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新しい生活
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その後しばらく歩くと教育支援所の前に辿りついた。建物は白壁になっており、入り口の上に大きく「教育支援所」の文字があった。それからこの施設は割と重要なものであることが分かる。彼は早速中に入っていった。
中を見回すと転送課、転生課、教育課など様々な課の窓口あるのだが、人はあまりおらずガランとしていた。それもそのはず、ここは地上から天界に来た人たちのために造られた施設だからだ。雄二のように天界に来たばかりの人たちや、天使になるために勉強をする人たちを支援したりしてくれる。
雄二のように地上から天界へ住むようになるケースは稀であるため、このようにいつも人が少ない。窓口の方を見ると職員と思われる天使がカウンター越しに訪れた少女の対応をしている。その窓口の上には「初めて来た方」と書かれたプラカードがぶら下がっていた。雄二が今行くべき窓口である。
(とりあえず、あの人が終わるまで待つとするか)
そう考えた雄二は窓口の近くに座った。何気なく窓口の方をジっと見ていると、外来者の格好が彼の目から見てかなり歪であることに気が付いた。
(何だあの恰好...とんがり帽子に黒色のローブとかもう完全にファンタジー世界によくある魔法使いの格好な気が...)
好奇心に駆られ職員とその少女のやり取りに聞き耳を立ててみた。
「ええぇぇぇ!ちょっと待ってください!私の魔法はここであまり役に立たないんですか!?」
いきなりデカい声が聞こえてきて雄二はびっくりして「ヒエッ」と情けない声が漏れた。
「はい、天界で主に使われるのは天界術式でして、魔法とはまったく違う系統の物なんですよ」
「系統が違うとしても私の魔法は使い道があるはずです。たとえばこれはどうですか?炎や冷気を発生させることができるんです」
そう言うとおもむろに立ち上がり、左手から炎を右手から白い冷気をだした。やはりその少女は魔法使いらしい。燃焼させるものが無いはずなのに手の上で燃え続ける炎と無尽蔵に出続ける冷気は見ているだけで不思議であるのだが、雄二は今更この程度で驚くことはなかった。
(やっぱり異世界からもここに来る人はいるんだなぁ)
その後も少女と職員のやり取りは続いた。
「そういう魔法は使う機会が無いと思うんですよね....ここでは地上から来た魂を別の場所に送ったり異世界に転送した人を援助するのが主な仕事でして」
「だったらこれはどうですか?風を使って相手を吹き飛ばしたり、物を爆発させたり、相手を眠らせることができます」
「そういう攻撃系の術式は使い道が無いんですよねぇ....あ、でも最後のやつはちょっと使えそうです」
それを聞いた女性は絶望で床に四つん這いでうなだれた。負のオーラが体からにじみ出ているのが分かる。
「そ、そんな...私のいた世界は平和すぎて攻撃系に特化した私の魔法は全く使い道が無くて....周りの人たちからは「「あなたの魔法の強さはダントツだからね、異世界から敵が来た時の切り札になるわ」」と慰められる始末...魔力を使ったコンロと冷蔵器具が開発されたせいで本格的にお役御免になってしまって...ここでなら、ここでなら役立つと思ったのに...」
「だ、大丈夫ですよ。さっきの人を眠らせることができる魔法は過去のトラウマが原因で寝られない人に役立ちますよ...そ、そうだ!良い使い方を思いつきました。風は...まぁ良いとして炎と冷気はサバイバル好きな人とかに需要がありますよ!」
「そんな無理して使い道を探さなくても大丈夫です...あと就眠魔法は入眠をさせるというよりも相手を気絶をさせる魔法なんですよね...なので睡眠の質はかなり悪いです...」
「そ、そうでしたか...」
「はい、なので天界術式を頑張って覚えます...」
「は、はい、頑張ってください...はい...」
