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5.happy and happy!
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コーディリアは、窓から湖の穏やかな水音に耳を澄ませつつ、星の瞬きを見上げていた。
九月ともなれば、チェストルの夜に、つい数週間前までの暑さはなく、秋の気配を感じるコーディリアだった。
「寒くない?」
寝室に入って来たオーランドが、窓辺に座るコーディリアに、声を掛ける。
「寒くないわ、ちょうどいいくらい。今頃・・・、どうしているかしら?」
「父上も母上も、君の花嫁姿を思い出して、感慨深くなっているんじゃないかな。ウォルトンまでの旅を、楽しんでいるといいね」
「お父様とお母様のことじゃないわ。アイリスのことよ」
「今日ばかりは・・・、連れてくるわけには行かないだろう?」
と、オーランドは屈み、コーディリアを抱き上げると、今夜、初めて契りを交わすベッドへ下した。
コーディリアからその提案があったのは、結婚式の一週間前だった。
「わたくしたちの初めての夜は・・・、ラバダ・コテージにしてはいけない?」
コーディリアが頬を赤らめながら、そう提案してきた時、オーランドは言葉に詰まった。
結婚式の翌々日に、ジョンとキャロラインは、ウォルトンへ出発する予定で、ジョンとキャロラインが発った後、午後からオーランドとコーディリアも、ラバダ・コテージへ向かう予定をしていた。
ラバダ・コテージは、フォーシーズンズ・ハウスから馬車で二時間ほど行ったところにある、森と湖に囲まれた湖畔の一軒家で、新婚の甘く蕩けるような時間を、ふたりきりで過ごそうと、決めていたのだった。
当然、オーランドは、ラバダ・コテージで、濃厚な夫婦の時間を持つつもりだった。
つまりは、ベッドで存分に睦み合い、絡み合いたいと願っていた。
しかし、結婚した日から、寝室はひとつになる訳で、当然、ふたりの初夜は、結婚式の夜になると考えていたオーランドにとって、コーディリアの提案は、寝耳に水だった。
コーディリアの希望を聞き入れるとなれば、オーランドは、二晩、我慢を強いられることになった。
おそらく、妻となったコーディリアは、同じベッドで眠るというのに。
正直、オーランドは、自分の理性に自信が持てなかった。
「えーと、それは・・・」
どう異議を唱えようかと、口を開いたオーランドだったが、
「落ち着かないんですもの」
と、コーディリアが遮った。
「結婚式の夜は、きっと、レセプションで遅くなるでしょう?それに、このお屋敷には、お父様もお母様も、サディアスもキースもいるわ。それだと何だか・・・、落ち着かなくて。だったら、ラバダ・コテージで迎えた方が、いいんじゃないか、って・・・」
デリケートな話なだけに、こうして正直に自分の想いを打ち明けることは、勇気がることだろうと、オーランドは思った。
それだけ打ち解けているのだとも、思った。
それに今、オーランドの下半身事情を説明したところで、おそらく、そういった欲求に目覚めていないコーディリアに、分かってもらえるような気がしなかった。
むしろ、異議を唱えて、新婚生活が最初からこじれることを考えれば、二日間の辛抱を選んだ方がいい。
それが、オーランドの出した結論だった。
そうして迎えた結婚式の日、ホレスの教会で、式は恙なく執り行われ、カクテルパーティー、レセプションと続いた。
チェストルという田舎の小国の領主の結婚ということで、絢爛豪華というわけにはいかなかったが、アールーズとダナムを始め、周辺の領国からも祝いに駆け付け、教会周辺には、領主と、ウォルトンから来た美しい花嫁を一目見ようと、領民たちが押し寄せた。
花嫁と花婿は終始笑顔で、人々に応え、若く、仲睦まじい領主夫妻に、人々は歓声と惜しみない拍手を送った。
