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第18話
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「え~、では今からクラスメイト救出作戦を始めたいと思いまーす」
「おい、なにしてんだよ?」
「え? せっかくだからPik Pokで収益もらおうかと」
小路 雷汰は、たまにライブ配信で「俺を高額ギフトで泣かせてみろ」というフリップボードを持って真顔でスマホを見続けるという信じられないことを週1くらいでやっている。
その配信をアルマ二郎という名でやっているが、そのアプリを起動してライブ配信を勝手に始めた。
鬨人が注意しはじめたが、亜理紗がそれを止めた。
「もしかしたら配信してもらってた方がいいかも」
少なくとも身の危険が及ぶようなことがあれば視聴者がすぐに警察に通報してくれる。
公園の中央付近はかなり暗いので、亜理紗と鬨人のスマホでライトをつける。そして、体育館のすぐ隣にある変質者の中年の男が出没するというトイレのそばまでやってきた。
「麗音!」
バリアフリートイレのドアが少し開いていて、中に意識の無い麗音を発見した。
「気を失っているみたい」
亜理紗は看護師の母親から応急処置の方法をいろいろと教わっている。
麗音の鼻に耳を近づけ、呼吸音に異常がないかを確認し、額に触れて発熱がないか調べる。次に頸静脈が腫れていないか確認し、他に外傷がないかチェックする。
どうやって気を失ったのか?
薬で眠らされたならまだしも、殴られて気絶しているんだったら早く病院へ連れて行った方がいいと思う。
「ちょっ、待って怖いって、うぐぅ!」
外から雷汰の緊迫した声。
鬨人がバリアフリートイレの外に出ると、ピエロの覆面をした3人に囲まれて殴られていた。体型からして3人とも男。鬨人はトイレの中に落ちていたデッキブラシで後ろから頭に叩きつけて一人を気絶させた。
デッキブラシが半分に折れた。
鬨人はその後、2人相手に善戦したが、相手はたぶん大人。中学1年生では歯が立たなかった。
「う……」
「はやくカメラを回せ」
「ああ」
鬨人が気を失うと、ピエロの仮面の男ふたりがあわただしくトイレの中へ入ってきた。
「いや……誰か助けて」
「来ねーよ、バーカ」
亜理紗は声を振り絞ろうとするが、うまく声が出ない。
男の内の1人が亜理紗へ向かう中、もう1人がバリアフリートイレのドアを閉めようとする。
「来るよ、バーカ」
「──っ!?」
スライド式の扉が完全に締まる前に隙間に外から足が入った。
扉が無理やり開け放たれ、ドアを閉めようとしたピエロの仮面の男が腹部をおさえて崩れ落ちた。
「佐々木……さん?」
「亜理紗ちゃん、大丈夫かい」
神籬分析班コードネーム【三七鹿】。佐々木という名で田中家に月1回のペースで顔を出しているので亜理紗と面識がある。
「ちょっと公園の近くで見かけたもので、ねっ!?」
佐々木自身は非戦闘職だが、そこらの格闘技をかじったレベルの人間よりは格闘術に精通している。田中たちの実践部隊の人間に比べれば児戯に等しいが、一般人相手では十分に通用するレベルにある。
武器も使わず、素人の覆面の男を制圧した。
実際は保護対象、田中亜理紗が外出した時点で、複数台の監視カメラが彼女の挙動に異常があったのを検知した。だが、本来、この時間であれば田中一郎本人が娘を見ているため、警備の目が手薄になっていた。慌てて佐々木が向かったので事なきを得たが、反省すべき事態であるといえる。
このピエロの仮面を被った男たちは、闇バイトの求人サイトを通じて集まった後先を考えない連中なはず。目的は田中亜理紗に乱暴を働き、それを配信して、彼女を肉体的にも精神的も追い詰めること。なので、この3人は警察へ突き出せば解決する。
だが、バイトを依頼した人物およびそれを裏で操っているであろう人物を捕まえないと根本的な解決にはならない。
予想はできている。黒幕は田中亜理紗の元クラスメイト、仁科華。彼女が自分の手下を使って闇バイトへ依頼したと思われる。だが、手下を捕まえることができても仁科華は証拠がないため、罪に問えない可能性が高い。
佐々木は、ロープで実行犯の男3人を拘束している間、いろいろと思考を巡らせていた。
「刑事じゃないな?」
反応が遅れた。
いつの間にか背後を取られていた。
こんな芸当ができるのは絶対に素人ではない。
振り返ると同時に佐々木は意識を失った。
飯塚楼に雇われた傭兵は、最初からターゲット……田中亜理紗を追跡していた。
日本人にして、世界中の戦場を渡り歩いてきた戦闘のプロ中のプロ。
ターゲットが自宅のマンションから飛び出したので、追跡していると途中で少女を尾行している男を発見した。一般人では真似できないレベルでの尾行術だったので、日本の刑事だと思い、男は警戒した。
素人を制圧するところまでは、様子を見ていたが、無線で応援を呼ばないどころか手錠も持っていない。そのことからターゲットの父親の仲間である可能性があったので、スマホの形をした麻酔銃で気絶させた。
飯塚楼から田中一郎や周囲の警備している連中がいるから、無理はしないように言われていた。だが状況が変わった場合……今回のようなチャンスが生まれたら拉致するようにとも指示を受けていた。
まだ意識のあった田中亜理紗も同様に麻酔銃で眠らせ、脱出不可の細工を施した違法のダンジョンコアの中にターゲットを放り込み、遠くでサイレンが聞こえ始めた公園から脱出した。
「おい、なにしてんだよ?」
「え? せっかくだからPik Pokで収益もらおうかと」
小路 雷汰は、たまにライブ配信で「俺を高額ギフトで泣かせてみろ」というフリップボードを持って真顔でスマホを見続けるという信じられないことを週1くらいでやっている。
その配信をアルマ二郎という名でやっているが、そのアプリを起動してライブ配信を勝手に始めた。
鬨人が注意しはじめたが、亜理紗がそれを止めた。
「もしかしたら配信してもらってた方がいいかも」
少なくとも身の危険が及ぶようなことがあれば視聴者がすぐに警察に通報してくれる。
公園の中央付近はかなり暗いので、亜理紗と鬨人のスマホでライトをつける。そして、体育館のすぐ隣にある変質者の中年の男が出没するというトイレのそばまでやってきた。
「麗音!」
バリアフリートイレのドアが少し開いていて、中に意識の無い麗音を発見した。
「気を失っているみたい」
亜理紗は看護師の母親から応急処置の方法をいろいろと教わっている。
麗音の鼻に耳を近づけ、呼吸音に異常がないかを確認し、額に触れて発熱がないか調べる。次に頸静脈が腫れていないか確認し、他に外傷がないかチェックする。
どうやって気を失ったのか?
