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二人だけの楽園
しおりを挟む「――では、いつものように……レディ?」
「はい、分かっておりますご主人様……」
ホテルの一室で女にそう囁くと、ヴァインは身なりを整えてその場を後にした。
入浴施設があったので、其処で体についた「女の匂い」と「女の痕」を落とす。
そして、店に行き、先払いで購入し、後でもう一度取りに来ると言った品物――メルが好きそうな白熊らしい丸いぬいぐるみを領収書と引換券を見せて袋詰めしてもらい受け取る。
そして人気のない暗がりへと進み、闇に溶けるように姿を消した。
ヴァインは自身が作った領域に戻ると、一旦自室へと戻り服を着替える。
見目を重視する愚か者達用の服から、メルに「仕え」そして「愛でる」為の服、執事の服でもあり、花婿――夫の服でもある服へと。
ヴァインは着替え終えると、プレゼント用に包まれたぬいぐるみをもってメルの部屋へと向かう。
メルはちょうど目を覚ましていた。
「メル様、お目覚めですか?」
ヴァインはベッドに近づき、包まれたぬいぐるみをベッドの脇に置いた。
「うん……」
メルは酷く暗い顔をしていた。
「どうなさいましたか?」
「……皆に『お前なんかいらない』って言われた時のこと、思い出して……」
酷く傷ついた表情をしているメルの頬を撫でて、ヴァインはメルの唇にキスをした。
「ん……」
触れるだけの優しいキスをしてから、メルの髪を撫でる。
「ご安心ください、もうメル様にそのような事を言う者はおりませぬ。メル様は私の最愛の御方、貴方様は偽る必要はないのです、あの日から――」
ヴァインはそう言ってメルを押し倒した。
「メル様、愛でさせてください。私が貴方様をどれほど愛しているか、貴方様を求めてやまないか、示させてください」
ヴァインがそう言うと、メルは少し恥ずかしそうに頬を染めた。
メルの体を優しく撫でる。
首筋にキスをし、柔らかな体を優しく触る。
「ふ、ぁ……」
柔らかな膨らみを撫で、先端を舌で愛でる。
舌で、唇で、手で、愛しい体を愛でる。
優しく、慈しむように、愛撫を行う。
ヴァインが捏造したメルの「人生」では「記憶」では、セックスは甘く優しいものであり、メルの中にある被虐――ただ一人に全てを支配され甘やかされ、受け止めてもらいたいという欲を満たすもの。
「あ……あぁあ……!!」
駒として扱う雌や雄達にはやらない、舌での性器への愛撫。
剥きだしになっている陰核を舌で優しく舐める。
口づけをするように愛でる。
「ぁあ――!!」
プシャと、潮を噴いた。
わずかにヴァインの顔が濡れる。
「あ……ヴァインお兄ちゃん、ごめん、なさい……」
「いいんですよ、メル様。たくさん気持ちよくなってください」
「ふぇ……? あ、まって、そこやぁああ!!」
強めに刺激を与えてやると、メルはヴァインの髪を掴んで引っ張りのけ反った。
びくびくと体が痙攣し、再び潮を噴いた。
秘所からはどろどろと愛液を滴らせ、潮と愛液でぐちゃぐちゃに濡れている。
駒として扱ってる雌や雄の体液など不味くて口にもしたくないが、メルの体液はヴァインにとっては蜜のように甘く感じられた。
舌で陰核を愛でながら、指を膣内に挿れて、敏感な箇所を指の腹で愛でる。
柔らかく温かい、そして締め付けてくるナカの感触を確かめながら、指を動かす。
メルの嬌声を聞きながら、愛撫を行う。
長い愛撫――焦らしに耐えられなくなり、メルがぐずぐずと泣き出した。
「えぅ……」
「メル様、申し訳ございません、焦らしすぎましたね」
ヴァインは瞼にそっとキスをしてから頬を撫でる。
「おにいちゃん、ちゅうして……」
「畏まりました」
ヴァインはメルの唾液で塗れた唇にキスをする。
ヴァインがメルの口内に舌を入れると、たどたどしい動きで絡めてくる様が愛おしいかった。