極めて短い準備期間ではあったが、サディアス、キースの尽力のせいで、結婚式からレセプションまで、何の問題もなく、予定は無事に終了した。
そして、日付が変わる前には、オーランドとコーディリアは寝室に入った。
オーランドは灯りを吹き消し、おやすみ、おやすみなさい、と、それぞれ、ぎこちなく両脇からダブルベッドに入る。
今夜、二人の間に、契りはないはずだった。
けれども、ナイトウエアに着替え、同じベッドに入るというのに、お互いを意識しないではいられなかった。
オーランドは、コーディリアに背を向けた。
そうでもしないと、自分を保てなかった。
背後に眠るコーディリアからは、ほのかな甘い香りが漂い、衣擦れの音が聞こえると、煩悩に苛まれた。
オーランドは、ひたすら眼を閉じ、眠りが訪れる時を待ち望んだ。
けれども、
「オーランド・・・」
柔らかな声で呼びかけられたかと思うと、コーディリアの指が、オーランドの背中に触れる。
気が変わったかと、オーランドは、がばっと跳ね起きた。
コーディリアは、暗がりの中、ベッドの上に座り、微笑んでいた。
「オーランド、わたくし・・・、あなたに、お礼が言いたくて」
「礼を?」
「わたくし、本当に幸せだわ。あなたと一緒にいると、いつも楽しくて仕方がないの。自分のことが、大好きでいられるの。わたくしと結婚してくれて、本当にありがとう」
清らかな笑顔で、コーディリアにそう言われると、邪な考えに囚われていた自分に、罪悪感を覚えた。
コーディリアは、こんなにも純粋な気持ちで、俺を想っていてくれるのに。
俺ときたら・・・、まったく。
「礼を言わないといけないのは、俺の方だ。こんな辺鄙な田舎に嫁いできてくれて、ありがとう」
オーランドは、真新しい結婚指輪の光るコーディリアの手を取ると、心からの愛と感謝を込めて、唇を落とした。
そして、コーディリアの手を取ったまま、横になった。
「これからよろしく」
「わたくしこそ」
そう言って、ふたりは、見つめ合い、微笑み合ってから、静かに眼を閉じた。
翌日、フォーシーズンズ・ハウスは、朝から大忙しだった。
街や村の長、組合、団体などが、次々と、フォーシーズンズ・ハウスを祝いに訪れ、果樹園主たちを招いての祝賀会、数多い祝状への返信の指示などに加え、次の日にウォルトンへ出発するジョンとキャロラインの支度など、予定は目白押しで、瞬く間に夜を迎えていた。
翌日から、五日程、ラバダ・コテージで過ごすオーランドは、無粋だとは思いながらも、夜、しばし書斎に籠り、急ぎの案件をいくつかサディアスに頼んだ後、寝室に戻った。
時計の針は、深夜零時を過ぎていた。
そっと、寝室のドアを開けてみると、コーディリアは、心地よさそうな眠りについていた。
ベッドの傍らに座り、オーランドは、コーディリアの寝顔を見守った。
疲れてるよな。
昨日の結婚式では、大勢の人の前で緊張していただろうし、今日は今日で、朝から来客が途絶えることがなかった。
コーディリアは、始終、笑顔で、朗らかで、誰に対しても丁寧に応えていたが、疲れていないはずはないだろうと思った。
眠りを妨げないように注意しながら、その張りのある頬に、指でそっと触れる。
何でこんなに、柔らかくて、可愛くて、可愛くて・・・、仕方ないのかなあ。
ラタンを編むときの真剣な表情も、薔薇の手入れをするときの熱心な姿も、話す時の輝くような笑顔も、オーランドは、いつもコーディリアに魅了されて、目が離せなかった。
オーランドが二十歳の時に、両親が不慮の事故で亡くなって、突然チェストルの領主となり、弟たちとフォーシーズンズ・ハウス、そして果樹園の広がる土地と、領民の穏やかな暮らしを守るために、無我夢中で、務めを果たしてきた。
アールーズ、ダナムという、大きな領国に囲まれた小さな土地の領主は、小馬鹿にされ、嫌がらせを受けることも多々あったが、どちらか一方に片寄ることなく、オーランドの絶妙な舵取りで、均衡を保ってきた。
