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聖女とは…
しおりを挟む「おもてなし出来るような場所がないのですが……」
城を建てる事を後回しにしていた為、今もまだアーチル村の家に住んでいたセリシアは、王都で一番広い宿屋の1階にある食堂へと大聖女を案内した。
「セリシア様とお話出来るなら、場所はどこでもかまいません。」
大聖女には二人の聖女がお供についていて、椅子に座った大聖女の両脇に聖女達は立っていた。
「お話というのは、どんなことでしょうか?」
「単刀直入に言います。セリシア様に、聖女協会に来ていただきたいのです。」
思ってもみなかった大聖女の言葉に、セリシアは困惑した。
「……それはどういうことですか!?私はこの国の王妃であり聖女です。この国を出るつもりはありません!」
「失礼ですが、セリシア様は一度他の国を追放されてますよね?それなのに、どうしてあんな勝手な人間を守っているのですか?」
これは現実なの!?大聖女様の言葉とは思えない……。でもこの方は、確かに大聖女様……だって大聖女様のオーラが他の聖女とは比べ物にならない。
「大聖女様は、人を守るつもりはないのですか?」
「ふふっ。直球ですね、嫌いじゃありません。その通りです。私は人を守るつもりなど、全くありません。」
「では、なぜ聖女協会があるのですか?」
私は聖女協会を尊敬していた……聖女協会のおかげで、この大陸の平和が保たれてると思っていたから。
「セリシア様も経験したと思いますが、聖女はずっと道具として扱われてきました。だから、聖女を大切にさせる為に、聖女の力によって国の順位をつけたのです。」
「この大陸の為ではなく、聖女の為の協会だった……ということですね。」
気持ちはわからなくはない……でも、私は……アーチルの人達に出会って、守りたいって心の底から思った。
「そうです。セリシア様も、私達と共に聖女協会に参りましょう。人間には、守る価値などありません。」
「……行きません。守る価値がない?私はそうは思いません!私は全力でアーチル国民を守ります!」
セリシアは、珍しく怒っていた。
「そう……ですか。申し訳ありません、怒らせてしまったようですね。……これで失礼します。」
大聖女は立ち上がり、去って行った。
「大聖女様、よろしいのですか!?」
セリシアの力は大聖女よりも強いと判断し、次の大聖女にする為に必要な存在だった。
「彼女の目は、とても澄んでいました。あんな目にあった彼女がですよ?……私達も、考えを改めなければいけませんね。」
セリシアの人を守りたいという純粋な心は、人を恨んでいた大聖女の心をも変えた。
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