、安定しているのだ。俺も、仕事をしていて、自然とそう感じる。また、俺にとって、今の状況というのは、実にいい。部屋には、パソコンもあるし、スマホだって持っている。インターネットをする環境というのは、整っているのだ。現に、俺は、一日に、何時間も、インターネットをする時間というのがある。俺自身が、恵まれていて、たとえ、単なる新聞店勤務でも、落ちぶれてない証拠だ。それは、断言しておく。
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