東雲色のロマンス

海子

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本編「Joker」あらすじ

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 強国グラディウスの侵略を受けて、ユースティティアの王都アルカンスィエルは、陥落。前国王の庶子(妾の子)フィリップは、侵略してきたグラディウスから命を狙われる身となり、血のつながらない、病弱な妹アンジェラ、美しくも、哀しい過去を持つ女中レティシア、公爵令嬢アンヌと共に、隣国フォルティスのウッドフィールドに住む、親戚のもとへと逃亡する。



 執拗な刺客に命を狙われる、フィリップ。そのフィリップたちの、逃げる手助けをしたのが、無愛想な御者、リックだった。旅が進むうち、次第に惹かれあうリックとレティシア。けれども、レティシアには、かつて、ミラージュという地下組織に、その美貌を利用されて、男たちの夜の相手をし、数々の人を手にかけて来た過去があった。そして、十四歳の時に捕えられ、左肩に女囚の証、百合の烙印を刻まれたのだった。その事実を知っても、リックはレティシアへの想いを募らせ、二人は、結ばれる。



 旅の途中で、フィリップに想いを寄せていたアンジェラが亡くなり、フィリップに様々な葛藤が生まれる。そして、リック、レティシア、アンヌ、途中から一行に加わったハリーと共に、無事、ウッドフィールドへ到着したものの、ひとりアルカンスィエルに戻り、侵略してきたグラディウス軍と戦うことを、決意する。リックとハリーは、フィリップの力になるために奔走。そして、レティシアは、アンヌの姉であり、ユースティティア王妃でもあるクリスティーヌが、グラディウスの王都に連れ去られたと知り、アンヌと共に、グラディウスの王都へ向かうことになった。けれども、それには、隠された陰謀があった。実は、地下組織ミラージュは、アンヌの父、ラングラン公爵の組織であり、アンヌもその組織の一員だった。



 グラディウスの王都で、その事実を知らされたレティシアは、ラングラン公爵に、会いに行く。その時、レティシアのお腹には、新しい命が宿っていた。ラングラン公爵のもとを訪れ、ミラージュから永久に逃れることができないと察したレティシアは、自らの胸を刺して、自害する。そして、アンヌもまた、父、ラングラン公爵の支配から、解放されることを望んで、父にピストルを向けるものの、撃つことができなかった。逆に、ラングラン公爵に、ピストルを突き付けられるアンヌ。そのアンヌを救ったのは、母フランセットだった。フランセットは、アンヌの代わりにラングラン公爵を撃ち、ミラージュという、悪の組織を壊滅させるため、アンヌを逃がした後、屋敷に火を放ち、夫と共に、逝く。



 それから、四年が過ぎ、リックは、御者を辞め、機関車に携わる仕事についていた。そのリックを、国王となったフィリップが訪れ、ユースティティアの、とある山奥へと誘う。フィリップに案内された場所は、女子修道院だった。そこには、記憶を失ったレティシアがいた。



 四年前、自害したレティシアを救い出し、手当てをしたのはアンヌだった。実は、アンヌもまた、深い葛藤を抱えていた。アンヌは、愛し合うリックとレティシアを目の当たりにしながら、リックに想いを寄せていたのだった。アンヌはリックを思う故、レティシアを助けだした。そして、アンヌは、眠り続けるレティシアを女子修道院へ匿った後、遠い異国の地へ姿を消していた。女子修道院で目覚めた、記憶のないレティシアは、自分の行くべき場所が分からず、託された修道院で、四年の歳月をすごしていたのだった。赤ちゃんを失ったという記憶だけが、レティシアに残された唯一の記憶だった。そして、優しい微笑みの持ち主だったレティシアは、笑わない陰のある娘へと、変わってしまっていた。リックはそのレティシアを、自分の暮らす街ブリストンへ、連れて帰る。過去は一切レティシアに告げず、再び、最初からふたりの関係を、築いていく覚悟だった。

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