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長編
第5話 記念撮影
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「先ほどはありがとうございました」
「いえ、たいしたことはしていないです」
本当は、介入する気はなかったが、当真くんがマダムに突撃したため、やむなく関わっただけだからお礼を言われるようなことではないのだが……。
「ちわっす。先週、電話させてもらった瀬下っす」
すかさず瀬下が、店員の女性に仕事で訪れたことを説明し、うまく説明できないところを隣にいる御堂係長が、さり気なく助言をして用件を済ませた。
店員の女性から当真くんと俺にもう一度、礼を言われ、店をあとにした。
「次の場所はライカムというところにある大型ショッピングモールか……」
沖縄には、コザやペリーと言った横文字で呼ばれる地名が数多く存在し、そのルーツの多くは沖縄が戦後27年間、米の統治下にあったことからその名残が今でも残っている。
先ほど昼休みにスマホで調べたところ、昔、沖縄に駐留していた米軍司令部「琉球軍司令部(Ryukyu - Command=リュウキュウ・コマンド)のRyとComを取ってライカムと呼ばれていたが、今では正式な字名として、住所登録されているそうだ。
全国でも有数の大型ショッピングモールにやってきた。県内では一番大きな売り場面積を誇る施設とあって、その南国のリゾート感あふれる威容さは、これまでお目にかかったことがない。
「なんかやってますよ」
屋外の駐車場に停めて歩くこと5分。目的のお店に足を運び、仕事を済ませた。真ん中が吹き抜けになっていて、渡り廊下を渡っている時に当真くんが階下を見下ろし、何かに気が付いた。
テレビで何度か見たことがある。沖縄の〝エイサー〟という踊りだ。ドンドンッと重低音が響いていたのは、エイサーの太鼓の音だったのか?
たしか、お盆の時に行われる本土でいう盆踊りのようなもので、大きな太鼓と小さな太鼓を持った男性と、手踊りしている女性たちがいて、ひとりピエロのような恰好をして、太鼓を叩いているひと達の間を練り歩いたり、手に持っている扇のようなもので、滑稽な踊りをして見学している観客を盛り上げている。
「記念写真はいかがですか?」
「え? ボクたちですか?」
「ええ、女性はこちらの琉装もございます」
「やった。SNSにアップするっす」
「御堂係長どうします?」
男性はエイサーの恰好。女性は琉装という琉球王国時代の着物に着替えて撮影できるそうだ。
当真くんは驚きながらも俺と係長の様子を伺っており、瀬下は俺たちふたりなど関係なく興味ありありの態度を見せている。俺は御堂係長の意向を確認しようと振り返るとギョッとした。下を向いて何かブツブツと呟いている……。
「ブツブツブツブツブツブツ」
何か俺たち気に障ることをしてしまったのか?
「御堂係長」
「はッ……どうした?」
「いえ、あの写真、どうしますか?」
「うん? まぁ、しかたない……撮ろうか」
声が上擦っている。もしかして御堂係長……。
無理に合わせようとしてくれてるのか? なんて部下想いの上司なんだ……。
御堂係長からOKが出たので、さっそく、テントの中に案内されたが、なぜか当真くんだけ隣のテントに案内されて、テントの中に入って行ってしまった。
ネクタイを緩め、シャツを脱ぐ。肌着になった状態で、前のカゴの中に入っているエイサーの服を取り出すと、どうやって着ていいのかわからないため、近くに控えている男性スタッフに声をかけようと横を向くと、俺をジーっと見ている御堂係長と目が合った……。
そ、そうか、係長も着かたがわからないから俺や瀬下がどうしているのか、見回していたのか……。
幸い一般的な着物の着方で合っているらしく、打掛や脚絆を自分で身につけられたが、頭の〝サージ〟と呼ばれる青紫の頭巾の結び方がわからず大人しくスタッフの人に結んでもらった。
「こちらです」
「はぅぁぁああ⁉」
ま、まぶしい。
撮影場所の舞台には既に当真くんが案内されて、一段高い舞台のうえにひとり立っていた。お団子ヘアのカツラを被って琉装になった当真くん。手に持っている花笠で顔半分を隠し、照れながらコチラを見ている。
「当真くんカワいいっすねー」
