〖完結〗もう私に関わらないでください!

藍川みいな

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10、港市場


 「嫁のもらい手がなくなるな……」

 先生から報告を受けたお父様は、大きなため息をついていました。ため息をついているわりに、なんだか嬉しそうです。

 「あなた、顔がにやけていますよ。お嫁に行かせたくないのがバレバレです」

 お母様につっこまれて、真面目な顔をしようとするお父様。
 私はお嫁に行かなくてもいいです。お父様とお母様と、ずっと一緒に暮らせたら幸せです。あの結婚で、懲りてしまいました。


 そしてさらに、2年が過ぎました。私は15歳になり、縁談の話がひっきりなしに来ています。
 この中の誰かと婚約をしてしまえば、エリック様に出会うことがないのかもしれません。そうは思っても、その為に誰かと婚約するなんて出来ませんでした。
 それに、お父様は縁談のことを話題にはしません。これは、前と同じです。
 前の時は、エリック様だけを私に喜んで紹介しました。

 「お父様、私は婚約者を自分で選びます。だから、決して私には誰も紹介しないでください」

 こんなことを言っても、きっと何も変わりません。1年後には、お父様が私にエリック様を紹介するでしょう。 

 時が戻る前は、あまり邸を出る事がありませんでした。ですが今は、時々街に出かけています。私は世間知らず過ぎたのだと、反省しました。

 「ティアナ様、今日はどちらに行かれるのですか?」

 街を歩いていると、街の人達から話しかけられるようになりました。
 馬車はあまり使いません。街をブラブラと歩くのが、最近の私の楽しみです。
 
 「今日は、港市場に行ってくるわ」

 「市場はいいですね! お気をつけて!」

 おばさんは、手を振って見送ってくれました。

 「お嬢様~! 待ってくださ~い!」

 ミランダが走って追いかけて来ます。私が歩くのが早いと、いつも文句を言っています。

 「ミランダも鍛えなさいよ。そんなんじゃ、農家としてやっていけないわよ?」

 「え……どうして、私の実家が農家だと?」

 あ……思わず、前の私しか知らないことを言ってしまいました。

 「それは……、前に話してくれたじゃない! それよりも、早く行きましょ! こんなんじゃ、日が暮れてしまうわ」

 不思議そうな顔をしていましたが、納得はしてくれたようです。
 
 市場に着くと、街の中とは違う雰囲気でしたが、すごく賑わっていました。

 「わぁ! こんなにたくさんの人が、色々な国から来ているのね!」

 港市場に来たのは初めてでした。様々な国から、商人や旅人達が来ていて、治安が悪いからとお父様に止められていたのです。
 ですが今日は、どうしても市場に来たかった理由がありました。
 今日この市場に、リオン王子がいらっしゃるからです。
もうすでに、エリック様はリオン王子の側近になっています。ということは、エリック様もこの市場に姿を現すはずです。
 もちろん、会いたくはありません。だけど、私は逃げないと決めました。先に敵を見ておくことで、この後出会うことになっても怯えないという自信が欲しかったのです。
 私はミランダに服を借り、気付かれないために平民を装っています。あの日、初めて私を見たとは思えません。だから、私だとバレないように変装しました。変装していたのに、おばさんにはバレバレだったけれど、あのおばさんには私がどんな格好をしていてもバレてしまうので気にしないことにします。

 「お嬢様~、美味しそうな果物があります! 買って帰りましょう!」

 「ミランダ……お嬢様はやめて。今は、メグと呼んでって言ったでしょ? 」
 
 メグという名前は、ミランダの妹の名前だそうです。間違えないようにメグという名前にしたのに、ミランダには困ったものです。

 ザワザワザワザワ……

 急に市場にいる人達がざわつき始めました。どうやら、リオン王子が来たようです。
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