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第三章
小さな星屑 第十四話
しおりを挟む次の日、隼人は教室で蒼太たちに昨日の出来事を話していた。
「へぇー、そんなことがあったのか」
「それにしても良かったやないか、何事もなくて」
「ほんと、越前が来てくれて助かったよ」
「でもさぁ、越前くんってよく分からないよね」
隼人の話を聞いていた比奈が話を切り出した。
「秤子から聞いたことあるんだけど、クラスでも誰とも話さずにずっと一人でいるんだってさ」
「そうなんか。なんや不良や言うから、クラスでも幅を利かせてるんかと思ったわ」
「幅って……でも、確かに誰かに暴力を振るったとかは聞かないな」
蒼太の言う通り、鋏介が問題を起こしたという話は高校に入学してから聞いたことがなった。
「まぁもう一人の宍戸はよく問題起こして謹慎になってるけどな。今日から謹慎明けたんだろ?」
蒼太が比奈の方を向いて尋ねた。
「授業には出てないみたいだけどね」
そんな会話をしていると、三河先生が教室に入ってきた。
「は~い、皆んな席に着いてちょうだ~い。ホームルーム始めるわよ~」
三河先生に言われ、蒼太たちはそれぞれの席へと戻っていった。
授業も終わり、いつものように蒼太たちは屋上で練習をしていた。すると突然真矢が首を傾げながら口を開いた。
「なんか、しっくりこんなぁ。なんやダイナミックさが足らん気がするわ」
「ダイナミックさって?」
首をかしげる真矢に純が尋ねる。
「例えば曲中にバク転するとか。蒼太、バク転出来ひんか?」
「出来るわけないだろ……」
真矢が話を振ると蒼太は呆れ気味に答えた。
「そうか。困ったなぁ……」
真矢は腕を組みながら頭を悩ませた。
真矢が屋上で頭を抱えていた頃、校舎裏の飼育小屋に瑞希は向かっていた。この学校ではニワトリやウサギ、陸ガメなんかも授業の一環で飼育している。主に事務員のおじさんが世話をしているのだが、瑞希も時間がある時は動物たちの世話をしていた。
瑞希がいつものように飼育小屋に向かうと、小屋の前で誰かが立っていた。近づいて確認すると、昨日瑞希たちを助けてくれた鋏介だった。鋏介も瑞希に気付いて振り返った。
「君は昨日の……」
「あっ、き、昨日はありがとうございました」
瑞希は深々とお辞儀をした。
「あぁ、全然構わないよ」
鋏介は少し笑いながら答えた。
「あのぉ……」
「あぁ、たまにここに来るんだ。他の奴らと違って、こいつらは俺のこと不良だ何だって気にしないからな。楽なんだよ」
そう言って柵越しにウサギの頭を撫でた。
「その気持ち分かります」
瑞希は鋏介の隣に行ってかがむとウサギを眺めながら話し始めた。
「動物たちは相手が誰だろうと平等に接してくれる気がして。私、暗くて地味だから何考えてるか分からないって、昔から皆んなに避けられてて。でも、動物は私が近づいても態度が変わらないから。だから私、小さい時から動物が好きなんです」
「そうなのか」
理由は違えど、周りの人たちから避けられているという点で二人は共感出来る部分があった。
「あの……もし良かったら、一緒にこの子たちの世話を手伝ってもらえませんか?」
瑞希は鋏介の方を向いて尋ねた。
「あぁ、構わないよ」
「ありがとうございます‼︎」
二人は立ち上がると小屋の掃除を始めた。
その頃、隼人はまだ2年B組の教室にいた。オセロ研究会の生徒に次の試合で人数が足りないからと、助っ人を頼まれていた。
流石にオセロの試合には出たことがないので、ずっと断っていたのだが、引き受けてくれるまでどこにも行かせないと強引に迫られたので、仕方なく引き受けると了承しようやく帰ってもらったのだった。
「めちゃくちゃ粘られてしまったなぁ。早く帰るか」
荷物を持った隼人が教室を出ると不意に声をかけられた。声をかけてきたのは心平だった。
「やぁやぁ、元気かい牛島君」
「お前は……弟の方の風間だな」
「いやいや、一目見ただけで俺のことが分かるなんて、さすが牛島君ですねぇ」
心平はゆっくり近づきながら話しかけてきた。
「兄貴の鉄平は勉強の天才。弟の心平は運動の天才。お前ら兄弟はこの学校じゃ有名だからな。そんな天才が俺に一体何の用だ?」
「まぁ、今日はちょっと忠告しておこうかなって思ってさ」
心平は隼人の横で立ち止まると耳元で囁いた。
「ダンスだ何だって、あんまりはしゃいでいると誰かに目ぇ付けられて大変なことになるかもよ。せいぜい気をつけなよ」
心平は意味深な言葉を告げると、隼人の肩を叩いてそのまま通り過ぎて行った。
「おい。それどういうことだよ」
隼人は振り返って尋ねたが、心平は立ち止まらず歩いて行ってしまった。すると、心平とすれ違いに羅夢が前から走ってきた。
「隼人せんぱい‼︎はぁ……はぁ……蒼太先輩はどこですか‼︎」
羅夢は息を切らしながら蒼太の居場所を尋ねた。
「蒼太なら屋上だけど。一体、何があっ……」
「すぐに一緒に来てください‼︎」
羅夢はそう言うと、隼人の腕を掴んで急いで屋上に向かった。
蒼太たちがダンスの練習をしていると屋上の扉が勢いよく開いた。そして、扉の向こうから隼人と羅夢が飛び込んでくる。
「おい二人とも、そんなに慌ててどうしたんだ?」
「それが俺にも……羅夢、どうしたんだ?」
その場にいる誰もが全く状況を飲み込めていなかった。羅夢は隼人の腕を離して息を整えると、ゆっくりと話し始めた。
「比奈先輩が……昨日の男たちに連れて行かれました……」
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