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第五章 迷宮都市
第四十三話 絶望 中編
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暴風之龍王が空を駆ける。迷宮の空間が一度、大きく拡張される。もう敵しか見ない。
上空まで上がった暴風之龍王は俺に咆哮する。
「汝、我に相対するに相応しき敵也か?」
直接脳内に響き渡るような音。
俺は明確な闘志を持って、問いに答える。
「あぁ」
「ならば……」
来る……俺は構える。
「【暴風龍之息吹】!!!」
刹那、暴風が吹きおこる。嵐のように空気が渦巻き、巨大な螺旋を描き出し、襲いかかる。
俺は思わず吹き飛ばされる。だが、流石に一撃程度では死なないようにと、魔術を発動する。
「【氷晶錘】!」
重みのある氷を地面に落とし、何とか耐える。
まるで幻想だったかのように凶暴に荒れ狂う風が止む。
生き残ったことに対してか……驚愕するような顔で悪魔がこちらを見ている。遙か上空から楽しんでいる様子はまるで、ショーを見ている観客のようだ。
「【飛行】」
俺は空中に飛び上がり、一息吐く。
そして、そのまま手に持った剣を振るう。
「【閃光斬】ッ!」
一瞬で敵を斬るその技は本来、不可避にして不可視の技。しかし、斬撃は通らない。見事な鱗はその強靭さによって、斬撃を防ぐ。
「塵芥が! もがけ! 【風弾】」
本来なら可愛げのある【風弾】。初級と言ってもいいほどの簡単な魔術だが、高純度の魔力で極限まで強化されたそれは異次元な暴風を纏い、俺に襲いかかる。その数は……数万。
もはや視界全てを埋め尽くすほどの攻撃。俺の思考は一旦、止まる。
弾丸がゆっくりと動き出したように見えた。
俺の思考は急激に再開され、加速する。俺は物理限界に迫るほどの速度で動き出す。次の瞬間、俺がいた場所に弾丸の雨が突き刺さる。
「ッ!」
だが、まだまだ、弾丸は飛来し、更に攻撃してくる。
俺はまだまだ動き続ける。魔力を使って、吹き飛ばせるのか……いや、不可能だろう。
顔が引きつる。
そして、弾幕がやっと止む。
「はぁ……」
一瞬でも判断が遅れてたら、死んでいただろう。今まで以上に死という重い重い重圧が圧し掛かる。
「ほう避けるか」
少々関心した声で龍が語りかけてきた。上から目線だった。ゆっくりと息を整え、返事を返す。
「当たり前だろう!」
強がりとはったり。だが、龍は心底、愉快そうに笑った。
「久しぶりだな。一分も持った人間は……なら、これでどうだ【石化光線】」
状態異常を引き起こす眼光。それがビームのように一条の光芒となり、俺へと襲いかかった。目から放出されているそれは、なぜか非現実的だった。
だが、油断することなく、基本的動作で避け続ける。跳躍、屈み、左右のステップ……エトセトラ。
流石に余裕だ。
だが、攻撃するチャンスは勿論のように……無い。
「もう一回、いくか……【暴風龍之息吹】」
俺は一瞬でも気を緩めることができない状態まで追い込まれた。
また、あの暴力的な嵐がやってくる。
必死だった。
俺は半分、自棄になって強力な魔術を起動する。
「【炎裂弾】【付与・超貫通】ッ!」
幾つものに分裂していく炎。その炎には、どんなものすら貫通する文字通り魔法のような付与がされている。だが、その巨体に当たることなく虚空に消えていく。
圧倒的な風。
それが自然的に、炎を打ち消したのだ。
もはや恐怖感しかない。圧倒的、「死」という本能的恐怖に支配される。
「【氷晶槍《クリスタルランス》】【付与・超貫通】ッ!」
詠唱する度に減りゆく魔力。だが、そんなもの知ったことか! 俺は強力な付与を魔術にかけ、マシンガンのように乱射する。
だが、そんなもの、絶対的強者にとっては児戯に等しい。
「下らん」
龍は手を少し振るう。鋭利な爪が空気をなぞるごとに発生する暴風。事前に発動した暴風区域。つまりは【暴風陣】によって強力化されている暴風によって、俺が放つ攻撃は無力化されていく。
自分が絶対者で、貴様は獲物だ。そう言わんとばかりに改めて誇示するように大きく翼を広げる。
上昇気流が巻き上がる。急激な上昇気流によって作られた雲。そして、そこに魔術が起動される。
あぁ、嫌な音だ。
雷がバチバチと響く。
「【黒雷之宴】!」
龍が魔術によって、雷を強制的に俺に照準を定め、落とした。
荒れ狂う風の中、なぜか身体が固定されているかのように、俺は全く動けなかった。
直感的に死ぬしかないと思った時、俺は死にたくないという一心を思い出す。
今はもう会えない家族。今はもう会えない幼馴染。
色々な面面が思い出される。
「まだ死ねない……」
迫りくる絶望。俺は限界まで力を振り絞って、踊り狂う雷を避け、避け、避ける。固定されていた……何を馬鹿な。
――俺はまだ動ける。
――まだ動ける。
――動ける。
頭の中で反芻される声。
『死にたくない』
それだけで俺は限界を超える。
全身の力を振り絞った性で身体の節々が痛い。
俺はカラカラと乾いた笑いを漏らす。自嘲する。何やってんだろ。
「だけど……まだ死ねないんだ」
俺は同じ言葉を吐く。感情を吐き出す。
だが、吐いた言葉に悪魔は嘲笑する。
煩い。煩い。煩い。
だが、俺は何も言わない。
身体は満身創痍。