職員による慰めも空振りに終わり、かなり気まずい空気のまま所用は終わってしまった。少女はため息交じりに立ち上がり教科書をもってここを後にしようとした。そのために後ろへ振り返ったときに雄二とガッツリ目が合った。少女は想像とは違って綺麗な顔立ちをしており、サラサラとしたストレートの金髪を揺らしていた。
「あ...」
少女は雄二にさっきの恥ずかしいやり取りを見られていたことを瞬時に理解し、気まずそうに目を伏せてその場で動かなくなってしまった。どうすればいいのか分からなくなり、少女は彼に話かけることにした。
「あ、あなたもここに来たばかりなんですか?」
「え、ええ、まぁそうです」
そしてここで会話は終わった。数秒にわたる沈黙が続き、何か話さねばと考えた雄二はとりあえず自己紹介をすることにした。
「あ、あの僕の名前は田村雄二です。年齢は..15ですね」
「へ、へぇー...それじゃあ私の方が2歳年上じゃないの。あ、私の名前はカルマ・ミリエルよ。カルマで良いわ」
「それじゃあ、カルマさんもこの天界で働くことになったのですか?」
「そんなかしこまらなくていいよ。呼び捨てで構わないわ。ここではどうせ先輩後輩関係なくなるんでしょうから」
「あ、それは確かに」
天使になるという事は寿命という物が存在しないため、1万年だろうと1億年だろうと生き続けることができるのだ。そのため、終わりのない人生の事を考えれば年齢の差など誤差でしかない。
「そうね...そこの椅子で待っているから詳しい話はあなたがここでの用事が終わってからにしましょう」
「それもそうだね」
雄二は先ほどまでカルマが座っていた椅子に座った。職員である天使と対面になり、そこで雄二は自分の名を名乗った。その天使は絵に描いたような好青年で、身なりからも人の良さがにじみ出ていた。
「はい、田所雄二さんですね。私は天界初心者を担当しているジルと申します。あなたの事はレナから連絡を受けております。少々お待ちください」
そういうと卓上にたくさんある資料から雄二に関して書かれている資料を見つけ出した。
「えーっと、エリアSから来た方なんですか...これは珍しい」
「そのエリア何とかって何なんですか?」
「あー、これはですね、多数ある世界を分かりやすくこのように名前を付けているんです。全ての世界に長い名前を付けてしまうと仕事の効率が悪くなりますからね。このようにそれぞれの世界をエリアAだったりエリアBだったり単純な名前で呼んでいるんですよ」
「という事は僕が住んでいた世界はエリアSって名前なんですね」
「そういうことです。でもその世界から天界に来て、天使として働くようになるケースは本当に稀ですね」
「何でですか?」
「あそこは治安があまり良くないですからねぇ。自分の事で精一杯で他人を助けたいと考える人は少ないです。たとえそういう考えの人がいてもそのような人は大抵人生が充実しているような人ですからここにやってくることはありません。幸福を感じていたとしても幼くして亡くなれば転送システムの対象になりますが、幼いうちから他者のために人生を捧げたいと考える方は滅多にいないですね」
「それじゃあ僕って結構異端なんですか?」
「いえ、そんなことはありませんよ。過去にもエリアSからやってきた人がここで働くようになったケースもありますし、まぁあの人は結構特殊な性格をしているんですが」
「なら良かったです。その人にも会ってみたいですね」
「すぐに会うのは難しいですがいつか会うことはできると思いますよ」
その後ジルは天使になるうえで必要になる知識や技能に関する説明を始めた。
「まず雄二さんには天界の言葉を覚えてもらわなければなりません。これから全ての世界の言語を覚えてもらうことになりますが、それぞれの世界の言語に関する教科書は全て天界の言葉で書かれています。そのため天界の言葉を知らないと他の言語を学ぶことが出来ないんですよね」
「でもここでの文字は読めますけど」
「それはレナがあなたにあらゆる言語を日本語で読むことができる術式をかけたからですよ」
「え?そんなことありましたっけ?」
「多分雄二さんが天界でも呼吸ができるように空気を生成する術式と一緒にかけられていると思うんですが」