キスにメルが夢中になっている間に、濡れた秘所に昂った雄を押し当てる。
そしてゆっくりと挿れていく。
「ん……?!」
メルがキスをしたままぎゅうと抱き着いて来た。
ヴァインは優しくメルの髪を撫でながら、膣内の奥まで雄を挿れた。
膣肉が雄に絡みついてくる感触がたまらなかった。
抱き着き、舌を強請るその仕草が愛おしかった。
一度口づけを止め、優しく声をかける。
「愛していますよ、メル様。私の一番愛しい方、貴方より大切なものなどありません」
その言葉に、メルは安心したような、嬉しそうな表情を浮かべた。
メルがいなくなって一年後、世界各地でデモが起きた。
JUDGEMENTの裏の目的が明らかになり、それと繋がっている政府へのデモだった。
ヒーロー達は実験材料で、戦争で強い兵士を作るための存在だった。
そしてそれを量産させる母体がヒーロー「エレメント」だった。
彼女が「死亡」していなければ、この一年の間に、兵士を量産させ、圧政を強いる政府へ反抗する者達を虐殺できたからだ。
ヒーロー同士の争い。
人同士のデモが悪化しての殺し合い。
これを落ち着かせるのは、JUDGEMENTの裏を調査していた一部のヒーローたちだった。
JUDGEMENTは解体され、また計画に関わっていた連中は皆「処分」された。
平和とは言えないが、落ち着いた日々を取り戻すのに、更に三年の歳月がかかった。
「……」
ヒーローブレイズは町のパトロールをしていた。
JUDGEMENTは解体されたが、ヒーローは活動を各国に許可され、悪事を働く輩を逮捕する権利をもっていた。
ブレイズはパトロールを終えようと思った矢先に、見間違えないはずの存在を見た。
思わず走り出し、駆け寄り、肩を掴んだ。
「エレメント姐さん!!」
髪の毛は長くなったが、美しい黒い髪に、蜂蜜色の目、蜜の様な甘い香りを漂わせる肌。
「……だれ?」
しかし、その女性はブレイズの事など知らないように目を丸くしてお腹を撫でていた。
「私の妻に何かようかな?」
見知らぬ銀髪の長い髪の男が現れた。
青い目がこちらを睨みつける。
整った顔立ちを怒りに歪ませて、女性を守る様に抱き寄せてブレイズを睨む。
女性はブレ意地に怯えたように、男性を掴む。
「妻は、幼いころからの虐待のせいで、外に出られなかったのがようやく出られるようになったのに、また出られなくするおつもりか? ヒーローブレイズ」
「す、すみません……知り合いに、似ていて……」
「そうですか、ですが妻はヒーローでもない、普通の人です、他人の空似でしょう」
男性はそう言って女性を連れて立ち去った。
ブレイズはただ、立ち尽くしてそれを見送るだけだった。
ヴァインは家に戻るとメルを部屋へと案内し、ソファーに座らせた。
「あのおとこのひと、こわかった」
「怖かったですね、二度と会わないように気を付けましょう」
「うん」
メルはヴァインの言葉に頷いて腹を撫でた。
「えへへ……早く生まれてこないかな、わたしとお兄ちゃんの赤ちゃん……」
幸せそうにメルは笑う。
「まだ半年ですからね」
「うん」
ヴァインはメルの頬にキスをした。
クイーンは一度「キング」と結びついてしまえば、他の雄との子を生さない。
また「キング」は「クイーン」と結びつけば、他の雌との子を生さない。
兵士を作る計画は不可能。
クイーンとキングは結ばれたからだ。
「メル様」
「なぁに、ヴァインお兄ちゃん」
「愛していますよ」
「うん、私もヴァインお兄ちゃんが大好き」
二人は寄り添い笑いあう。
日の光が入ってこない、夜の世界の箱庭で。
乙女は、闇の蔓に守られながら、暮らし続ける。
いつまでも、幸せに、幸せに――
end
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