のろい盾戦士とのろわれ剣士

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37.カユカユとゲラゲラ

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すみません、めっちゃ遅くなりました<(_ _)>

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 オレとフィアーナはさっちんの言葉に、思わず腹をパンパンさせ宙で横たわるふーちゃんへと顔を向ける。
 “誓約”ってのは、要するに宣言した文言を破ると罰則ペナルティーを受けるってヤツだろうな。多分。
 オレとフィアーナの視線に気付いたふーちゃんは、ムクリと起き上がり首を左右にコキコキと振りながらフィアーナへと訊ねる。
 
『なんじゃ契約者サヴァティよ。妾に用かの?』
 
 鯖?また訳わからん事を言って来た。
 
「えーと、なんでしたっけ?」
 
 話を聞いてるようで聞いてない相変わらずのフィアーナクオリティーである。
 
『おぬしの力を使ってくれとの事じゃよ。炎蛇よ』
『んむ?なんじゃそれは。妾の力をとはなんとも不遜であるぞ、呪杖よ』
 
 ちみっちゃいSDの癖になんとも偉そうに胸を反らしふんぞり返るフーちゃん。
 まぁ元々神とやららしいし、AIだったとしてもそのような行動をするのは当然だろうし仕方ないのかもしれない。
 たとえラーメンひとの倍以上食っているとしてもだ。
 例えば信者とかがいたとしたら、めっちゃガッカリして信者をやめるくらい残念だとしても。
 
 その姿に本当に残念そうに何ともな感じで肩を落とすオレとフィアーナを後目しりめに、さっちんがふーちゃんに近付いてごにょごにょと耳打ちをする。
 そういやさっちんの事をふーちゃんが呪杖とか言ってたな。鑑定とか持ってるんだろうかふーちゃんは。だけど、呪杖かぁ~……。
 また呪いかよ。
 
『ほほぅ“誓約”とな。ふふん、構わんぞ。………ん゛ン゛っ、もちろんそれなりの対価は頂くのは当然じゃがなっ!じゃがなっっ!!』
 
 話を終えたふーちゃんが鷹揚に首肯するも、何故かこちらをちらちらと見ながら大切なので2度言いましたって感じで対価を要求して来る。
 ………まぁそれなりにLvが高そうなもんだと思うから、それについてはやむを得ないとは思う。
 問題は対価の内容って事だ。
 
「で、対価ってのは何なんだ?」
 
 曲がりなりにも(堕ちたとは言え)神様らしいので、オレはコクリと喉を鳴らして訊ねる。
 
『うむ!よくぞ聞いた!もちろん妾が食した事のない供物である!さぁ!あらゆる美食を妾に供するがよいっ!!』
 
 うわぁ~………と、オレとフィアーナは残念な声を漏らしてしまう。
 
「………あたし、あんなのに呪われてたんですよね………」
 
 フィアーナが思わず両手で顔を覆ってしゃがみ込む。
 まぁ気持ちは分からなくもないが、場合が場合なんで致し方なくもないか………あ~お茶美ん味ぁ~~~
 
 
 
  □ 
 
 
 
 てな訳でふーちゃんの同意を得て、ギルメン達に話せるところをそれとなく選別してオレは説明をする。
 
「………つまり下手すっピロがアカBANななる可能性があるって事ん?」
「ああ、だから悪ぃがそこんとこはオレも話すことは出来ねぇつー訳だ。まだこのゲームやってたいしな」
「「「「「あ゛~~~~………」」」」」
 
 そんなこんなで紆余曲折があって今の自身がある身としては、色々と思うところがギルメン達こいつらにもあるんだろう。
 もうね、色々とある訳だ。楽しい事も嫌な事も。
 MMOってのは結局社会の一縮図にしか過ぎないのかもしれない。
 人と人とが繋がれば、どの道同じなんだろう………。現実世界リアル仮想世界ヴァーチャルも。
 相手を思いやれる事察せられる事。
 
 クソみたいなリプライがあるのも知ってる。見えない相手にクソみたいな正義感をにじませて心の安寧を得るため、相手を攻撃する行為を繰り返す。
 そしてそれが過ちで間違いであっても、自身がやった行為など無かった事にする。知らなかったことにしてしてしまう。
 それは恥じる事のない自分自身の暴露でしかないのだろう。(もし知り合いに知られたら黒歴史どころじゃないだろう)
 それでも人は人なのだ。
 