薬で眠らされたならまだしも、殴られて気絶しているんだったら早く病院へ連れて行った方がいいと思う。
「ちょっ、待って怖いって、うぐぅ!」
外から雷汰の緊迫した声。
鬨人がバリアフリートイレの外に出ると、ピエロの覆面をした3人に囲まれて殴られていた。体型からして3人とも男。鬨人はトイレの中に落ちていたデッキブラシで後ろから頭に叩きつけて一人を気絶させた。
デッキブラシが半分に折れた。
鬨人はその後、2人相手に善戦したが、相手はたぶん大人。中学1年生では歯が立たなかった。
「う……」
「はやくカメラを回せ」
「ああ」
鬨人が気を失うと、ピエロの仮面の男ふたりがあわただしくトイレの中へ入ってきた。
「いや……誰か助けて」
「来ねーよ、バーカ」
亜理紗は声を振り絞ろうとするが、うまく声が出ない。
男の内の1人が亜理紗へ向かう中、もう1人がバリアフリートイレのドアを閉めようとする。
「来るよ、バーカ」
「──っ!?」
スライド式の扉が完全に締まる前に隙間に外から足が入った。
扉が無理やり開け放たれ、ドアを閉めようとしたピエロの仮面の男が腹部をおさえて崩れ落ちた。
「佐々木……さん?」
「亜理紗ちゃん、大丈夫かい」
神籬分析班コードネーム【三七鹿】。佐々木という名で田中家に月1回のペースで顔を出しているので亜理紗と面識がある。
「ちょっと公園の近くで見かけたもので、ねっ!?」
佐々木自身は非戦闘職だが、そこらの格闘技をかじったレベルの人間よりは格闘術に精通している。田中たちの実践部隊の人間に比べれば児戯に等しいが、一般人相手では十分に通用するレベルにある。
武器も使わず、素人の覆面の男を制圧した。
実際は保護対象、田中亜理紗が外出した時点で、複数台の監視カメラが彼女の挙動に異常があったのを検知した。だが、本来、この時間であれば田中一郎本人が娘を見ているため、警備の目が手薄になっていた。慌てて佐々木が向かったので事なきを得たが、反省すべき事態であるといえる。
このピエロの仮面を被った男たちは、闇バイトの求人サイトを通じて集まった後先を考えない連中なはず。目的は田中亜理紗に乱暴を働き、それを配信して、彼女を肉体的にも精神的も追い詰めること。なので、この3人は警察へ突き出せば解決する。
だが、バイトを依頼した人物およびそれを裏で操っているであろう人物を捕まえないと根本的な解決にはならない。
予想はできている。黒幕は田中亜理紗の元クラスメイト、仁科華。彼女が自分の手下を使って闇バイトへ依頼したと思われる。だが、手下を捕まえることができても仁科華は証拠がないため、罪に問えない可能性が高い。
佐々木は、ロープで実行犯の男3人を拘束している間、いろいろと思考を巡らせていた。
「刑事じゃないな?」
反応が遅れた。
いつの間にか背後を取られていた。
こんな芸当ができるのは絶対に素人ではない。
振り返ると同時に佐々木は意識を失った。
飯塚楼に雇われた傭兵は、最初からターゲット……田中亜理紗を追跡していた。
日本人にして、世界中の戦場を渡り歩いてきた戦闘のプロ中のプロ。
ターゲットが自宅のマンションから飛び出したので、追跡していると途中で少女を尾行している男を発見した。一般人では真似できないレベルでの尾行術だったので、日本の刑事だと思い、男は警戒した。
素人を制圧するところまでは、様子を見ていたが、無線で応援を呼ばないどころか手錠も持っていない。そのことからターゲットの父親の仲間である可能性があったので、スマホの形をした麻酔銃で気絶させた。
飯塚楼から田中一郎や周囲の警備している連中がいるから、無理はしないように言われていた。だが状況が変わった場合……今回のようなチャンスが生まれたら拉致するようにとも指示を受けていた。
まだ意識のあった田中亜理紗も同様に麻酔銃で眠らせ、脱出不可の細工を施した違法のダンジョンコアの中にターゲットを放り込み、遠くでサイレンが聞こえ始めた公園から脱出した。
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