悪役令嬢は言いたい

はじめまして！再び再び再び

「はじめまして！うわぁー、やっぱりすごく素敵！私ずっと、ずーーっとカイン様にお会いできる日を楽しみに、勉強も魔法も、え、と、魔法も、死ぬほど頑張って来ました！だから必ずカイン様のお役にたって見せます！」

「……。」

　血まみれ事件？から２週間経ち、帰宅しようと空き教室の前を通りかかった時の事です…いつもの少女がやはり大きな瞳を見開き、拳を振り回して魔法師団長のご子息であられるカインベルト・サリュードゥ様に勢いよく話しかけてらっしゃいました。

「……。」

　サリュードゥ様はただただ黙って聞いています。いえ、違いますね、あれは聞いていませんね。うっとうしい羽虫を追い払う様に左手で顔の前をはらっています。サリュードゥ様、その残念な美少女がうっとうしいのは分かりますが、羽虫ではありませんからね。それでは追い払えませんよ？
今度こそわたくしが注意を…一応周りを確認ですわ。どこにもあの彼の姿は見えませんね。

「貴方は、」

「ぐぅえっっ」
「バカ女が失礼した様で申し訳ございませんでした。お目汚しですので回収し処理させて頂きます。」

　私が言葉を発すると同時に、やはり何処からともなく現れた黒髪琥珀色の瞳をした少年が、彼女の首の後ろの襟を掴んで連れ去ってしまいました。
処理って何⁈流石に彼女も不味いと思ったのでしょうか、白目になりながらも全力で首を横に振っていますが、相変わらず容赦なく引きずり去っていきました。…大丈夫でしょうか？

「何だったんだ？」
「何なんでしょうねぇ…それにしても、彼は何処から現れるのでしょう？」
「あぁ、それならあの女が腕に着けていたブレスレットから、と言うべきかな。転移と監視の様な陣が見えたよ。…恐ろしく強力な執着もね。」

　流石に次期魔法師団長候補と言われるサリュードゥ様です。一目でわたくしの疑問を解明して下さいました。後半は声が小さく聞き取れませんでしたが…。