「あー、あの窒息しそうになったときですか」
「あの人またやらかしたんですか...」
聞けばレナは過去にも同じようなことをやっていたらしい。その時は担当した地上人が窒息しそうになって声を出すのもままならないほどに苦しんでいたにも関わらずしばらくそれに気が付かなかったという。雄二はもう二度とそんなことがないようにと切に願った。
「空気生成の術式は雄二さんの体が空気を必要としなくなるまでは持続しますが、言語に関する術式はあまり長く持続はしないんですよね。そのため雄二さんには天界語やその他全ての世界の言語を覚えてもらわなきゃいけないってことです」
「そ、それで全ての世界の言語って僕がいた世界の国の言語全部って意味ですよね...?」
雄二は震える声で恐る恐る聞く。冷や汗を垂らしながらさっき自分が言ったことが正しいという事を強く願った。
しかし
「そんな訳ないじゃないですか。あなたのいた世界の国を含めてすべての異世界言語ですよ」
「うわああああ...やっぱりぃ...」
「まぁそんな悲観的にならなくても大丈夫ですよ。天界に体が馴染めばそれに伴って記憶容量と記憶力が上がりますから」
「ちなみに覚えなきゃならない言語はどれくらいですか...?」
「そうですね...雄二さんがいた世界のように国がいくつもあって且言語が異なっている世界は珍しいですから...ざっと700言語ほどですかね」
「う...もう既に頭が...」
目を背けたくなるような現実を前に雄二は天井を見ながら固まってしまった。その姿に斜めから光を当てれば昇天しているようにも見えそうだ。
「それと世界の情勢や天界術式、天使の仕事を覚えてもらうことになります。独学では限界があるので担当した転送者に専任の教育者となっていただくことになっております。雄二さんの場合はレナが担当ですね」
「大丈夫ですかね僕...」
「時間だけは無限にありますからね、そこら辺の心配はしなくて大丈夫ですよ」
「というか天界術式って僕みたいな人間にも使えるんですか」
「今は無理ですが時間が経てば体質が変化してそれを使えるだけの能力は手に入りますよ。はい、これが最初に勉強していただく科目の教科書です」
そう言ってジルは3冊の教科書を雄二の前に出した。上から天界学、天界語学、地理学(エリアC)と書かれたものである。
「この地理学の教科書は一つの世界につき一冊ってことなんですか...?」
「もちろんです、一応あと何冊あるか教えておきましょうか?」
「いえ、今はやめておきます...」
「それと、これが雄二さんにこれから住んでもらう家ですね、ここから徒歩10分といったところでしょう」
ジルは三つ折りになっている地図を広げてその場所を指さした。
「それではこれで天界初心者の方への説明を終わりにします。それでは楽しい天界生活をお過ごしください」
「ありがとうございました」
雄二は教科書と地図を受け取り、カルマの元へ向かった。
「もう終わったの?それじゃあ家に向かいながら話しましょうか」
「そうだね」
二人は教育支援所から出てそれぞれの家へ向かった。雄二に醜態を晒してしまったカルマは少し気まずそうである。
中を見回すと転送課、転生課、教育課など様々な課の窓口あるのだが、人はあまりおらずガランとしていた。それもそのはず、ここは地上から天界に来た人たちのために造られた施設だからだ。雄二のように天界に来たばかりの人たちや、天使になるために勉強をする人たちを支援したりしてくれる。
雄二のように地上から天界へ住むようになるケースは稀であるため、このようにいつも人が少ない。窓口の方を見ると職員と思われる天使がカウンター越しに訪れた少女の対応をしている。その窓口の上には「初めて来た方」と書かれたプラカードがぶら下がっていた。雄二が今行くべき窓口である。
(とりあえず、あの人が終わるまで待つとするか)
そう考えた雄二は窓口の近くに座った。何気なく窓口の方をジっと見ていると、外来者の格好が彼の目から見てかなり歪であることに気が付いた。
(何だあの恰好...とんがり帽子に黒色のローブとかもう完全にファンタジー世界によくある魔法使いの格好な気が...)
