〖完結〗もう私に関わらないでください!

藍川みいな

文字の大きさ
1 / 44

1、地獄の始まり


 「ティアナ、必ず幸せにするよ。俺を選んでくれて、ありがとう」

 3年前、彼は笑顔でそう言いました。そして私は、エリック・ホージー侯爵の妻になりました。
 この結婚が地獄の始まりになることを、3年前の私は知らなかったのです……

 私の名は、ティアナ・ゴードン。伯爵令嬢でした。エリック様と結婚して3年になります。
 エリック様は、初夜以来、私を求めたことがありません。何か気に触ることをしてしまったのかと悩んでいたのですが、最初からエリック様は私に興味がなかったようです。

 「レミアです。今日からお世話になることになりました。奥様、よろしくお願いします」
 
 結婚してから1年が経った頃、エリック様は最初の愛人を連れて来ました。ずっと邸に帰って来ないと思ったら、愛人がいたようで……その愛人を、隠すのが面倒になったのか、邸に連れて来たようです。1年間は私に気を使っていたということなのでしょうか……
 だけど、もう気を使う気はなくなったようです。

 「レミアは、今俺が1番大切にしている女性だ。失礼のないようにな」

 1番大切にしている女性とは、いったい何なのでしょうか……
 それなら妻である私は、エリック様にとってどんな存在ですか? 私は、ただのお飾りという事なのでしょうか?

 結婚してから2年が過ぎた頃、彼を想う気持ちはなくなっていました。
 エリック様は、離れに愛人を3人住まわせています。愛人3人には、毎日のように贈り物を贈っているのに、私には何もくださったことはありません。そして、その贈り物を買ったお金は、私の父からの援助金です。

 私と結婚したのは、お金が目当てだったのでしょうか。それと……

 「奥様はお綺麗ですね。なんの苦労も知らずに育ったのでしょう? エリック様は、奥様を観賞用だと仰っていました。奥様は顔以外、何の魅力もないんですって。夫に愛されない妻なんて、お気の毒様。あはははっ」

 私の顔がお好みのようです。そんなことを愛人に教えられました。
 魅力がない……そう言われれば、そうなのかもしれません。なんの苦労も知らずに……というのも当たっています。だからといって、私はこのような屈辱に耐えなければならないようなことをしたのでしょうか?

 結婚してから3年が経ちました。もう、私も限界です。この結婚は、両親がすごく喜んでくれていたので、エリック様がいつかは変わってくださるかもしれないと我慢して来ました。エリック様はとても優秀な方で、王太子殿下の右腕だと言われています。そんな方が私を見初めてくださり、結婚をしたのだと両親は思っています。
 私も結婚するまでは、そう思っていましたし、彼のことを好きでした。ですが、もう無理です。私を見てくれない彼を愛することは、出来そうにありません。

 私は離縁していただくために、離れにいるエリック様を訪ねました。
 3年間結婚していましたが、エリック様が本邸で過ごしたのはほんの数日です。最初の1年は、帰ってさえ来ませんでした。
 考えれば考えるほど、この3年はなんだったのでしょう……
 これからは、自由になりたいと思います。


 「エリック様、お話があるのですが……」

 エリック様は、最初の愛人のレミアさんの部屋にいました。レミアさんは嫌な顔をしながらも、ドアを開け、私を部屋の中に通しました。
 
 「話とは? 今はレミアとの大切な時間だ。手短に頼む」

 レミアさんは、ソファーに座っているエリック様のとなりに座り、エリック様の腰に両腕を回し、こちらを見て笑いました。
 わざわざ私にそんなところを見せなくても、もうエリック様には何の興味もありません。

 「エリック様、離縁してください」

 この一言が、私をさらなる地獄へと突き落とすことになりました。

感想 62

あなたにおすすめの小説

【完結】時戻り令嬢は復讐する

やまぐちこはる
恋愛
ソイスト侯爵令嬢ユートリーと想いあう婚約者ナイジェルス王子との結婚を楽しみにしていた。 しかしナイジェルスが長期の視察に出た数日後、ナイジェルス一行が襲撃された事を知って倒れたユートリーにも魔の手が。 自分の身に何が起きたかユートリーが理解した直後、ユートリーの命もその灯火を消した・・・と思ったが、まるで悪夢を見ていたように目が覚める。 夢だったのか、それともまさか時を遡ったのか? 迷いながらもユートリーは動き出す。 サスペンス要素ありの作品です。 設定は緩いです。 6時と18時の一日2回更新予定で、全80話です、よろしくお願い致します。

後妻の条件を出したら……

しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。 格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。 だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。 しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。

こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。 彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。 皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。 だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。 何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。 どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。 絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。 聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──…… ※在り来りなご都合主義設定です ※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です ※つまりは行き当たりばったり ※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください 4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!

もう何も信じられない

ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。 ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。 その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。 「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」 あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。

婚約破棄されました。

まるねこ
恋愛
私、ルナ・ブラウン。歳は本日14歳となったところですわ。家族は父ラスク・ブラウン公爵と母オリヴィエ、そして3つ上の兄、アーロの4人家族。 本日、私の14歳の誕生日のお祝いと、婚約者のお披露目会を兼ねたパーティーの場でそれは起こりました。 ド定番的な婚約破棄からの恋愛物です。 習作なので短めの話となります。 恋愛大賞に応募してみました。内容は変わっていませんが、少し文を整えています。 ふんわり設定で気軽に読んでいただければ幸いです。 Copyright©︎2020-まるねこ

虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました

天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。 妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。 その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。 家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。 ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。 耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。

あなただけが私を信じてくれたから

樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。 一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。 しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。 処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド