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第十八話 からくり少女の大きなお遊び
からくり少女の大きなお遊び 三
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契約は成立した。レオはダイヤモンド金貨三枚を受け取り、指定の魂二十個を売ると決めた。
「それじゃあわたしは品物を選んでくる」
そう言ってレオは立ち上がり、扉に向かった。
ぼくはいつもどおり、彼女のあとをついて行こうとした。すると、
「アーサー、おまえは待っててくれ」
「え、なんで? いつもいっしょに見てるのに」
「今回は数も多いし選別も難しいから集中したい」
そっか……じゃあしょうがないね。大事な仕事の邪魔をしちゃ悪い。
ぼくはソファに腰を下ろし、部屋をあとにするレオを見送った。その姿を、ノーマさんが目で追って、小さく会釈をしていた。
さて、なにを話そうかな。
ぼくは男のくせに社交的だ。本来男ってヤツは寡黙でどっしりして、女がピーピーしゃべるのをシブい顔してうなずいているものだ。だけど顔が女みたいだからか、赤の他人とでも平気で会話できる。
とりあえず魔道具のことでも訊こうかな。そう思っていると、
「あら?」
扉が閉まって正面を向こうとしたノーマさんが、壁際のサイドボードに目を止めた。
そこにはレオの亡き父が残したアンティークが並んでいる。絵画、彫刻、ガラス細工など、あまり派手でない落ち着いた色の美術品が、目立つことなく部屋を飾っている。
「……まあ!」
ノーマさんはパッとうれしそうに立ち上がり、軽やかにサイドボード前へと足を進めた。どうやら目を引く品があったらしい。商取引に来たことも忘れ、ぼくらがいないみたいに鑑賞している。
慎ましいひとだと思ってたけど、なんだか意外だな。別に見るのは構わないけど、ふつうひとこと言うと思うけど……
「アンティーク、お好きなんですか?」
とアルテルフが言った。すると、
「ううん、これ、すごくいいなぁと思って」
そう言ってノーマさんはあるものを指差した。うん? いったいなにに興味を……
——げっ!
ぼくは真っ青に凍りついた。それ、ぼくのボトルシップじゃないか! なんでそんなとこにあるんだ!
……そういえばレグルスが言ってた!
「せっかくお作りになったのですから、どこかに飾っておきましょう」
ぼくはてっきり食堂とか寝室とか、身内だけのエリアに置くと思ってた。それがまさか応接間だなんて! しかもプロの逸品に紛れてだ!
ああ……まだ三作目だから多少マシとはいえ、芸術品と並べられると粗さがなお目立つ……それをノーマさんは右へ左へ覗き込んで、隅々まで鑑賞してる。
は、恥ずかしい!
「あの! それ、練習ですから!」
ぼくはうわずった声で叫ぶように言った。せめて本番ではないと言い訳したかった。でもおかげで、
「あなたが作ったんですね」
しまった! ぼくが作ったことがバレてしまった! 黙ってれば作者不明で済んだのに……わああ!
「あ、あのさ! ぼくまだはじめたばっかりなんです! こんな下手クソ、なんでここに置いてあるんだろうなぁ~!」
ぼくはしどろもどろに立ち上がり、
「こんな見苦しいもの片づけときますね!」
持ち去ろうと手を伸ばした。すると、
「……いいえ、とってもステキ」
へっ?
ぼくは拍子抜けした。ついでにアルテルフも「ぴょ?」と口を尖らせた。
ノーマさんは言った。
「たしかに本職の商品と比べれば出来は劣ります」
……だよねぇ。
「ですが、ここには“あなた”がいます」
はあ? ぼくはそこにいないよ? ビンに入ってるのは船だよ?
「ひとが本気でものを作ると、いのちが宿ります」
はぁ……
「たとえどんなに下手クソでも、たのしんで作ったものには想いがこもり、魂が乗り移ったみたいに色がつきます」
へぇ……
「わたしはこれが一番好きだわ」
ほ、本当? ほかの一級品より?
「ねえ、これ、わたしにくださらない?」
「えっ!?」
「わたし、ひとが作ったもの集めるの好きなの。お願い」
「べ、別にいいけど……」
「本当!? わあ、うれしい!」
元々笑顔だったノーマさんの顔が、さらにぱあっと明るくなった。肩をはずませ子供みたいによろこんでいる。
こんなもの、どこがいいんだろう。だって素人の駄作だ。粗だらけだ。ぼくだったらタダでもいらない。
それなのに、
「ふふふっ! あそこに飾ろう」
とノーマさんはビンを抱え、持ち帰ったあとの置き場所を想像している。世の中には変人がいるもんだなぁ。このひとすごくきれいなのに、ちょっと変なのかもしれない。
そんなやり取りをしていると、
「お待たせした」
扉が開き、レオが顔を出した。
「おもてに魂を用意してある。問題ないか見てもらいたい」
「わかりました」
ノーマさんはちょっぴり顔を赤らめ、そそくさと答えた。そして部屋を出るときに、ふとぼくに振り返って、
「ありがと」
と、ひとこと言った。ううん……うれしいけど、よくわかんないなぁ。アルテルフも首をかしげてるよ。
ともあれぼくらは庭に出た。玄関からすぐのところに荷車があり、運び役のレグルスが立っている。そしてその横に魂の入った銀のかごが二十個並んでいる。
「さ、問題ないか見てください」
「はい」
ノーマさんはボトルシップを置き、検分をはじめた。レオが「おや?」という顔をする。そしてレグルスがぼくに近寄り、こっそり耳打ちした。
「アーサー様、あのボトルシップは……」
「ああ、あれね。あげたんだ」
「あげた……」
「ほしいっていうからさ。なんか気に入ったみたい」
「そうでしたか。やはり見るひとが見ればわかるものですね」
ふぅん? レグルスもいいと思ってたのかな、あんなオンボロ船。わざわざ客の見えるとこに置いてたくらいだし。もしかしたらぼくが無知なだけで、けっこういい出来なのかもしれない。
さて、数分かかって、
「希望通りです。問題ありません」
とノーマさんは見終わって言った。
「よし、それじゃレグルス、頼んだぞ」
「はい」
レグルスは商品を荷車に乗せていった。そしてレオが言った。
「アーサー、アルテルフ、旅の準備をしろ。魔道具とやらを見せてもらおうじゃないか」
「はーい!」
アルテルフが片手を上げて元気よく返事した。遠出が好きな彼女は待ってましたとばかりだった。
そんなこんなでぼくらはノーマさんの発明品を見に行くことになった。
聞けば、彼女の工房は隣国にあった。
隣国といってもすぐ近くだ。魔の森はぼくらの国の最西端に位置し、わずかに国境をはみ出て彼女の国に割り込んでいる。
だから、ふだんから行こうと思えば行けない距離じゃない。一番近い街なら馬で一時間もかからない。
でも、ぼくらは決して西国に近寄らなかった。なぜならお隣さんは役人がきびしく、異国の人間の出入りを厳重に管理しているからだ。
ぼくの国はわりといいかげんなので、観光に来たとでも言えばすんなり入れてくれる。でも西国では出入国の際、通行証の提示を求めてくるので、どこかしらの許可を得なければ門に近づくこともできない。国境付近にはいくつも砦があり、夜も警備が出回っている。
でも今回はノーマさんがいるから大丈夫だ。当然、許可を持っている。距離は一昼夜で到着する程度の近場だが、はじめての隣国ということで、ぼくもアルテルフもわくわくしていた。
「さて、行こう」
ぼくらは森の外に向かって歩いた。荷物は多少のお金と一日分の食糧だけだった。
本来、旅をするなら馬車を用意する。だが今回はノーマさんが一頭立ての馬車に乗ってきたから、ちょっと狭いけど問題ないという。
「でも大丈夫かな?」
ぼくは言った。
「アルテルフは鷹に戻ればいいとして、それでもふたり乗るわけでしょ。お仲間さんとぎゅーぎゅーにならないかな」
すると、ノーマさんは言った。
「大丈夫ですよ。わたし、ひとりですから」
「えっ、ひとり!?」
なんだそれ。そんなのおかしいよ。
彼女は国のお抱え技師だ。魔道具なんてものを発明したすごい学者だ。それをひとりで国外に出すなんて信じられない。しかも大金を持たせてだ。ふつうなら野獣や盗賊を警戒し、警護団をつける。
なのにどうして?
「見ればわかりますよ」
そう言ってノーマさんはいたずらっぽく笑った。見ればわかるって、どういうことだろう。
やがて森の大外に差し掛かった。樹々の感覚が広くなり、視界が開けてくる。すると、
「わっ、なにあれ」
ぼくは不思議なものを発見した。森の出口の手前に、赤い光のドームが見える。
「あそこにうちの馬車があります」
ノーマさんに言われ、よく見ると、たしかに馬車があった。それは光に守られるように中でじっとしていた。
「結界か?」
レオが言った。
結界とは、主に魔法や魔物など“かたちのないもの”を通さないようにする防御魔法だ。
しかしこれはふつうの結界じゃなかった。
「本来結界は無色だが、これには魔力の色がついている」
「触れないようお気をつけください。レオさんでもきっと痛いですよ」
なんでもこれは結界を改良したもので、表面を魔力が伝っているらしい。だから“かたちのあるもの”でも、通ろうとすれば強力な魔力が流れ、死んでしまう。
唯一通れるのは銀だけだ。ノーマさんはポケットから銀色のスティックを取り出し、カチカチと伸ばして指し棒にした。そして馬車の側面にある小さなスイッチレバーを下げた。
すると、結界が消えた。
「すごいな。これもあなたの発明品か?」
「はい。バリアーと呼んでいます」
「結界の上に魔力を這わせているのか」
「その通りです」
「しかし魔法を使うには魔力が必要だ。ということはやはり……」
「ええ、こちらです」
ノーマさんは馬車背面のホロを開き、中を見せた。奥に金属製の箱があり、そこから一本の太い管が上に伸び、馬車の上部を突き出ている。
彼女は箱側面から銀の小箱を取り出し、見せた。内側に開くタイプのフタがあり、それを押し込んで覗くと、魂が入っているのが見えた。
「……なるほど、すごいな」
「ありがとうございます」
ノーマさんはニコリと笑った。だけどレオは透き通った笑顔じゃなかった。
忌むような、一歩身を引いた硬い目をしていた。
「それじゃあわたしは品物を選んでくる」
そう言ってレオは立ち上がり、扉に向かった。
ぼくはいつもどおり、彼女のあとをついて行こうとした。すると、
「アーサー、おまえは待っててくれ」
「え、なんで? いつもいっしょに見てるのに」
「今回は数も多いし選別も難しいから集中したい」
そっか……じゃあしょうがないね。大事な仕事の邪魔をしちゃ悪い。
ぼくはソファに腰を下ろし、部屋をあとにするレオを見送った。その姿を、ノーマさんが目で追って、小さく会釈をしていた。
さて、なにを話そうかな。
ぼくは男のくせに社交的だ。本来男ってヤツは寡黙でどっしりして、女がピーピーしゃべるのをシブい顔してうなずいているものだ。だけど顔が女みたいだからか、赤の他人とでも平気で会話できる。
とりあえず魔道具のことでも訊こうかな。そう思っていると、
「あら?」
扉が閉まって正面を向こうとしたノーマさんが、壁際のサイドボードに目を止めた。
そこにはレオの亡き父が残したアンティークが並んでいる。絵画、彫刻、ガラス細工など、あまり派手でない落ち着いた色の美術品が、目立つことなく部屋を飾っている。
「……まあ!」
ノーマさんはパッとうれしそうに立ち上がり、軽やかにサイドボード前へと足を進めた。どうやら目を引く品があったらしい。商取引に来たことも忘れ、ぼくらがいないみたいに鑑賞している。
慎ましいひとだと思ってたけど、なんだか意外だな。別に見るのは構わないけど、ふつうひとこと言うと思うけど……
「アンティーク、お好きなんですか?」
とアルテルフが言った。すると、
「ううん、これ、すごくいいなぁと思って」
そう言ってノーマさんはあるものを指差した。うん? いったいなにに興味を……
——げっ!
ぼくは真っ青に凍りついた。それ、ぼくのボトルシップじゃないか! なんでそんなとこにあるんだ!