 オレは経験上そんな人や人を知っている。つーか見せられ過ぎだわ、あのクっソ親父が。
 ただ、このフラクターズナゲットギルドの奴等は少なくともオレは信頼というか信じることは出来ると思う。
 だからこそオレはここ・・まで、俺が持ちうる情報を吐露したのだった。
 多分俺は信じたいんだと思う。
 バカだと思う。(それにガキだし)
 
 もし誰かがそんな話を聞けば、どうせ騙されるのに違いないと嘲笑するのだろう。
 言動と自身のアイデンティディーがあまりにも乖離してしまうであろう世界VRに、人はどうしても奔放に振舞ってしまうのだからだ。
 だからこれはオレの我儘であり、願望なのだ。
 ギルメン達がオレの思いに応えてくれるようにと。
 しばしの沈黙の後、まずはギルマスが口を開く
 
「で―――どうすれば僕達をそこに連れていく事が出来るんだい?もちろんにやれることって範囲だけどね」
 
 ある程度こちらの状況を理解した上で、ギルマスがそんな提案をしてくれる。
 ギルメン達をもみると、同様に頷きを返して来る。正直有り難いと思う。
 
「………まずは人数なんだけど、オレとフィアーナでパーティーを組むって事で6人2パーティーの10人迄。そんで大罪都市あっちに行った事は誰にも話さない事。………あと、悪ぃとは思うが、“誓約”の魔法を受けて貰うってとこだな」
 
「………誓約そんなんあるんっ!?」

 あ、そっち突っ込み入るん?………んーさてどうやって誤魔化すかな。俺が少しばかり説明に躊躇してると、フィアーナがいきなり挙手をして話し出す。
 
「はいっ!それはあたしが呪いが解けたんで出来る様になったんですっ!!」
「「「「「はぁああああっっ!?」」」」」
 
 フィアーナの衝撃の発言に、ギルマスを始めギルメンがあんぐりと口を開けてアホの顔をしながら声を上げる。
 うん、ポカ~ンって顔をしてこんなのを見てると、少しだけぷぷって笑いそうになる。
 
「え?呪いが解けたっ!?呪いなん!?あれっ!?」「ぶあっか~~~~っ!ピロ聞いてねぇよっ!!」「ほげりゃはわぁあああ~~~っ}「うおおぉぉぉっ!おめでとぉ~~~っ!」
 
 驚きに声を上げる者、涙を流しながらあうあうと謎の言葉を漏らす者、オレを罵倒する者、そしてフィアーナに祝福を告げる者など様々な姿態をギルメン達が表す事となった。
 オレとしちゃ、どうでもいい事だが。
 とりあえず話を一旦納めるために、パパンっと手を叩きオレに注目をさせて話を続ける。
 
「つー訳でだ!もしオレが出した食材アイテムが気になるんだったら、フィアーナの誓約を受けてもらうって話なんだが、どうするん?」
「はいはいはいはい!」「俺俺俺俺っ!」「僕僕僕僕っ」「わしわしわしわしっ」
「「「「「「いやいやいやっ!おれぼくわしわれわれはいはいはいはいっ!」」」」」
 
 俺の言葉を聞くや否や、全員が手を上げて主張をして来る。
 その視線がフィアーナに向いてるのを見るのを、フィアーナが主なのか大罪都市に行く事が主なのかが分からんのか、まぁ状況的には悪くないかとオレは感じた。
 結局アミダクジでオレのとフィアーナのパーティーに分かれ、フィアーナのパーティーになった奴等は歓喜しおれのパーティーになった奴等はどんよりと表情を曇らせ肩を落とす。
 分かっちゃいるがそれはそれで、少しだけムっと来るものがあったりする。お前ぇ等正直すぎんだよっ!
 
