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彼なりの思いやり~それはそれとして襲う~
しおりを挟む「やぁ、おはよう」
「おはようございます……」
「どうしたんだね、目の下にクマができているが?」
どうしたもこうしたもないですよ!
あんな事した相手が裸で自分の側に居るんですよ、寝れるわけがねーじゃないですか‼「あんな事したのに、添い寝する相手が裸だとか寝れるわけないじゃないですか……」
怒鳴りはしないが、俺はそう言った。
「ふふ、君は大分初心なんだねぇ」
オルフェウスさんが笑う。
いや、笑い事じゃないんですが。
「笑い事じゃないんですが」
「そうかね?」
「ああ、疲れた風呂入りたい」
「じゃあ、一緒に入ろうか?」
「へ?」
「へ? とは何だね」
「いやいやいや! ちょっと待ってくださいよ!」
「既に裸の付き合いは済ませてるだろう、何を今更」
いや、マジこの吸血鬼何考えてんの?
風呂だぞ風呂。
普通一人でゆっくり浸かるもんだろう銭湯じゃなきゃ。
「……」
「色々な風呂がある、サウナもあるし、好きにすると良い」
前言撤回、金持ちはマジわかんねぇや。
こんな豪奢な風呂場とサウナあるし。
……せっかくだし体洗ったらサウナ入ろう。
サウナはじんわりと暑くて汗がだらだらと流れてきた。
サウナを満喫しおわると、水風呂に入る。
体が冷えて気持ちいい。
それを二回繰り返してから、風呂に浸かった。
「ふひぃ」
「楽しんでもらえたかね?」
「どうわ⁈」
いつの間にか俺の隣で風呂に浸かっていた。
「まぁ、楽しめたというよりは、疲れが多少はとれましたが……」
「そうか、それは良かった」
オルフェウスさんはにこりと笑った。
「先ほどから君の表情は硬くてね、だから気にしてたのだよ」
原因はアンタなんですがね。
とは言わないけれども、俺の事を気にしてくれてはいるようだ。
だけど吸血鬼は高貴で気まぐれだ、いつ殺されたり追い出されたりするか分からない。
気を引き締めないと。
俺の考えていることを見透かしているのか、何なのかオルフェウスさんは笑う。
「君は心配性だねぇ」
「生まれつきで……」
「でも、心配性ならあんな会社入らなかったのでは?」
「……ぐうの音も出ないです」
オルフェウスさんはくつくつと笑った。
確かに、もっと慎重だったらあんな会社には入らない。
でも、故郷では仕事がないし、外にいくしかなかったんだ。
本当は工場勤務だったのに、こっちの営業に回されて何度辞めようと思ったことか。
まぁ、辞めさせられて、結果会社は大変な状況らしいから溜飲はさがったけどな。
「では、出かけようか」
「はい?」
「デート、という奴だよ」
「はい?」
俺は耳がおかしくなったかと思った。
服装をシンプルだけど上品なスーツに着せ替えられ、靴下や靴も新品のものを用意された、髪も整えられた。
そして高級車に乗り街にくり出す。
最初は高級洋服店で、俺の服や靴を買うことに。
靴下も同様。
俺の今までの給料じゃごっそり持って行くのを、オルフェウスさんはブラックカードで支払っていた。
すげぇ。
そして、高級料理店にいき、個室に案内され俺はガチガチになる。
だって、食事のマナーなんて知らないから。
「お、俺は食事のマナーなんて知りませんよ?」
「だからこの国の料理の店にしたのだよ」
確かに、日本料理の店だった。
が、日本料理と創作料理が混ざったのが出て来て、これどうやって食べるのとハテナマークを出しながらやっていると、オルフェウスさんは丁寧な仕草ですっすと口にして咀嚼し飲み込んでいた。
俺もなんとか真似をして乗り切った。
オルフェウスさんの家──屋敷に戻ってくると、オルフェウスさんはベッドに俺を押し倒した。
「え、あの、ちょっと?」
「君が欲しくなった、だからくれ」
「ちょっとま──ア──‼」
結果、抵抗することもままならないまま、襲われました。
いわゆる逆レです。
何で俺こんな目に遭わなきゃいけないんでしょうかね本当?
隣では裸で張本人は寝ているし。
抜け出したくても抜け出せないし、どうしたことか。
「お兄様、いつまでお見合いを断り続けて──……」
見知らぬ美女と目が合う。
美女は俺を見ると目を丸くしてそして絶叫した。
「お兄様が人間を襲ってた──‼」
なんで分かるのこの子⁈
俺は頭の中で混乱しまくりだった──
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