……そういえばレグルスが言ってた!
「せっかくお作りになったのですから、どこかに飾っておきましょう」
ぼくはてっきり食堂とか寝室とか、身内だけのエリアに置くと思ってた。それがまさか応接間だなんて! しかもプロの逸品に紛れてだ!
ああ……まだ三作目だから多少マシとはいえ、芸術品と並べられると粗さがなお目立つ……それをノーマさんは右へ左へ覗き込んで、隅々まで鑑賞してる。
は、恥ずかしい!
「あの! それ、練習ですから!」
ぼくはうわずった声で叫ぶように言った。せめて本番ではないと言い訳したかった。でもおかげで、
「あなたが作ったんですね」
しまった! ぼくが作ったことがバレてしまった! 黙ってれば作者不明で済んだのに……わああ!
「あ、あのさ! ぼくまだはじめたばっかりなんです! こんな下手クソ、なんでここに置いてあるんだろうなぁ~!」
ぼくはしどろもどろに立ち上がり、
「こんな見苦しいもの片づけときますね!」
持ち去ろうと手を伸ばした。すると、
「……いいえ、とってもステキ」
へっ?
ぼくは拍子抜けした。ついでにアルテルフも「ぴょ?」と口を尖らせた。
ノーマさんは言った。
「たしかに本職の商品と比べれば出来は劣ります」
……だよねぇ。
「ですが、ここには“あなた”がいます」
はあ? ぼくはそこにいないよ? ビンに入ってるのは船だよ?
「ひとが本気でものを作ると、いのちが宿ります」
はぁ……
「たとえどんなに下手クソでも、たのしんで作ったものには想いがこもり、魂が乗り移ったみたいに色がつきます」
へぇ……
「わたしはこれが一番好きだわ」
ほ、本当? ほかの一級品より?
「ねえ、これ、わたしにくださらない?」
「えっ!?」
「わたし、ひとが作ったもの集めるの好きなの。お願い」
「べ、別にいいけど……」
「本当!? わあ、うれしい!」
元々笑顔だったノーマさんの顔が、さらにぱあっと明るくなった。肩をはずませ子供みたいによろこんでいる。
こんなもの、どこがいいんだろう。だって素人の駄作だ。粗だらけだ。ぼくだったらタダでもいらない。
それなのに、
「ふふふっ! あそこに飾ろう」
とノーマさんはビンを抱え、持ち帰ったあとの置き場所を想像している。世の中には変人がいるもんだなぁ。このひとすごくきれいなのに、ちょっと変なのかもしれない。
そんなやり取りをしていると、
「お待たせした」
扉が開き、レオが顔を出した。
「おもてに魂を用意してある。問題ないか見てもらいたい」
「わかりました」
ノーマさんはちょっぴり顔を赤らめ、そそくさと答えた。そして部屋を出るときに、ふとぼくに振り返って、
「ありがと」
と、ひとこと言った。ううん……うれしいけど、よくわかんないなぁ。アルテルフも首をかしげてるよ。
ともあれぼくらは庭に出た。玄関からすぐのところに荷車があり、運び役のレグルスが立っている。そしてその横に魂の入った銀のかごが二十個並んでいる。
「さ、問題ないか見てください」
「はい」
ノーマさんはボトルシップを置き、検分をはじめた。レオが「おや?」という顔をする。そしてレグルスがぼくに近寄り、こっそり耳打ちした。
「アーサー様、あのボトルシップは……」
「ああ、あれね。あげたんだ」
「あげた……」
「ほしいっていうからさ。なんか気に入ったみたい」
「そうでしたか。やはり見るひとが見ればわかるものですね」
ふぅん? レグルスもいいと思ってたのかな、あんなオンボロ船。わざわざ客の見えるとこに置いてたくらいだし。もしかしたらぼくが無知なだけで、けっこういい出来なのかもしれない。
さて、数分かかって、
「希望通りです。問題ありません」
とノーマさんは見終わって言った。
「よし、それじゃレグルス、頼んだぞ」
「はい」
レグルスは商品を荷車に乗せていった。そしてレオが言った。
「アーサー、アルテルフ、旅の準備をしろ。魔道具とやらを見せてもらおうじゃないか」
「はーい!」