 とは言えそんな事に拘っていても仕方ない。………やれやれ。
 とりあえずオレはフィアーナとふーちゃんへと顔を向けて頷き、視線でそれをお願いする。(下手に口にするとボロが出そうだからだ)
 それに応じる様にフィアーナがギルメン達へと声を掛ける。
 それが斜め上へと行ってるってのは、まぁお約束ってのは分かる気がする。
 
「え~と、それでゲラゲラとカユカユと、どっちがいーです?」
「「「「は?」」」」」
 
 フィアーナからのいきなりの問い掛けに、ギルメン全員が首を傾げて疑問符を浮かべる。
 
「ですから~もし“誓約”を違えた時のお仕置きの種類みたいです?」
「「「「「はぁあ?」」」」」
 
 フィアーナの疑問符付きのそんな物言いに、そんな声を上げる。
 もちろんギルメン達こいつらが下手うつって事はないとオレは思っているんだけど、どんな事にも万が一って言うものはある訳だ。
 フィアーナのその言葉にギルメン達が腕を組みしばし懊悩する
 それは大罪都市にいく事に対する事なのか、或いは誓約の罰への選択に対するものなのか。
 
「ではっ!全身カユカユがいい人~~~~~っ!」
 
 そんな中いきなりフィアーナがハパパパンっと手を叩き、その決を取り出した。
 いやいや、大罪都市に行くかどうかを聞くのが先の筈なんだが………。
 だがフィアーナの言葉に乗せられたように、数人が思わずしゃしゃぱっと手を上げる。
 それを見越した様にすぐ様にフィアーナが更に言葉を紡いだ。
 
「でっはっ!次に前進ゲラゲラが良い――――――ひとぉ!!」
 
 ちょっは~~~って感じでフィアーナが手をスパパンっと挙げると、その他のギルメンがハイハイハイと言って手を挙げ出した。
 それを見渡して大勢が決したと察して、フィアーナが罰則について決定をする。
 
「はいっ!では、参加者は全身ゲラゲラの誓約を受けてもらいますッ!!」
 
 それからフィアーナはギルメンを見回してからそして横(ふーちゃん)を見て、何事かを呟き再びギルメンを見やる。
 
「はい、えーと………それじゃあ、行きたい人は――――」
「ちょい待て、フィアーナ」
 
 おそらく行きたい人間に誓約を掛けようと、声を掛けるフィアーナにおrは待ったをかける。
 
「はへ?どしました、ピロさん?」
 
 なんで止めるん?ってな感じで首を傾げるフィアーナへオレは告げる。
 
「あんな、行ける人間はオレとフィアーナで組む事が出来る5人+5人なんだから、それをふまえてもの言えよ」
「へ?そなんですか?」
「……………」
 
 ………どうやら分かってなかったようだった。
 オレがギルメン達を見やると、分かってますよと言わんばかりに全員が輪になり拳を掲げる。
 
「「「「「「最っ初はグゥ~~~~っ!!じゃんけんっぽぉ~~~~~一いぃっ!!」」」」」」
「ポイ」「ポイ}「ポイ」「ポイポイポイポイポイ~~~~~~~~ッ!」
「………………」
 
 まぁこの人数が一斉にじゃんけんをすれば、生半に決着がつかないのは自明の理である。(つーか分かれてやれやと思う)
 そんで――――
 
「っよっしゃああああ~~~~~ッイチ抜けぇ~~~~ッッ!!」
 
 グーを天に掲げてギルマスが珍しくたからかに嬉声を上げる。(うおぉぉ………)
 そうして1人が一抜けすると、次々に勝者が決まって行く。
 こうして10人の人間が決定した。
 
 ギルマスを筆頭に、」まぁそれなりに曲者ばっかりが選ばれたかちとったって感じだ。アクつえぇ~のばっか、なんなんこれぇ………。
 こちらを見やり10人が、オレとフィアーナを見て何かを期待するような目を見せる。
 いや、何を期待してるのやら。オレには何かを期待させるようなことは出来ないんだが。
 そんな中フィアーナは横を向いて何事かを囁く。
 まぁ、オレにはふーちゃんに何事かをお願いしているとこが見える訳だ。
 フィアーナのお願いに、ふーちゃんが軽く頷くと両手を上へと掲げて呪文を唱えた。
 
『おおおっ、おおいなるてぃりぃあすてぃふぅあにあいねがいたえまつる。このねがいをうけしともがらにそのちかとやくじょうをそのみつうけんことを』
「…………」
 
 ………やっべ、ちょっとだけふーちゃんが恰好いいかっけぇとか思ってしまった。
 すると、選ばれた10人の頭上に小さな魔法陣が現れ、そのまま頭へと降りて消えて行った。
 そしてその額に魔法陣が浮かび上がり消えてて行った。
 ちみっちゃい癖になんとも神々しいその姿は、なんか納得できかねないものがオレにはあった。
 
