異世界でスキルを奪います ~技能奪取は最強のチート~

星天

文字の大きさ
44 / 60
第五章 迷宮都市

第四十三話 絶望 中編

しおりを挟む
 暴風之龍王テュポーンが空を駆ける。迷宮の空間が一度、大きく拡張される。もう敵しか見ない。

 上空まで上がった暴風之龍王テュポーンは俺に咆哮する。

 「汝、我に相対するに相応しき敵也か?」

 直接脳内に響き渡るような音。

 俺は明確な闘志を持って、問いに答える。

 「あぁ」
 「ならば……」

 来る……俺は構える。

 「【暴風龍之息吹テュポーンブレス】!!!」

 刹那、暴風が吹きおこる。嵐のように空気が渦巻き、巨大な螺旋を描き出し、襲いかかる。

 俺は思わず吹き飛ばされる。だが、流石に一撃程度では死なないようにと、魔術を発動する。

 「【氷晶錘クリスタルアンカー】!」

 重みのある氷を地面に落とし、何とか耐える。

 まるで幻想だったかのように凶暴に荒れ狂う風が止む。



 生き残ったことに対してか……驚愕するような顔で悪魔がこちらを見ている。遙か上空から楽しんでいる様子はまるで、ショーを見ている観客のようだ。


 「【飛行フライ】」

 俺は空中に飛び上がり、一息吐く。

 そして、そのまま手に持った剣を振るう。

 「【閃光斬】ッ!」

 一瞬で敵を斬るその技は本来、不可避にして不可視の技。しかし、斬撃は通らない。見事な鱗はその強靭さによって、斬撃を防ぐ。

 「塵芥が! もがけ! 【風弾エアバレット】」

 本来なら可愛げのある【風弾エアバレット】。初級と言ってもいいほどの簡単な魔術だが、高純度の魔力で極限まで強化されたそれは異次元な暴風を纏い、俺に襲いかかる。その数は……数万。

 もはや視界全てを埋め尽くすほどの攻撃。俺の思考は一旦、止まる。


 弾丸がゆっくりと動き出したように見えた。


 俺の思考は急激に再開され、加速する。俺は物理限界に迫るほどの速度で動き出す。次の瞬間、俺がいた場所に弾丸の雨が突き刺さる。

 「ッ!」

 だが、まだまだ、弾丸は飛来し、更に攻撃してくる。
 
 俺はまだまだ動き続ける。魔力を使って、吹き飛ばせるのか……いや、不可能だろう。

 顔が引きつる。

 そして、弾幕がやっと止む。

 「はぁ……」

 一瞬でも判断が遅れてたら、死んでいただろう。今まで以上に死という重い重い重圧が圧し掛かる。

 「ほう避けるか」

 少々関心した声で龍が語りかけてきた。上から目線だった。ゆっくりと息を整え、返事を返す。

 「当たり前だろう!」

 強がりとはったり。だが、龍は心底、愉快そうに笑った。

 「久しぶりだな。一分も持った人間は……なら、これでどうだ【石化光線】」

 状態異常を引き起こす眼光。それがビームのように一条の光芒となり、俺へと襲いかかった。目から放出されているそれは、なぜか非現実的だった。

 だが、油断することなく、基本的動作で避け続ける。跳躍、屈み、左右のステップ……エトセトラ。

 流石に余裕だ。

 だが、攻撃するチャンスは勿論のように……無い。

 「もう一回、いくか……【暴風龍之息吹テュポーンブレス】」

 俺は一瞬でも気を緩めることができない状態まで追い込まれた。

 また、あの暴力的な嵐がやってくる。

 必死だった。

 俺は半分、自棄になって強力な魔術を起動する。

 「【炎裂弾】【付与・超貫通】ッ!」

 幾つものに分裂していく炎。その炎には、どんなものすら貫通する文字通り魔法のような付与がされている。だが、その巨体に当たることなく虚空に消えていく。

 圧倒的な風。

 それが自然的に、炎を打ち消したのだ。

 もはや恐怖感しかない。圧倒的、「死」という本能的恐怖に支配される。

 「【氷晶槍《クリスタルランス》】【付与・超貫通】ッ!」

 詠唱する度に減りゆく魔力。だが、そんなもの知ったことか! 俺は強力な付与を魔術にかけ、マシンガンのように乱射する。


 だが、そんなもの、絶対的強者にとっては児戯に等しい。


 「下らん」

 龍は手を少し振るう。鋭利な爪が空気をなぞるごとに発生する暴風。事前に発動した暴風区域。つまりは【暴風陣】によって強力化されている暴風によって、俺が放つ攻撃は無力化されていく。

 自分が絶対者で、貴様は獲物だ。そう言わんとばかりに改めて誇示するように大きく翼を広げる。

 上昇気流が巻き上がる。急激な上昇気流によって作られた雲。そして、そこに魔術が起動される。

 あぁ、嫌な音だ。


 雷がバチバチと響く。


 「【黒雷之宴】!」

 龍が魔術によって、雷を強制的に俺に照準を定め、落とした。

 荒れ狂う風の中、なぜか身体が固定されているかのように、俺は全く動けなかった。

 直感的に死ぬしかないと思った時、俺は死にたくないという一心を思い出す。



 今はもう会えない家族。今はもう会えない幼馴染。




 色々な面面が思い出される。



 「まだ死ねない……」

 迫りくる絶望。俺は限界まで力を振り絞って、踊り狂う雷を避け、避け、避ける。固定されていた……何を馬鹿な。

 ――俺はまだ動ける。

 ――まだ動ける。

 ――動ける。

 頭の中で反芻される声。

 『死にたくない』

 それだけで俺は限界を超える。

 全身の力を振り絞った性で身体の節々が痛い。

 俺はカラカラと乾いた笑いを漏らす。自嘲する。何やってんだろ。

 「だけど……まだ死ねないんだ」

 俺は同じ言葉を吐く。感情を吐き出す。


 だが、吐いた言葉に悪魔は嘲笑する。


 煩い。煩い。煩い。

 だが、俺は何も言わない。


 身体は満身創痍。

 魔力もそろそろ限界が見えてきた。



 さて、これが絶望か。

 やけに冷静な頭がそう考えた。



 まだまだ終わらない絶望は続く。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...