〖完結〗婚約者の私よりも、ご自分の義妹ばかり優先するあなたとはお別れしようと思います。

藍川みいな

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9、気付いたこと



 「良かった……」

 私の安堵した顔を見て、不機嫌だったアレン様の表情が穏やかになった。

 「グレイ兄上が、今取り調べを行っている。すぐに自白するだろう」

 「グレイ様が……ですか?」

 グレイ様は、第二王子様に側近として仕えている。そのグレイ様が、直接取り調べをするとは……

 「兄上も、エリーを心配しているんだ。エリーに傷を付けるなど許さん! って、自分から取り調べ室に乗り込んで行ったらしいよ」

 「グレイ様は、変わっていませんね」

 「そうだな。エリーに会いたがっていたよ」

 グレイ様にもアレン様にも、デイビッド様との婚約が決まってからあまり会うことがなくなっていた。お父様が忙しくて寂しいだろうと、おじ様がいつも私のことを連れ出してくれた時が懐かしい。グレイ様はお兄様みたいで、デイビッド様は同じ歳なのに弟みたいだった。おじ様のことは、もう一人のお父様のように思っていた。そしてアレン様は……
 
 「どうした?」

 いつの間にか、アレン様の顔をジッと見つめていた。目が合った瞬間、顔が真っ赤になっていくのを感じる。

 「む、昔のことを思い出して、ボーッとしていました!」

 私ったら、焦りすぎ……

 「昔のエリーは、可愛かったな」

 わざとそんな言い方をするアレン様。すぐからかうところは、昔と全く変わっていない。

 「今も可愛いです!」

 「そうだな。エリーは、昔も今も可愛い。そうだ、これを……」

 そんな優しい眼差しで素直に認められたら、何も言えなくなる。
 
 「それは?」

 「切り傷によく効く薬だ。痕が残らないように、毎日塗りなさい」

 優しいところも、本当に変わらない。

 「ありがとうございます。あの、アレン様にお願いがあるのですが……」

 アレン様には、デイビッド様からのいただき物を全ておじ様に返して欲しいとお願いをした。私は、期間限定の婚約者。贈り物をもらう理由などない。

 
 その翌日、お父様が隣国から戻って来た。
 
 「その手は、どうしたのだ!?」

 お父様は私の手の怪我を見て、卒倒しそうになっていた。落ち着いてから色々話そうと思っていたけれど、「すぐに話せ」と言われ、帰宅早々全てを話すことになってしまった。
 私が話している間、黙って聞いてくれていたけれど、怒りで拳がふるふると震えている。

 「……あいつ、どういうつもりなんだ!? ぶん殴ってやる!!」

 「お、お父様!? ダメです!!」

 お父様は温和な方だけれど、私のこととなると見境がなくなる。シードル侯爵家に乗り込もうとするのを、必死に止めた。
 
 「それにしても、あのデイビッドが信じられん。あれほどお前を愛してると言っていたのに……」

 「それは、どういうことですか?」

 お父様にそんな話をしていたなんて、初耳だった。

 十年前、お父様とおじ様が私の婚約者に選んだのは、アレン様だった。その話を聞いていたデイビッド様が、「エリアーナを愛しています!」そう何度も何度も言ったそうだ。それは、何日も何週間も何ヶ月も続いた。絶対に諦めようとはしないデイビッド様を見て、そんなに愛しているならと、彼を婚約者とした。
 一番に手を挙げた……とは聞いていたけれど、必死に婚約者になりたいと説得していたなんて知らなかった。だからおじ様は、あれほど自信を持って言い切っていたのだ。
 ただ、その話を聞いても、デイビッド様に気持ちが戻ることはない。それどころか、アレン様が婚約者だったら良かったのにと思っている。

 「お前が我慢する必要はない。自分の身を守る為に、お前を盾にしたなど、俺がこの手で殺してやりたい! 婚約なんて破棄だ!」

 「旦那様、それではエリアーナ様が我慢して来た意味がありません。お茶お飲みになり、心を落ち着かせてください」

 怒りのおさまらないお父様に、ジョアンナが落ち着くようにとリラックスするお茶を用意してくれた。ずっと近くで見ていたジョアンナが、一番私の気持ちを理解してくれている。

 「お父様、この一件で私は強くなりました。私に、考えがあるのですが……」

 お父様の話を聞いて、違和感の正体が分かった気がした。私の考えが正しければ、このままにしておくことは出来ない。何より、あれほど心配しているおじ様が気の毒だ。

 「考えだと?」

 「はい。婚約の件は、私に任せてください」

 お父様は不満そうだったけれど、このまま婚約を破棄して、何も解決しないまま終わってしまうのは嫌だった。
 私達の婚約は、三ヶ月、またはデイビッド様の記憶が戻るまで。それなら、三ヶ月もかからないかもしれない。
 
 そして一週間後、行きたいところがあると、デイビッド様を呼び出した。

 
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