くっ、瀬下、なにも考えずにその台詞を吐ける貴様が憎い……。
「なんか恥ずかしいデス///」
『ゾクゾクゾクッ』
「いえ、たいしたことはしていないです」
本当は、介入する気はなかったが、当真くんがマダムに突撃したため、やむなく関わっただけだからお礼を言われるようなことではないのだが……。
「ちわっす。先週、電話させてもらった瀬下っす」
すかさず瀬下が、店員の女性に仕事で訪れたことを説明し、うまく説明できないところを隣にいる御堂係長が、さり気なく助言をして用件を済ませた。
店員の女性から当真くんと俺にもう一度、礼を言われ、店をあとにした。
「次の場所はライカムというところにある大型ショッピングモールか……」
沖縄には、コザやペリーと言った横文字で呼ばれる地名が数多く存在し、そのルーツの多くは沖縄が戦後27年間、米の統治下にあったことからその名残が今でも残っている。
先ほど昼休みにスマホで調べたところ、昔、沖縄に駐留していた米軍司令部「琉球軍司令部(Ryukyu - Command=リュウキュウ・コマンド)のRyとComを取ってライカムと呼ばれていたが、今では正式な字名として、住所登録されているそうだ。
全国でも有数の大型ショッピングモールにやってきた。県内では一番大きな売り場面積を誇る施設とあって、その南国のリゾート感あふれる威容さは、これまでお目にかかったことがない。
「なんかやってますよ」
屋外の駐車場に停めて歩くこと5分。目的のお店に足を運び、仕事を済ませた。真ん中が吹き抜けになっていて、渡り廊下を渡っている時に当真くんが階下を見下ろし、何かに気が付いた。
テレビで何度か見たことがある。沖縄の〝エイサー〟という踊りだ。ドンドンッと重低音が響いていたのは、エイサーの太鼓の音だったのか?
たしか、お盆の時に行われる本土でいう盆踊りのようなもので、大きな太鼓と小さな太鼓を持った男性と、手踊りしている女性たちがいて、ひとりピエロのような恰好をして、太鼓を叩いているひと達の間を練り歩いたり、手に持っている扇のようなもので、滑稽な踊りをして見学している観客を盛り上げている。
「記念写真はいかがですか?」
「え? ボクたちですか?」
「ええ、女性はこちらの琉装もございます」
「やった。SNSにアップするっす」
「御堂係長どうします?」
男性はエイサーの恰好。女性は琉装という琉球王国時代の着物に着替えて撮影できるそうだ。
当真くんは驚きながらも俺と係長の様子を伺っており、瀬下は俺たちふたりなど関係なく興味ありありの態度を見せている。俺は御堂係長の意向を確認しようと振り返るとギョッとした。下を向いて何かブツブツと呟いている……。
「ブツブツブツブツブツブツ」
何か俺たち気に障ることをしてしまったのか?
「御堂係長」
「はッ……どうした?」
「いえ、あの写真、どうしますか?」
「うん? まぁ、しかたない……撮ろうか」
声が上擦っている。もしかして御堂係長……。
無理に合わせようとしてくれてるのか? なんて部下想いの上司なんだ……。
御堂係長からOKが出たので、さっそく、テントの中に案内されたが、なぜか当真くんだけ隣のテントに案内されて、テントの中に入って行ってしまった。
ネクタイを緩め、シャツを脱ぐ。肌着になった状態で、前のカゴの中に入っているエイサーの服を取り出すと、どうやって着ていいのかわからないため、近くに控えている男性スタッフに声をかけようと横を向くと、俺をジーっと見ている御堂係長と目が合った……。
そ、そうか、係長も着かたがわからないから俺や瀬下がどうしているのか、見回していたのか……。
幸い一般的な着物の着方で合っているらしく、打掛や脚絆を自分で身につけられたが、頭の〝サージ〟と呼ばれる青紫の頭巾の結び方がわからず大人しくスタッフの人に結んでもらった。
「こちらです」
「はぅぁぁああ⁉」
ま、まぶしい。
撮影場所の舞台には既に当真くんが案内されて、一段高い舞台のうえにひとり立っていた。お団子ヘアのカツラを被って琉装になった当真くん。手に持っている花笠で顔半分を隠し、照れながらコチラを見ている。
「当真くんカワいいっすねー」
くっ、瀬下、なにも考えずにその台詞を吐ける貴様が憎い……。
「なんか恥ずかしいデス///」
『ゾクゾクゾクッ』
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