アルテルフが片手を上げて元気よく返事した。遠出が好きな彼女は待ってましたとばかりだった。
そんなこんなでぼくらはノーマさんの発明品を見に行くことになった。
聞けば、彼女の工房は隣国にあった。
隣国といってもすぐ近くだ。魔の森はぼくらの国の最西端に位置し、わずかに国境をはみ出て彼女の国に割り込んでいる。
だから、ふだんから行こうと思えば行けない距離じゃない。一番近い街なら馬で一時間もかからない。
でも、ぼくらは決して西国に近寄らなかった。なぜならお隣さんは役人がきびしく、異国の人間の出入りを厳重に管理しているからだ。
ぼくの国はわりといいかげんなので、観光に来たとでも言えばすんなり入れてくれる。でも西国では出入国の際、通行証の提示を求めてくるので、どこかしらの許可を得なければ門に近づくこともできない。国境付近にはいくつも砦があり、夜も警備が出回っている。
でも今回はノーマさんがいるから大丈夫だ。当然、許可を持っている。距離は一昼夜で到着する程度の近場だが、はじめての隣国ということで、ぼくもアルテルフもわくわくしていた。
「さて、行こう」
ぼくらは森の外に向かって歩いた。荷物は多少のお金と一日分の食糧だけだった。
本来、旅をするなら馬車を用意する。だが今回はノーマさんが一頭立ての馬車に乗ってきたから、ちょっと狭いけど問題ないという。
「でも大丈夫かな?」
ぼくは言った。
「アルテルフは鷹に戻ればいいとして、それでもふたり乗るわけでしょ。お仲間さんとぎゅーぎゅーにならないかな」
すると、ノーマさんは言った。
「大丈夫ですよ。わたし、ひとりですから」
「えっ、ひとり!?」
なんだそれ。そんなのおかしいよ。
彼女は国のお抱え技師だ。魔道具なんてものを発明したすごい学者だ。それをひとりで国外に出すなんて信じられない。しかも大金を持たせてだ。ふつうなら野獣や盗賊を警戒し、警護団をつける。
なのにどうして?
「見ればわかりますよ」
そう言ってノーマさんはいたずらっぽく笑った。見ればわかるって、どういうことだろう。
やがて森の大外に差し掛かった。樹々の感覚が広くなり、視界が開けてくる。すると、
「わっ、なにあれ」
ぼくは不思議なものを発見した。森の出口の手前に、赤い光のドームが見える。
「あそこにうちの馬車があります」
ノーマさんに言われ、よく見ると、たしかに馬車があった。それは光に守られるように中でじっとしていた。
「結界か?」
レオが言った。
結界とは、主に魔法や魔物など“かたちのないもの”を通さないようにする防御魔法だ。
しかしこれはふつうの結界じゃなかった。
「本来結界は無色だが、これには魔力の色がついている」
「触れないようお気をつけください。レオさんでもきっと痛いですよ」
なんでもこれは結界を改良したもので、表面を魔力が伝っているらしい。だから“かたちのあるもの”でも、通ろうとすれば強力な魔力が流れ、死んでしまう。
唯一通れるのは銀だけだ。ノーマさんはポケットから銀色のスティックを取り出し、カチカチと伸ばして指し棒にした。そして馬車の側面にある小さなスイッチレバーを下げた。
すると、結界が消えた。
「すごいな。これもあなたの発明品か?」
「はい。バリアーと呼んでいます」
「結界の上に魔力を這わせているのか」
「その通りです」
「しかし魔法を使うには魔力が必要だ。ということはやはり……」
「ええ、こちらです」
ノーマさんは馬車背面のホロを開き、中を見せた。奥に金属製の箱があり、そこから一本の太い管が上に伸び、馬車の上部を突き出ている。
彼女は箱側面から銀の小箱を取り出し、見せた。内側に開くタイプのフタがあり、それを押し込んで覗くと、魂が入っているのが見えた。
「……なるほど、すごいな」
「ありがとうございます」
ノーマさんはニコリと笑った。だけどレオは透き通った笑顔じゃなかった。
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