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5、約束です
しおりを挟む「では、行きます!」
先ずは、上段から斬りかかる。
「そんなものか?」
防がれるのは、分かっていた。
どう頑張ったところで、女の私では力が弱い。このまま力押しすれば、そのうち弾かれてしまう。けれど、それが狙いだった。
殿下が剣を弾き返すタイミングを見計らって、自分の剣を殿下の剣にスライドさせる。
殿下は力いっぱい弾き返したのだから、体勢が崩れる……
「動かないでください」
スライドさせた剣を、素早く殿下の喉元に突き付けた。
「そこまで! 勝者、リアナ嬢!」
私の勝利に、また周りがポカンとしている。
「きゃ~!! リアナ、かっこいい! 素敵過ぎる~!!」
約一名を除いて。
静まり返っているからか、ミモザの声がよくとおる。でも、応援されて悪い気はしない。
「今のは……女相手だから、本気になれなかっただけだ!」
負けていいわけをする殿下は、何だか惨めに思える。
「だとしても、負けたのですから、私のことはお忘れになってください」
「そんな約束は、していない! 俺が勝ったら、婚約解消をなかったことにすると言っただけだろう?」
……呆れて、何も言葉が出て来ない。
一発くらい、殴っておけば良かった。
「でしたら、僕がお相手いたしましょう。先程の約束、覚えていますよね?」
「ライアン様……?」
先程、決闘なんてしないと言ったばかりなのに……
「剣を、貸してくれるかい?」
素直に剣を渡して、後ろに下がる。
「ようやくやる気になったか。手加減は期待するな!」
いきなり斬りかかるオリバー殿下の剣を、ライアン様はひらりと交わした。そして、剣を構えた。
あの構えは……
勝負は一瞬だった。
ライアン様の剣はオリバー殿下の剣をなぎ払い、顔を突き刺す直前で止まった。オリバー殿下はそのまま、動くことも出来ず、瞬きすら出来ずに固まっていた。
「約束、しましたからね?」
剣を下ろしたライアン様は、いつもの笑顔に戻っていた。
「リアナ嬢、帰ろうか。勝ったご褒美に、カフェに行こう! 何か奢って欲しい」
いつものライアン様に、なんだかホッとする。
「私も勝ちましたよ?」
「では、リアナ嬢には僕が奢る」
「それって、意味があるのですか?」
「意味はありまくりだ。僕は、リアナ嬢に褒められたいしご褒美が欲しい! そして、リアナ嬢に奢りたい!」
変な人……
でも、意外と隣の居心地は悪くない。
「なんなら、アーンしてくれても」
「却下」
「そんな即答しなくてもいいじゃないかー」
いじけるライアン様と一緒に、私達はカフェに向かって馬車を走らせた。
◇ ◆ ◇
「殿下、私……まだ話していないことがあります」
リアナとライアンがカフェに向かって居なくなり、周りに集まっていた生徒達も無様に負けたオリバーに声をかけることなく帰って行った。そんな中、セシリーがオリバーに近寄って話しかけた。
「今更、なんだというんだ……」
愛するリアナに負け、恋敵のライアンに一瞬で負けてしまったオリバーは、何もかもどうでもよくなっていた。
「リアナ様とライアン様は、前から付き合っていました。二人は、ずっと殿下を騙していたのです!」
もちろん、そんな事実はない。
セシリーは、いつまでもリアナを諦めようとしないオリバーに苛立っていた。色仕掛けにも、泣き落としにも簡単に引っかかるくせに、リアナへの愛は消えることがなかった。それならば、リアナを排除するしかないと考えていた。
「そんな……そんなの嘘だ!! リアナは、俺を心から愛してくれていた」
「殿下は、お優し過ぎるのです。リアナ様は、ずっと本当の自分を殿下に隠して来たではありませんか! このまま、二人の婚約をお許しになるのですか? 殿下を裏切っていたリアナ様も、他国の侯爵令息ごときのライアン様も、地獄に突き落としましょう!!」
「リアナが、俺を裏切っていたなんて……許せない!」
何もかもどうでも良くなっていたオリバーの目に、怒りの炎が宿った。
セシリーにいいように使われて、本当に単純な男だった。
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