そうして、恋も結婚の文字もどこかに追いやり、その分、アイリスを妹か娘のように可愛がって、年月が過ぎ過ぎ、ようやく領主の務めと立場に慣れて来たかと思えば、今度は、夫人を、跡取りを、と期待されるようになった。
結婚、と言われても、すぐさま実感は湧かなかったが、それでも、漠然とした期待のようなものはあった。
夫婦仲の良い両親の元で育ったので、自分も良い相手に巡り合えたら、とは思っていた。
けれども、実際は、そう甘いものではなく、見合い相手は、アイリスの存在を知るや、みなオーランドの前から消え去った。
失望と落胆、加えて弟たちからの叱責・・・、非が自分にあるのは分かっているだけに、オーランドは、何ともやるせなかった。
そんな日々を過ごすオーランドの元へやって来たのが、コーディリアだった。
フォーシーズンズ・ハウスへやって来たコーディリアは、自分自身も、深い問題を抱えていて、自分らしさを知らないままだった。
けれども、チェストルでの自由な暮らしで、本当の自分に出会い、生き生きと、伸びやかになった。
生まれ変わったようなコーディリアは、輝くように眩しい笑顔と、優しい思いやりに溢れ、 アイリスのことも、大切に可愛がってくれた。
「好きにならないわけがないよなあ」
コーディリアの寝顔を見つめつつ、オーランドはその柔らかな髪を、そっと撫でた。
その瞬間、コーディリアがうっすらと眼を開いた。
起こしてしまったかと、慌てて手を引っ込めるオーランドに、
「大好きよ・・・、オーランド」
寝言のようでもあり、違うようでもあり・・・、コーディリアはそれだけ言うと、再び寝息を立て始めた。
ああ・・・、たまらない。
昨夜に引き続いて、沸き上がって来る煩悩を鎮めるために、オーランドは、自分の両頬をパチンと叩いた。
そして、翌朝、ジョンとキャロラインがウォルトンへ向けて出発した後、オーランドとコーディリアも、準備を済ませ、アニーを含め数名の召使の乗った馬車を従え、ラバダ・コテージへ向けて出発したのだった。
九月ともなれば、チェストルの夜に、つい数週間前までの暑さはなく、秋の気配を感じるコーディリアだった。
「寒くない?」
寝室に入って来たオーランドが、窓辺に座るコーディリアに、声を掛ける。
「寒くないわ、ちょうどいいくらい。今頃・・・、どうしているかしら?」
「父上も母上も、君の花嫁姿を思い出して、感慨深くなっているんじゃないかな。ウォルトンまでの旅を、楽しんでいるといいね」
「お父様とお母様のことじゃないわ。アイリスのことよ」
「今日ばかりは・・・、連れてくるわけには行かないだろう?」
と、オーランドは屈み、コーディリアを抱き上げると、今夜、初めて契りを交わすベッドへ下した。
コーディリアからその提案があったのは、結婚式の一週間前だった。
「わたくしたちの初めての夜は・・・、ラバダ・コテージにしてはいけない?」
コーディリアが頬を赤らめながら、そう提案してきた時、オーランドは言葉に詰まった。
結婚式の翌々日に、ジョンとキャロラインは、ウォルトンへ出発する予定で、ジョンとキャロラインが発った後、午後からオーランドとコーディリアも、ラバダ・コテージへ向かう予定をしていた。
ラバダ・コテージは、フォーシーズンズ・ハウスから馬車で二時間ほど行ったところにある、森と湖に囲まれた湖畔の一軒家で、新婚の甘く蕩けるような時間を、ふたりきりで過ごそうと、決めていたのだった。
当然、オーランドは、ラバダ・コテージで、濃厚な夫婦の時間を持つつもりだった。
つまりは、ベッドで存分に睦み合い、絡み合いたいと願っていた。
しかし、結婚した日から、寝室はひとつになる訳で、当然、ふたりの初夜は、結婚式の夜になると考えていたオーランドにとって、コーディリアの提案は、寝耳に水だった。
コーディリアの希望を聞き入れるとなれば、オーランドは、二晩、我慢を強いられることになった。