『ちみっちゃいとか言うでないわっ!』
 
 オレの思考を読んだかのように、ふーちゃんがオレを指差して突っ込みを入れて来た。
 それに対してオレは目を反らし何事もなかったようにあえて振舞う。ふふふ~~~んと。
 
『くぬっ』
 
 ふーちゃんがそれを見て眉を顰めつつ、何かを言い募ろうとしたところへフィアーナが声を掛ける。
 
「成功したですか?ふーちゃん」
『むっ、「もちろんちゃ!妾は失敗などせぬわっ!!』
 
 フィアーナの問い掛けに、こちらもうっすい胸を張ってふ-ちゃんが言い放つ。
 
「うおおっ!すっごいです!ふーちゃんすっごぉいいですぅ!!」
『っ!さもあろう!さもあろうっ!!ふははははっ!』
 
 オレへと不満もなんのその、フィアーナにおだてられ褒められたふーちゃんは引っ繰り返らんばかりにその身体を反らす。
 
『あんれ、めっちゃ単純じゃの………』
 
 さっちんがその姿を見ながら半ば呆れる様に肩を落としてポツリと呟く。
 あー………オレもそう思うよ、さっちん。
 そんで、誓約を受けたギルメン達の反応はまちまちだった。
 
「うぉおおっ!ステに“誓約”ってでてるっ!?」
「まじっ?」
「うぉおっ!まじだっ!」
 
 何やら選ばれたギルメン達は“誓約”に対して色々と確認していたようで、自身のステを見ながら驚いていた。
 どうやら状態ステに【誓約】って項目が出ている様で、それについて互いに話をしているみたいだった。
 そこに“誓約”が成ったという事で、オレとフィアーナはパーティーチャットを開いて大罪都市(裏)についてのルートと、そこがNPCの街であることを色々と端折りながら説明する。
 
 一部のギルメンは懐疑的にオレを見る。一部はそうなんだぁ~という風に軽い納得。
 そして一部はごにょごにょと互いに囁き合って行動を起こした。

「やる?」「やっっちゃう?」「お~~~ちゃ!やっちゃうやっちゃう!?」
 
 相変わらずの検証好きの3人が、そんな事を言い合って言葉通りに実行に移した。
 
「んーと。今度大罪都市の――――つ!!!うへぇっつはっあ!?」
 
 何故か勝ち残った検証組の3バカが、そんな事を言い合いうとその1人がホロウィンドウを出して――――おそらくは掲示板へと書き込もうとした時に、それは起こった。
 
「うひゃひゃひゃひゃ、うひゃうへへへへへへへぇぇええええ、えげっ、えべぇ、えぅへべべべべべべ~~~~~~~っっ!!」
 
 いきなり身体をビクンと痙攣させると、捩りねじり倒れ転がりながら笑い始めた。
 
「………なに、あンれ?」
 
 オレはその笑い転げる姿に唖然としながら呟くと、ふーちゃんが自信満々にこう言いのける。
 
『ふふん、決まっておるであろ。妾のかけた誓約を違えたものは、死ぬまで笑い続けるのじゃ。ふはははっ!』
 
 ………死ぬんかよ。ない胸を反らしながら言って来るふーちゃんの言葉を聞きながら、いまだ転げるギルメンバカを見やる。
 
「ははっはははははははぁ~~~~~~~~~~~~っ!は、はっはっはっは、っははっはははっあっっっ、ああ~~~~っ!!……………」
 
 眉を八の字にしながらも、耐える様に体をよじらせ転がっていたギルメンが、ピタリと動きを止めると光の粒子となって消えて行った。
 ………まじかぁー。
 すぐにその上に現れたホロウィンドウには、“VR状況異常発生により、強制ログアウトしました”と表示されていた。
 
『おろかな。だから言ったであろうに。誓約を破らば笑い死ぬと』
 
 ぬふーと鼻息を荒くしながら、ふーちゃんが消えたギルメンのいたところを睨め付けながら言い放つ。
 
「バカが………」「勇者だな………」「「忘れないっ夏っ!」」
 
 そんなギルメン達の言葉を背にしつつ、オレは部屋マイルームに戻って料理を作る事にした。
 アレを見てしまうと、さすがに約束を違えるのは(もちろんそんなつもりはないが)不味いと思ったからだ。笑い死にはな~、ないわ~アレないわぁ~~~。
 そうしてオレは残り少ない食材を色々と工夫しながら料理を作って行ったのだった。
 
 

 
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