好奇心に駆られ職員とその少女のやり取りに聞き耳を立ててみた。
「ええぇぇぇ!ちょっと待ってください!私の魔法はここであまり役に立たないんですか!?」
いきなりデカい声が聞こえてきて雄二はびっくりして「ヒエッ」と情けない声が漏れた。
「はい、天界で主に使われるのは天界術式でして、魔法とはまったく違う系統の物なんですよ」
「系統が違うとしても私の魔法は使い道があるはずです。たとえばこれはどうですか?炎や冷気を発生させることができるんです」
そう言うとおもむろに立ち上がり、左手から炎を右手から白い冷気をだした。やはりその少女は魔法使いらしい。燃焼させるものが無いはずなのに手の上で燃え続ける炎と無尽蔵に出続ける冷気は見ているだけで不思議であるのだが、雄二は今更この程度で驚くことはなかった。
(やっぱり異世界からもここに来る人はいるんだなぁ)
その後も少女と職員のやり取りは続いた。
「そういう魔法は使う機会が無いと思うんですよね....ここでは地上から来た魂を別の場所に送ったり異世界に転送した人を援助するのが主な仕事でして」
「だったらこれはどうですか?風を使って相手を吹き飛ばしたり、物を爆発させたり、相手を眠らせることができます」
「そういう攻撃系の術式は使い道が無いんですよねぇ....あ、でも最後のやつはちょっと使えそうです」
それを聞いた女性は絶望で床に四つん這いでうなだれた。負のオーラが体からにじみ出ているのが分かる。
「そ、そんな...私のいた世界は平和すぎて攻撃系に特化した私の魔法は全く使い道が無くて....周りの人たちからは「「あなたの魔法の強さはダントツだからね、異世界から敵が来た時の切り札になるわ」」と慰められる始末...魔力を使ったコンロと冷蔵器具が開発されたせいで本格的にお役御免になってしまって...ここでなら、ここでなら役立つと思ったのに...」
「だ、大丈夫ですよ。さっきの人を眠らせることができる魔法は過去のトラウマが原因で寝られない人に役立ちますよ...そ、そうだ!良い使い方を思いつきました。風は...まぁ良いとして炎と冷気はサバイバル好きな人とかに需要がありますよ!」
「そんな無理して使い道を探さなくても大丈夫です...あと就眠魔法は入眠をさせるというよりも相手を気絶をさせる魔法なんですよね...なので睡眠の質はかなり悪いです...」
「そ、そうでしたか...」
「はい、なので天界術式を頑張って覚えます...」
「は、はい、頑張ってください...はい...」
職員による慰めも空振りに終わり、かなり気まずい空気のまま所用は終わってしまった。少女はため息交じりに立ち上がり教科書をもってここを後にしようとした。そのために後ろへ振り返ったときに雄二とガッツリ目が合った。少女は想像とは違って綺麗な顔立ちをしており、サラサラとしたストレートの金髪を揺らしていた。
「あ...」
少女は雄二にさっきの恥ずかしいやり取りを見られていたことを瞬時に理解し、気まずそうに目を伏せてその場で動かなくなってしまった。どうすればいいのか分からなくなり、少女は彼に話かけることにした。
「あ、あなたもここに来たばかりなんですか?」
「え、ええ、まぁそうです」
そしてここで会話は終わった。数秒にわたる沈黙が続き、何か話さねばと考えた雄二はとりあえず自己紹介をすることにした。
「あ、あの僕の名前は田村雄二です。年齢は..15ですね」
「へ、へぇー...それじゃあ私の方が2歳年上じゃないの。あ、私の名前はカルマ・ミリエルよ。カルマで良いわ」
「それじゃあ、カルマさんもこの天界で働くことになったのですか?」
「そんなかしこまらなくていいよ。呼び捨てで構わないわ。ここではどうせ先輩後輩関係なくなるんでしょうから」
「あ、それは確かに」
天使になるという事は寿命という物が存在しないため、1万年だろうと1億年だろうと生き続けることができるのだ。そのため、終わりのない人生の事を考えれば年齢の差など誤差でしかない。
「そうね...そこの椅子で待っているから詳しい話はあなたがここでの用事が終わってからにしましょう」
「それもそうだね」
雄二は先ほどまでカルマが座っていた椅子に座った。職員である天使と対面になり、そこで雄二は自分の名を名乗った。その天使は絵に描いたような好青年で、身なりからも人の良さがにじみ出ていた。
「はい、田所雄二さんですね。私は天界初心者を担当しているジルと申します。あなたの事はレナから連絡を受けております。少々お待ちください」
そういうと卓上にたくさんある資料から雄二に関して書かれている資料を見つけ出した。
「えーっと、エリアSから来た方なんですか...これは珍しい」
「そのエリア何とかって何なんですか?」
「あー、これはですね、多数ある世界を分かりやすくこのように名前を付けているんです。全ての世界に長い名前を付けてしまうと仕事の効率が悪くなりますからね。このようにそれぞれの世界をエリアAだったりエリアBだったり単純な名前で呼んでいるんですよ」