おそらく、妻となったコーディリアは、同じベッドで眠るというのに。
正直、オーランドは、自分の理性に自信が持てなかった。
「えーと、それは・・・」
どう異議を唱えようかと、口を開いたオーランドだったが、
「落ち着かないんですもの」
と、コーディリアが遮った。
「結婚式の夜は、きっと、レセプションで遅くなるでしょう?それに、このお屋敷には、お父様もお母様も、サディアスもキースもいるわ。それだと何だか・・・、落ち着かなくて。だったら、ラバダ・コテージで迎えた方が、いいんじゃないか、って・・・」
デリケートな話なだけに、こうして正直に自分の想いを打ち明けることは、勇気がることだろうと、オーランドは思った。
それだけ打ち解けているのだとも、思った。
それに今、オーランドの下半身事情を説明したところで、おそらく、そういった欲求に目覚めていないコーディリアに、分かってもらえるような気がしなかった。
むしろ、異議を唱えて、新婚生活が最初からこじれることを考えれば、二日間の辛抱を選んだ方がいい。
それが、オーランドの出した結論だった。
そうして迎えた結婚式の日、ホレスの教会で、式は恙なく執り行われ、カクテルパーティー、レセプションと続いた。
チェストルという田舎の小国の領主の結婚ということで、絢爛豪華というわけにはいかなかったが、アールーズとダナムを始め、周辺の領国からも祝いに駆け付け、教会周辺には、領主と、ウォルトンから来た美しい花嫁を一目見ようと、領民たちが押し寄せた。
花嫁と花婿は終始笑顔で、人々に応え、若く、仲睦まじい領主夫妻に、人々は歓声と惜しみない拍手を送った。
極めて短い準備期間ではあったが、サディアス、キースの尽力のせいで、結婚式からレセプションまで、何の問題もなく、予定は無事に終了した。
そして、日付が変わる前には、オーランドとコーディリアは寝室に入った。
オーランドは灯りを吹き消し、おやすみ、おやすみなさい、と、それぞれ、ぎこちなく両脇からダブルベッドに入る。
今夜、二人の間に、契りはないはずだった。
けれども、ナイトウエアに着替え、同じベッドに入るというのに、お互いを意識しないではいられなかった。
オーランドは、コーディリアに背を向けた。
そうでもしないと、自分を保てなかった。
背後に眠るコーディリアからは、ほのかな甘い香りが漂い、衣擦れの音が聞こえると、煩悩に苛まれた。
オーランドは、ひたすら眼を閉じ、眠りが訪れる時を待ち望んだ。
けれども、
「オーランド・・・」
柔らかな声で呼びかけられたかと思うと、コーディリアの指が、オーランドの背中に触れる。
気が変わったかと、オーランドは、がばっと跳ね起きた。
コーディリアは、暗がりの中、ベッドの上に座り、微笑んでいた。
「オーランド、わたくし・・・、あなたに、お礼が言いたくて」
「礼を?」
「わたくし、本当に幸せだわ。あなたと一緒にいると、いつも楽しくて仕方がないの。自分のことが、大好きでいられるの。わたくしと結婚してくれて、本当にありがとう」
清らかな笑顔で、コーディリアにそう言われると、邪な考えに囚われていた自分に、罪悪感を覚えた。
コーディリアは、こんなにも純粋な気持ちで、俺を想っていてくれるのに。
俺ときたら・・・、まったく。
「礼を言わないといけないのは、俺の方だ。こんな辺鄙な田舎に嫁いできてくれて、ありがとう」
オーランドは、真新しい結婚指輪の光るコーディリアの手を取ると、心からの愛と感謝を込めて、唇を落とした。
そして、コーディリアの手を取ったまま、横になった。
「これからよろしく」
「わたくしこそ」
そう言って、ふたりは、見つめ合い、微笑み合ってから、静かに眼を閉じた。
翌日、フォーシーズンズ・ハウスは、朝から大忙しだった。
