異世界でスキルを奪います ~技能奪取は最強のチート~

星天

文字の大きさ
30 / 60
第四章 王都

第二十九話 世界の地理の講義

しおりを挟む
 今日も気持ちが良い朝だ。

 午前は講義だ。俺は、誰がやってくれるのだろう? と思いながら、講義を行ってくれるという場所まで行く。聞いた話によると、図書室でやるらしい。

 「失礼します」

 俺はノックして、返事が返ってくるのを待つ。

 「はい。どうぞ」

 と可愛い声が返ってきた。思い当たる節があり、俺は戸惑ったが扉を開ける。

 思った通りだった。そこにいたのは昨日の王女だった。

 「えっ!? 王女様が講義してくれるんですか?」

 俺は驚いて尋ねる。

 「はい。父……王からそう承りました」
 「はぁ。なるほど」

 うーん。それって、普通、下の者がやることじゃなのか? 例えば、メイドとか……うーん。でも、まぁ、やってくれるなら、それに越したことはないけど。

 「さて、今日は第一回ということですので、この世界の地理について話しましょう」

 王女さまがそう言いながら、黒板のようなものを指す。どうやら、ペンのようなもので自由に描けるらしい。

 「まず、三つの大陸に分かれているとされています。現在探索が進んでいる範囲だけですので、なんとも言えませんが……」

 王女は黒板に指を滑らせる。すると黒板が発光し、地図を形作った。電子黒板みたいだ。ただし、それは正確なものではなかった。

 「さて、まずはここ。私たちが住む大陸です」

 中央に描かれている大陸だ。規模はまぁまぁといったところか。

 「私たちの住む大陸をアーフ大陸と言います」

 大陸に文字が付いた。そして、国境線らしきものが描かれ出した。幾つもの国境線で区切られている。

 「アシュラ帝国、聖フラン王国、魔導国家オルぺの三大国家が統べています。あとは小国や傘下の国がいくつかですね。この大陸は比較的穏やかで、現在目立った戦はありません。ただ、帝国との近況が少し気になりますね」
 「この真ん中の国が王国ですか?」
 「はい。そうです。西の大国がアシュラ帝国、大陸の最も東の国が魔導国家オルぺです」
 「なるほど」

 俺が相づちをうつと、次は地図が西に西にとずれていく。

 「次はエルヴ・アルカ大陸。森精語で森精族《エルフ》の地という意味の大陸です。ここは森精族《エルフ》が住んでいます。森精族《エルフ》が住んでいる地だけあって、森林地帯です。ここは世界有数の絶景が望めます。現在、聖王国は森精族《エルフ》とは仲良くやっていて、交流しています」

 エルヴ・アルカは地図の左。つまり西の方にある大陸だった。他の大陸と比べ、こちらの大陸から近い。なので、交流も盛んなのだろう。

 「次は旧アルカディア大陸。現在は魔族の一種である鬼族たちのコミュニティがあると言われています」

 旧アルカディア大陸はアーフ大陸から見て、南の方角にある大陸だった。

 「この大陸は昔、光の女神が住まう地だったそうです。しかし、鬼族たちが百年以上の時をかけて、光の女神を駆逐しました。現在はここの【転移門《ポータル》】も壊され、直接行くのは困難な場所となっています」

 黒板に描かれた地図のような場所の一部は海に囲まれていて、確かに楽に行けるような場所ではない。だが、それでもこの大陸からは遠くない。航空機か何かがあれば行けそうな距離だ。ただ、もしかしたら、魔術を使っては厳しいのかもしれない。

 「さて、次はちょっと特殊な場所にあります」

 そういうと、彼女は黒板が立体的に浮かびあがった。

 「まずは天界……私たちの時空を多層的に見た場合、上に存在するとされている世界です。そこに行ける【転移門《ポータル》】は旧アルカディア大陸にあったのですが、先ほども言ったとおり、壊されてしまっていて、現在行くことはできません」

 転移という手段でしか行けないのなら、現在行くのは本当に無理なのだろう。

 「ここにあるのは天使族《エンジェル》の光輝天国です。ただ、国家と定義するのが難しいのですが……天使が住まう地で、さらにここから神界に行くことも可能とされています。真偽はともかくとしてですか。」

 そして、彼女は手を滑らし、立体的になった地図をひっくり返した。

 「そして、さらに獄界。地下の果ての果てにあるとされています。時空多層論を使うと、天界の反対で下に存在する空間です。ただ、ここ行けるのは死者。そして、一部の特別な者のみです。悪事を犯して死んだ者はそこで苦しみを受けているそうです」

 地球でいう地獄ということか。じゃあ、さっきの光輝天国は地球でいう天国ってことかな?

 「さて、ここまでで質問はありますか?」

 説明が一通り終わッ多用だ。簡単なことだけだが、結構、わかった。

 「ありません」
 「では、今日は終わりです。後は図書室の資料をご自由にご覧ください」

 優雅な礼をして、王女様は図書室から出ていった。

 「はぁ」

 俺は溜息をついた。

 「女子とまともに話すなんて無理だな……あいつは幼なじみだったから大丈夫だったけど、こんな美少女は無理だよなぁ」

 だが、嘆いたって恐らく変わらないのだろうと、俺は静かに読書を始めた。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~

エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます! 2000年代初頭。 突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。 しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。 人類とダンジョンが共存して数十年。 元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。 なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。 これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

処理中です...