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13、甘いキス
「おじ様、お願いがあります。慰謝料はいりません。ですから、アレン様と婚約したいのです」
「エリー!? それは……」
慌てるアレン様。
アレン様の性格は、私が一番よく知っている。デイビッド様のことで責任を感じて、彼からは決して私との婚約を言い出したりしないと思った。
「私はもう、我慢したくないのです。デイビッド様との婚約が決まった時、自分の気持ちを正直に話しておけば良かった。私は、アレン様が好きなのだと、はっきりとお父様とおじ様に言っていれば、こんなことにはならなかったかもしれない」
子供の恋心なんて、すぐに消えるものだと言い聞かせて、決まったことだからと諦めてしまった。
もう遠回りはしたくない。
「それは、俺から言おうと思っていたんだがな。俺の方こそ、我慢したくない。エリーが危険な時に、側に居てやれない……そんなのは、耐えられない。一番近くで、エリーを守り続けて行きたい」
アレン様の性格を、よく知っている。
知っているからこそ、私を選ばないと思っていた。彼は思った以上に、私のことを想って居てくれたのだと知った。
「お前達の気持ちは、分かった。いいよな? ベニー」
お父様は、おじ様の背中を力いっぱい叩いた。
「ゴホッ! ゴホッゴホッ! 力強過ぎだろう……。息子を選んでくれてありがとう、エリアーナ」
おじ様は、やっと少しだけ笑顔を見せてくれた。
「え、残念。デイビッドの婚約者じゃなくなったら、俺との婚約を考えてもらうつもりだったのに」
無表情な顔で、そう言うシルバ様。本気なのか冗談なのか、私には判断出来なかった。
「悪いが、エリーは誰にも渡さない」
シルバ様から私を隠すアレン様。
こうして私達は、婚約することになった。
デイビッド様は平民となり、邸から出て行った。自分を見つめ直す為に、旅に出ると言っていたそうだ。
「エリアーナ様、デイビッド様からの手紙を預かっております」
シードル侯爵家の使用人から、デイビッド様からの最後の手紙を渡された。手紙には、心から反省していることが書かれていた。そして、『さようなら』と。何もかも失ったことで、彼は自由になれたのかもしれない。
キルスティン様は、今まで騙して来た被害者達に、多額の慰謝料を支払うことになった。男爵は養子を取り、その子に爵位を継がせると決めた。そしてキルスティン様は、慰謝料を払う為に年の離れた商人の愛人になった。本妻からは虐められ、もう二度と誰かを誘惑しないように、邸から一歩も外に出してもらえないそうだ。ローレル夫人は凝りもせずに、次の嫁ぎ先を探して、貴族や商人に近付いているらしい。誰にも相手にされず、キルスティン様が愛人になった商人まで誘惑しているという噂だ。
「ここに来ることは、もうないと思っていた」
アレン様にお願いして、あの湖に連れて来てもらった。湖を眺めながら、不安そうに私の顔を見る。
「ここは、大切な思い出の場所です。怖い思いはしましたが、大切な場所であることは変わりません」
もうダメだと思った時、アレン様の声が聞こえたのを思い出す。
アレン様の手が、そっと私の手を握る。手を繋いだまま時が経つのも忘れて、私達は湖を眺めていた。
「肌寒くなって来たね。そろそろ帰ろうか」
冷たい風が頬をかすめる。
「そうですね……」
そう返事をしてアレン様の顔を見ると、優しい眼差しで私を見つめていた。
「もしかして、ずっと私を見ていました?」
湖を見ているのだと思っていたのに、彼は私を見ていたようだ。
「一分でも一秒でも長く、君を見ていたい。エリーが側に居ることが、まだ信じられないんだ」
私もまだ、信じられない。
「それなら……」
背伸びをして、彼の唇にそっと自分の唇を重ねる。チュッと音を立てて離れると、アレン様の顔が真っ赤になっていた。
「実感、湧きました?」
「まだだ……」
いたずらっぽい笑みを浮かべた私に、アレン様は甘い甘いキスをした。
END
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