街や村の長、組合、団体などが、次々と、フォーシーズンズ・ハウスを祝いに訪れ、果樹園主たちを招いての祝賀会、数多い祝状への返信の指示などに加え、次の日にウォルトンへ出発するジョンとキャロラインの支度など、予定は目白押しで、瞬く間に夜を迎えていた。
翌日から、五日程、ラバダ・コテージで過ごすオーランドは、無粋だとは思いながらも、夜、しばし書斎に籠り、急ぎの案件をいくつかサディアスに頼んだ後、寝室に戻った。
時計の針は、深夜零時を過ぎていた。
そっと、寝室のドアを開けてみると、コーディリアは、心地よさそうな眠りについていた。
ベッドの傍らに座り、オーランドは、コーディリアの寝顔を見守った。
疲れてるよな。
昨日の結婚式では、大勢の人の前で緊張していただろうし、今日は今日で、朝から来客が途絶えることがなかった。
コーディリアは、始終、笑顔で、朗らかで、誰に対しても丁寧に応えていたが、疲れていないはずはないだろうと思った。
眠りを妨げないように注意しながら、その張りのある頬に、指でそっと触れる。
何でこんなに、柔らかくて、可愛くて、可愛くて・・・、仕方ないのかなあ。
ラタンを編むときの真剣な表情も、薔薇の手入れをするときの熱心な姿も、話す時の輝くような笑顔も、オーランドは、いつもコーディリアに魅了されて、目が離せなかった。
オーランドが二十歳の時に、両親が不慮の事故で亡くなって、突然チェストルの領主となり、弟たちとフォーシーズンズ・ハウス、そして果樹園の広がる土地と、領民の穏やかな暮らしを守るために、無我夢中で、務めを果たしてきた。
アールーズ、ダナムという、大きな領国に囲まれた小さな土地の領主は、小馬鹿にされ、嫌がらせを受けることも多々あったが、どちらか一方に片寄ることなく、オーランドの絶妙な舵取りで、均衡を保ってきた。
そうして、恋も結婚の文字もどこかに追いやり、その分、アイリスを妹か娘のように可愛がって、年月が過ぎ過ぎ、ようやく領主の務めと立場に慣れて来たかと思えば、今度は、夫人を、跡取りを、と期待されるようになった。
結婚、と言われても、すぐさま実感は湧かなかったが、それでも、漠然とした期待のようなものはあった。
夫婦仲の良い両親の元で育ったので、自分も良い相手に巡り合えたら、とは思っていた。
けれども、実際は、そう甘いものではなく、見合い相手は、アイリスの存在を知るや、みなオーランドの前から消え去った。
失望と落胆、加えて弟たちからの叱責・・・、非が自分にあるのは分かっているだけに、オーランドは、何ともやるせなかった。
そんな日々を過ごすオーランドの元へやって来たのが、コーディリアだった。
フォーシーズンズ・ハウスへやって来たコーディリアは、自分自身も、深い問題を抱えていて、自分らしさを知らないままだった。
けれども、チェストルでの自由な暮らしで、本当の自分に出会い、生き生きと、伸びやかになった。
生まれ変わったようなコーディリアは、輝くように眩しい笑顔と、優しい思いやりに溢れ、 アイリスのことも、大切に可愛がってくれた。
「好きにならないわけがないよなあ」
コーディリアの寝顔を見つめつつ、オーランドはその柔らかな髪を、そっと撫でた。
その瞬間、コーディリアがうっすらと眼を開いた。
起こしてしまったかと、慌てて手を引っ込めるオーランドに、
「大好きよ・・・、オーランド」
寝言のようでもあり、違うようでもあり・・・、コーディリアはそれだけ言うと、再び寝息を立て始めた。
ああ・・・、たまらない。
昨夜に引き続いて、沸き上がって来る煩悩を鎮めるために、オーランドは、自分の両頬をパチンと叩いた。
そして、翌朝、ジョンとキャロラインがウォルトンへ向けて出発した後、オーランドとコーディリアも、準備を済ませ、アニーを含め数名の召使の乗った馬車を従え、ラバダ・コテージへ向けて出発したのだった。
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