「という事は僕が住んでいた世界はエリアSって名前なんですね」
「そういうことです。でもその世界から天界に来て、天使として働くようになるケースは本当に稀ですね」
「何でですか?」
「あそこは治安があまり良くないですからねぇ。自分の事で精一杯で他人を助けたいと考える人は少ないです。たとえそういう考えの人がいてもそのような人は大抵人生が充実しているような人ですからここにやってくることはありません。幸福を感じていたとしても幼くして亡くなれば転送システムの対象になりますが、幼いうちから他者のために人生を捧げたいと考える方は滅多にいないですね」
「それじゃあ僕って結構異端なんですか?」
「いえ、そんなことはありませんよ。過去にもエリアSからやってきた人がここで働くようになったケースもありますし、まぁあの人は結構特殊な性格をしているんですが」
「なら良かったです。その人にも会ってみたいですね」
「すぐに会うのは難しいですがいつか会うことはできると思いますよ」
その後ジルは天使になるうえで必要になる知識や技能に関する説明を始めた。
「まず雄二さんには天界の言葉を覚えてもらわなければなりません。これから全ての世界の言語を覚えてもらうことになりますが、それぞれの世界の言語に関する教科書は全て天界の言葉で書かれています。そのため天界の言葉を知らないと他の言語を学ぶことが出来ないんですよね」
「でもここでの文字は読めますけど」
「それはレナがあなたにあらゆる言語を日本語で読むことができる術式をかけたからですよ」
「え?そんなことありましたっけ?」
「多分雄二さんが天界でも呼吸ができるように空気を生成する術式と一緒にかけられていると思うんですが」
「あー、あの窒息しそうになったときですか」
「あの人またやらかしたんですか...」
聞けばレナは過去にも同じようなことをやっていたらしい。その時は担当した地上人が窒息しそうになって声を出すのもままならないほどに苦しんでいたにも関わらずしばらくそれに気が付かなかったという。雄二はもう二度とそんなことがないようにと切に願った。
「空気生成の術式は雄二さんの体が空気を必要としなくなるまでは持続しますが、言語に関する術式はあまり長く持続はしないんですよね。そのため雄二さんには天界語やその他全ての世界の言語を覚えてもらわなきゃいけないってことです」
「そ、それで全ての世界の言語って僕がいた世界の国の言語全部って意味ですよね...?」
雄二は震える声で恐る恐る聞く。冷や汗を垂らしながらさっき自分が言ったことが正しいという事を強く願った。
しかし
「そんな訳ないじゃないですか。あなたのいた世界の国を含めてすべての異世界言語ですよ」
「うわああああ...やっぱりぃ...」
「まぁそんな悲観的にならなくても大丈夫ですよ。天界に体が馴染めばそれに伴って記憶容量と記憶力が上がりますから」
「ちなみに覚えなきゃならない言語はどれくらいですか...?」
「そうですね...雄二さんがいた世界のように国がいくつもあって且言語が異なっている世界は珍しいですから...ざっと700言語ほどですかね」
「う...もう既に頭が...」
目を背けたくなるような現実を前に雄二は天井を見ながら固まってしまった。その姿に斜めから光を当てれば昇天しているようにも見えそうだ。
「それと世界の情勢や天界術式、天使の仕事を覚えてもらうことになります。独学では限界があるので担当した転送者に専任の教育者となっていただくことになっております。雄二さんの場合はレナが担当ですね」
「大丈夫ですかね僕...」
「時間だけは無限にありますからね、そこら辺の心配はしなくて大丈夫ですよ」
「というか天界術式って僕みたいな人間にも使えるんですか」
「今は無理ですが時間が経てば体質が変化してそれを使えるだけの能力は手に入りますよ。はい、これが最初に勉強していただく科目の教科書です」
そう言ってジルは3冊の教科書を雄二の前に出した。上から天界学、天界語学、地理学(エリアC)と書かれたものである。
「この地理学の教科書は一つの世界につき一冊ってことなんですか...?」
「もちろんです、一応あと何冊あるか教えておきましょうか?」
「いえ、今はやめておきます...」
「それと、これが雄二さんにこれから住んでもらう家ですね、ここから徒歩10分といったところでしょう」
ジルは三つ折りになっている地図を広げてその場所を指さした。
「それではこれで天界初心者の方への説明を終わりにします。それでは楽しい天界生活をお過ごしください」
「ありがとうございました」
雄二は教科書と地図を受け取り、カルマの元へ向かった。
「もう終わったの?それじゃあ家に向かいながら話しましょうか」
「そうだね」
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