ヒカリとカゲ♡箱入り令嬢の夢見がちな日常♡

キツナ月。

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🏥お医者さまの章🏥

11.共闘

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 蓮乃宮女学院高等部では、ちょっとした騒ぎが起こっていた。

 「どういうことなの!? 姫華さんがあの女と……」

 「人払いまでなさるなんて!」


 女の子というのは何かと大袈裟だ。

 ヒカリと姫華が、ランチを共にしているだけなのに。



 護衛の鈴木さんは、表向き普通に給仕をしてくれている。

 姫華について食堂へ向かおうとしたら、カゲは面白くなさそうな顔でフイと姿を消してしまった。

 姫華の計画に乗ったことを見抜かれているのだろうか。

 こんな姿を見られなくて良かったような、不安なような。

 でも、やはり心許なさの方が大きかった。


 「とにかく、奥さんについて良くない噂を流すの」


 姫華がステーキにナイフを入れる。

 「でも、まったくの嘘では信じてもらえない。まずは情報収集が必要よ」

 真っ赤なドレスはまるで戦闘服だ。

 やはり、彼女には迷いがない。

 「で。あなた娘と仲が良いんでしょ? いろいろと訊き出してちょうだい。それとなくね」


 協力っていうか。アンタ、命令してるだけじゃない。


 ヒカリは、げんなりしながらパンにバターを塗りつけた。

 「公園に行けば会えるだろうから別にいいけど」

 子供と遊ぶのは嫌いじゃない。

 美亜ちゃんのことも。

 でも、誠先生の子供だと思うと、ヒカリはやっぱり辛い。

 「アンタも来れば? ついでに仲良くなっとけばいいじゃない」

 「私、子供は大嫌いなの」

 汗にまみれて子供と戯れるなんて冗談じゃないわと、姫華は顔をしかめた。


 じゃあ、アンタは何をするんだよ──。


 (こんなことだろうと思ったわ)

 ヒカリはパンにパクついた。

 先が思いやられる。

 疲れだけが溜まった。





 その頃。胡桃沢邸では、ちょうど昼食の膳が下げられているところであった。

 「旦那様。何かご心配事でも……?」

 あるじの食が進まないことを気にかけた橋倉が、遠慮がちに申し出る。

 「うむ……」

 春平は卓に肘をつくと、組んだ手を額に当てた。

 「健康診断の書類を見直したのだが、どうも結果が思わしくないようなのじゃ」

 「何と。しかし、若先生は」

 「あのときはヒカリが傍にいた。気を遣ってくださったのかもしれん」

 「すぐにでも問い合わせましょう」

 「のう、橋倉」

 「は」

 「上手くいかんものじゃのう。いつまでも、ヒカリを見守るつもりでおったが」

 「旦那様……」

 「ハハ。そのうち、直接クリニックへ出向くとしよう」

 春平は努めて明るい声を上げた。

 眉間の悩ましげなシワは消え、いつもの柔和な彼がそこにいる。

 「食後の茶をいただこうかな」

 「かしこまりました」


 そのように悠長な──。と言いそうになるところを、橋倉はぐっと堪えた。

 主にも、気持ちの整理の付け方というものがあろう。

 逸る気持ちを抑えながら茶筒を取り出す。



 「よぉ。ここにいたか、ジジイども」



 出し抜けに声をかけられ、驚いた橋倉は茶葉をぶちまけた。

 「気配を消しながら現れるな! この馬鹿者が!」

 「泥棒。貴様、ヒカリの護衛はどうした?」

 高級茶葉の香りが漂う中、春平が立ち上がる。

 ヒカリの前から姿を消したカゲは、何と屋敷に戻っていたのであった。

 「気が乗らねー。鈴木さんがいりゃ問題ねえだろ」

 カゲは、春平の斜向はすむかいにどっかと腰を下ろした。

 「訊きたいことがある」

 「何じゃ」

 「ガキの話だ」

 春平が座り直すと、カゲは橋倉の方に首を巡らせる。



 「てめぇ、いつだか“若先生なら心配ない”ようなことぬかしてたが、それは奴が既婚者だからか?」



 橋倉が、茶葉を片付ける手を止めた。






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