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学園入学!~復讐したいのに何故か男女ハーレムが形成された⁈~

異世界転生は復讐の味~転生先は地味にハードモードな推しキャラだった~

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 その日は曇りの天気の日だった。
 過ごしやすい日のはずだった。

 私は志嶋しじまつかさ。28歳の会社員です。
 生まれつき病弱でしたが、理解がある会社でなんとか働くことができています。
 体調が悪ければ休むことができ、家でも作業ができる会社。
 もちろん定時であがるようにいわれます。
 そんな良い会社に勤めていたのに、朝はなんともなかったのに、心臓に強い痛みが走り、呼吸さえままならなくなり、私は倒れて蹲りました。
 意識がぶつんと途切れました。




 そして次目覚めた時。

 ふぎゃあ、ふぎゃあ。

──え? ここどこ⁈──

「おお、男の子だ、我が妻よ」
「ああ、本当……」

 男性に抱かれて、次に女性に抱かれる。

──もしかして、私赤ん坊⁈──
──死んじゃったってこと⁈──

 しかも部屋が現代風じゃない、どこなの。

「名前をつけよう」
「ええ」
「……アトリア。アトリア・フォン・クロスレイン。それがお前の名前だ」
「アトリア……良い響きね」

──ヴァー⁈──
──今、アトリア・フォン。クロスレインって言ったよね⁈──
──私がやりこんだゲーム「朝と夜の狭間で~花嫁は誰と踊る~」のサブキャラ推しキャラじゃん‼──
──いや、待て。と言うことは下手すりゃ私は魔王になって倒される可能性があると?──
──そんなの絶対嫌だぞー‼──

 ふぎゃあふぎゃあ

「良く泣く子だ、きっと元気に育つだろう」
「そうね、貴方」

 混乱して泣く私の事なんか分からずに、両親は愛を確かめ合っていた。




 それから半年後──
 あかちゃん生活基羞恥心を捨てて生活していると、父が慌てて入ってきた。
「マリーローズ! 急いで裏口からアトリアと逃げるんだ!」
「どうしたのティーダ!」
「ハンター共がやってきた! このままではアトリアまで殺される! 私が引き受けている間に逃げるんだ!」
 ちょっと待てこれってアトリアがハンターを憎む原因のイベント内容じゃない?
「私の事はいい、早く」
「貴方、どうか無事で……!」
 マリーローズは私を抱きかかえたまま、馬に乗りそのままかけていった。

 翌日の朝、山小屋の中で母は、私をベッドに寝かせると、袋から粉々に崩れた赤い結晶を見て崩れ落ちた。
「ああ、ティーダ、ティーダ!」
 確か吸血鬼が持つ命の結晶ブラッドストーンだよな、あれ。
 アレが壊れたら吸血鬼は死ぬし、吸血鬼が死んだらアレが壊れる。
 つまりだ、父は殺されたことになる。

 ふぎゃあふぎゃあ

 悲しい。
 半年とは言え、優しい父の愛を受けた私は悲しかった。
「アトリア、貴方も悲しいの?」

 ふぎゃあふぎゃあ

「私もよ……ああ、ティーダ。神よ私たちが何をしたと言うのです……‼」

 母は嘆きの涙を流したまま私を抱きかかえ、小屋を後にする。
「ヴァンキッタ王国へ行きましょう……あそこならダンピールも暮らせるはず……貴方の命が狙われなくて済むはず……」
 そう言って馬を走らせた。




 色々あったが、ヴァンキッタ王国に保護され、私と母は一軒家を貸して貰い暮らす事になった。
 赤ん坊の私を背負いながら母は仕事をして、同時に私の世話もして一生懸命だった。
 そんな暮らしをしていたから、わずか六年で母は体を壊してしまった。
 だから私が母の代わりに働くことになった。
 転生した影響か、文字や数字や計算などには問題はなかった。
 思った通りの事が書けるし、読めるし。
 そんな暮らしを十二年続けて、私は十八歳になっていた。
 容姿だけなら貴族に見える、銀色混じりの金髪に、金色の目の青年になっていた、母によく似ている。

「アトリア、ごめんなさいね……貴方にばかり迷惑をかけて」
「母さん、そんなこと言わなくていいんですよ」

 その日は母の看病ができる休日だった。
 その日家に来訪者が来た。

「アトリア・フォン・クロスレイン君のお宅で間違いないですか?」

 ノックして開けて入ってきた茶色の髪に黒い目の人物は──いやこいつは知っている。

 クリス・アルフレイン。ヴァンキッタ王国の学園クロスガードの教授で──
 私の父の仇だ。

「君は才能がありながら、家庭の境遇から学校に通えていない。それは良くないことだ」
「……どなたですか」

 一応知らないふりはする。

「ああ、初めまして、私がクロスガード学園の教授、クリス・アルフレインです」
「クロスガード……あのハンターも輩出しているという……」
「はい、そうです……」
「帰ってください! 私の夫はハンターに殺されたんですよ! 息子を同じような目に遭わせる気ですか!」
 母が怒鳴った。
 それもそうだろう。

 殺したハンターを輩出したかもしれないのだから。

 というか目の前に居るし。
 魔王になる気のない私は学園に行く気もない、のでさっさとご退場願うことにした。
「クリスさん、昔ティーダと名乗る吸血鬼を殺した事はありませんか?」
「⁈」
 クリスの目の色が変わる、驚愕の色です。
「殺したんですね、それは私の父です。母と愛し合って私を育ててくれた私の父です」
「お前がティーダを……夫を……‼」
 母がベッドから起き上がり、ナイフを手に取りクリスに襲いかかる。
 私はそれは不味いと思い、母を止める。
「アトリア、離して! こいつだけは許さない! 私の、私の愛する夫を殺したこいつだけは!」
「母さん、貴方が殺したら、ここでは殺人罪に問われてしまう! 仮に問われなくとも、クロスガードの教授を殺したとなったらここにはもう居られないんです!」
「う、うう……」
 母はナイフを手から落として私の腕の中でむせび泣く。
「帰ってください」
「いや、なおさら帰れません」
「私の母をこれ以上傷つけないでください」
「……私は昔過ちを犯した、愛し合っている二人の片割れを奪ってしまった……殺した時にはもう手遅れだった……だから二度とこのような事例を生み出さない為に、クロスガードの教授として子等に、ハンターになる子には特にそのような悲劇を起こさないようにしているのです」
「だからといって、貴方が犯した罪は消えない。帰ってください」
「……分かりました、今日は帰ります」
「二度と来ないでください」
 クリスがいなくなると、私は母を寝かせ、背中をさする。
「憎い……仇がいるのにとれないだなんて……」
 母のその言葉に、私は決意した。
「……母さん、もし奴が私の前に現れてまた勧誘したらクロスガード学園に行っていいですか?」
「⁈ 何を言ってるの」
 母は飛び起きた。
「奴の前にずっといるんです、そして何度も言ってやるんです、『やぁ私の父を殺した先生、ご機嫌よう』とね。何度も何度も、彼が苦しんで自殺するまで──」
 私はほの暗い笑みを浮かべた。

 そう許さない、父を殺し、母の心まで傷つけた奴のことを、絶対に許さない──





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