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2、エリック様の本性
「今、なんて言った?」
エリック様は、レミアさんの腕を腰から外させ、こちらに向かって歩いて来ました。
「離縁してくださいと、申し上げました」
そう言った瞬間、エリック様の表情が一変し……
バシンッッッ!!!と、大きな音を立てて私の頬を叩きました。
何が起きたのか、一瞬分かりませんでした。左頬がジンジンします……
エリック様にビンタされたのだと理解した時、
今度は右頬を殴られました。
何度も何度も殴られ、私はその場に倒れ込んでしまいました。
痛い……それよりも怖い……
あまりの恐怖に言葉が出ず、ただただ震えていました。
「ああ……君が変なことを言うから悪いんだぞ? 綺麗な顔が台無しじゃないか」
急に甘い声を出し、私の顔を何度も何度もさするエリック様。
触らないで! そう思っても、されるがまま、恐怖で動くことも出来ません。
「俺が君を甘やかし過ぎたせいだな。これからは、俺に逆らうことは許さない。君は俺に従っていればいいんだ。分かったな?」
「………………」
嫌だと……離縁したいと言いたいのに、怖くて何も言えません。
返事をしない私に、エリック様はまた手を振り上げ、容赦なく頬を殴られました。
「分かったな?」
もう私には、彼に逆らう気力なんてありませんでした。
「…………はい」
その返事以外、私に残された道はありませんでした。ほかの言葉を発して、また殴られるのが怖かったのです。その恐怖に、私は勝つことが出来ません。
この場から早く逃げたい……それだけしか、考えられませんでした。
「よしよし、いい子だ。それでいいんだ。
その醜い顔は見たくないから、治るまでは俺の前に姿を見せるな。分かったなら、部屋に戻れ」
震えている足に何とか力を入れて立ち上がりました。
動いて……お願いだから、ちゃんと動いて! と、自分に言い聞かせながら、やっとの思いで部屋から出てドアを閉めました。
今の出来事が何だったのか、まだ理解出来ていません。数十分かけて部屋に戻った私は、ベッドに入り、布団を頭から被りました。
エリック様の、あの狂気に満ちた顔が、目に焼き付いて消えません。殴られた頬の痛みよりも、心が痛いです。
出会った頃の彼は、とても優しい人でした。彼と出会ったのは5年前、私が16歳で彼が21歳の時でした。
―5年前―
「ティアナ、お前に会いたいという方がみえている」
お父様に呼ばれて応接室に行くと、とても綺麗な男性が待っていました。金色の髪で緑色の瞳。肌は白くてまつ毛が長くて、絵に書いたような美男子です。
「本当に美しい方ですね」
そんな美しい彼にそう言われて、顔が熱くなってしまいました。こんな綺麗な男性に褒められるなんて、なんだか恥ずかしいです。お父様は過保護で、滅多に私を男性に会わせようとはしなかったのに、どうしてこの方には会わせたのでしょうか?
「この方は、エリック・ホージー侯爵だ。お前と、婚約したいと仰ってくださっている」
「婚約……ですか?」
お父様が、こんなに上機嫌で男性を紹介するなんて、初めてのことです。
「すぐにでなくてもかまいません。ゆっくり考えていただけたらと、思っております」
とても優しそうな方ですね。お父様も気に入っているようですし、真剣に考えてみます。
その日から、エリック様は毎日会いに来てくださいました。お忙しい方なのに、私の為に時間を作ってくださるのが嬉しくて、とても幸せでした。
そして1年後、私はエリック様と婚約しました。
婚約してからも毎日会いに来てくださり、すごく幸せでしたが、彼の体調が心配でした。
「お疲れなのに、私の為に無理をなさらないでください。エリック様のお身体が心配になってしまいます」
「会いに来るのは、俺の為だ。だが、そう思ってくれるなら、これからは毎日邸に居てくれないか?」
エリック様のその言葉で、私達は結婚をすることになりました。毎日、大好きな人と一緒に過ごせるなんて、絶対に幸せに決まってます!
「ティアナ、必ず幸せにするよ。俺を選んでくれて、ありがとう」
結婚式で、エリック様がそう言ってくださいました。私はエリック様と、これから幸せになるのだと疑いもしませんでした。
その夜、大好きな人に初めて抱かれました。とても甘くて幸せな夜でした。
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