魔力もそろそろ限界が見えてきた。
さて、これが絶望か。
やけに冷静な頭がそう考えた。
まだまだ終わらない絶望は続く。
上空まで上がった暴風之龍王は俺に咆哮する。
「汝、我に相対するに相応しき敵也か?」
直接脳内に響き渡るような音。
俺は明確な闘志を持って、問いに答える。
「あぁ」
「ならば……」
来る……俺は構える。
「【暴風龍之息吹】!!!」
刹那、暴風が吹きおこる。嵐のように空気が渦巻き、巨大な螺旋を描き出し、襲いかかる。
俺は思わず吹き飛ばされる。だが、流石に一撃程度では死なないようにと、魔術を発動する。
「【氷晶錘】!」
重みのある氷を地面に落とし、何とか耐える。
まるで幻想だったかのように凶暴に荒れ狂う風が止む。
生き残ったことに対してか……驚愕するような顔で悪魔がこちらを見ている。遙か上空から楽しんでいる様子はまるで、ショーを見ている観客のようだ。
「【飛行】」
俺は空中に飛び上がり、一息吐く。
そして、そのまま手に持った剣を振るう。
「【閃光斬】ッ!」
一瞬で敵を斬るその技は本来、不可避にして不可視の技。しかし、斬撃は通らない。見事な鱗はその強靭さによって、斬撃を防ぐ。
「塵芥が! もがけ! 【風弾】」
本来なら可愛げのある【風弾】。初級と言ってもいいほどの簡単な魔術だが、高純度の魔力で極限まで強化されたそれは異次元な暴風を纏い、俺に襲いかかる。その数は……数万。
もはや視界全てを埋め尽くすほどの攻撃。俺の思考は一旦、止まる。
弾丸がゆっくりと動き出したように見えた。
俺の思考は急激に再開され、加速する。俺は物理限界に迫るほどの速度で動き出す。次の瞬間、俺がいた場所に弾丸の雨が突き刺さる。
「ッ!」
だが、まだまだ、弾丸は飛来し、更に攻撃してくる。
俺はまだまだ動き続ける。魔力を使って、吹き飛ばせるのか……いや、不可能だろう。
顔が引きつる。
そして、弾幕がやっと止む。
「はぁ……」
一瞬でも判断が遅れてたら、死んでいただろう。今まで以上に死という重い重い重圧が圧し掛かる。
「ほう避けるか」
少々関心した声で龍が語りかけてきた。上から目線だった。ゆっくりと息を整え、返事を返す。
「当たり前だろう!」
強がりとはったり。だが、龍は心底、愉快そうに笑った。
「久しぶりだな。一分も持った人間は……なら、これでどうだ【石化光線】」
状態異常を引き起こす眼光。それがビームのように一条の光芒となり、俺へと襲いかかった。目から放出されているそれは、なぜか非現実的だった。
だが、油断することなく、基本的動作で避け続ける。跳躍、屈み、左右のステップ……エトセトラ。
流石に余裕だ。
だが、攻撃するチャンスは勿論のように……無い。
「もう一回、いくか……【暴風龍之息吹】」
俺は一瞬でも気を緩めることができない状態まで追い込まれた。
また、あの暴力的な嵐がやってくる。
必死だった。
俺は半分、自棄になって強力な魔術を起動する。
「【炎裂弾】【付与・超貫通】ッ!」
幾つものに分裂していく炎。その炎には、どんなものすら貫通する文字通り魔法のような付与がされている。だが、その巨体に当たることなく虚空に消えていく。
圧倒的な風。
それが自然的に、炎を打ち消したのだ。
もはや恐怖感しかない。圧倒的、「死」という本能的恐怖に支配される。
「【氷晶槍《クリスタルランス》】【付与・超貫通】ッ!」
詠唱する度に減りゆく魔力。だが、そんなもの知ったことか! 俺は強力な付与を魔術にかけ、マシンガンのように乱射する。
だが、そんなもの、絶対的強者にとっては児戯に等しい。
「下らん」
龍は手を少し振るう。鋭利な爪が空気をなぞるごとに発生する暴風。事前に発動した暴風区域。つまりは【暴風陣】によって強力化されている暴風によって、俺が放つ攻撃は無力化されていく。
自分が絶対者で、貴様は獲物だ。そう言わんとばかりに改めて誇示するように大きく翼を広げる。
上昇気流が巻き上がる。急激な上昇気流によって作られた雲。そして、そこに魔術が起動される。
あぁ、嫌な音だ。
雷がバチバチと響く。
「【黒雷之宴】!」
龍が魔術によって、雷を強制的に俺に照準を定め、落とした。
荒れ狂う風の中、なぜか身体が固定されているかのように、俺は全く動けなかった。
直感的に死ぬしかないと思った時、俺は死にたくないという一心を思い出す。
今はもう会えない家族。今はもう会えない幼馴染。
色々な面面が思い出される。
「まだ死ねない……」
迫りくる絶望。俺は限界まで力を振り絞って、踊り狂う雷を避け、避け、避ける。固定されていた……何を馬鹿な。
――俺はまだ動ける。
――まだ動ける。
――動ける。
頭の中で反芻される声。
『死にたくない』
それだけで俺は限界を超える。
全身の力を振り絞った性で身体の節々が痛い。
俺はカラカラと乾いた笑いを漏らす。自嘲する。何やってんだろ。
「だけど……まだ死ねないんだ」
俺は同じ言葉を吐く。感情を吐き出す。
だが、吐いた言葉に悪魔は嘲笑する。
煩い。煩い。煩い。
だが、俺は何も言わない。
身体は満身創痍。
魔力もそろそろ限界が見えてきた。
さて、これが絶望か。
やけに冷静な頭がそう考えた。
まだまだ終わらない絶望は続く。
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