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家族を失う~それでも支えられて魔王の運命に抗う~

夏休みを満喫~その中で決意する~

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 食事を終え、殿下達が部屋に流れ込むのをセバスさんが防いでくれてしばらく一人の時間ができた。
『おにいちゃん、おつかれなの』
「そうだよー……」
 姿を表したシルフィに言う。
『しるふぃにもたいへんなのがつたわったの』
「シルフィ、見てないよね?」
『みてないのーぷらいばしーがあるのー』
「ははは……ありがと」
『どういたしましてー』
「……さて、問題は奴の動きだ」
『う゛ぁいえんはたぶんがっこうがはじまったらうごきはじめるのー』
「神様の予想かい?」
『うんー』
「……その可能性は高そうだけど、ここでも気をつけておこう」
『がっこう、いってみたかったー』
「シルフィ……」
 私は半透明のシルフィを抱きしめる。
「君ならいつかいけるよ」
『うん!』
 何も当てもない言葉だけどもそう言ってしまった。
 じゃないと可哀想だから。

 翌日──
「泳ぎに行きませんか?」
「でも私は泳ぐのは……」
「吸血鬼が入れるプールがあります、そこで練習しましょう」
「は、はい」
「殿下そのプールって……」
「はい、人間には毒なので、人間のお二人は隣のプールで泳いでください」
 レオンとカーラ、不満そう。
「すみません。私、ダンピールなんで」
「しょうがないさ、我慢しよう」
「ええ、我慢しますわ」
「そういえば噂で聞いたが吸血鬼も人間もダンピールも入り泳ぐことができる場所があるらしいな?」
 グレンが何か思い出したように言う。
「本当⁈ どこですの⁈」
 カーラがグレンに近づき、襟首をつかんで聞き出そうとする。
「掴むな、掴むな。確かヴァンキッタ王国の南にあるウォレスって都だな」
「殿下!」
「そうだね、今日はここでアトリアの泳ぎの練習をしてから、明日出発しようか」
 握手しあうレオンとカーラ。


 その日、私は泳ぐ練習をした。
 水泳はそこそこできたので、泳げる液体ならば問題なかった。
 というか、水着全員分いつの間に用意してたんだセバスさん……

 翌日、風馬かざうまの馬車に乗り込み、あっという間に水と花の都ウォレスへたどりついた。
 南国のリゾートのような場所だった。
 海に面しているし。

 ウォレスの最大の目玉吸血鬼も人間もダンピールも皆関係なく泳ぐことのできる遊技場テーマパークが向かうと支配人が頭を下げて出迎えた。
「アルフォンス殿下に婚約者様にご友人方、ようこそいらっしゃいました」
「早速だが、泳がせていただきたい、何か注意点はあるかな?」
「特にありませんが、体が疲れたらすぐ休んでください」
「だそうです、では皆さん水着に着替えて泳ぎましょう!」
「「「「「「おー!」」」」」」


 六人とたくさん泳いだり、ウォータースライダーっぽいやつもあってそれで滑ったりと楽しく遊んだ。
 ビーチバレーでは、何故か私は審判役で、今日は女性組と男性組のどちらと寝るのかというバトルが勃発した。
 男性組は片手だけというハンデがあったが、なんとか勝利し、女性組はハンカチを噛みしめてき~~! っとなっていた。

 いや、初めて見たよ、そういうの。
 あなた達するんだ。

 と別の意味で感心した。

 その後ホテルに向かい、男女別の部屋を取り、私達は四人部屋、女子は三人部屋で宿泊した。
 セバスさん達従者は私達の隣の部屋に部屋を取ったらしい。
 直ぐさま駆けつけられるようにと。

「アトリア、君の髪は美しいね」

 アルフォンス殿下は私の銀色が混じった長い金色の髪を櫛で梳きながら優しく笑った。
「金色の目もいつ見ても綺麗だ」
「有り難うございます、父譲りなんです、目の色は」
「そうか……」
 アルフォンス殿下は何かを察したようで、静かに髪を梳いた。
「──アルフォンス殿下、俺にもさせてくれよ」
「じゃあ、アトリアの手をふやけてしまったからクリームを塗ろう」
「おお、そうだな」
 グレンは私の手にクリームを塗り始めた。
「細い手だな」
「ええ、良く大衆食堂で働いてる手には見えないと言われましたよ」
「母親の代わりに働いてたのか……よく働いた手だな」
「有り難うございます」
 クリームを塗りを終わると、クリームを拭ってから、グレンは私の頬を撫でてくれた。
「無理すんなよ」
「はい」
「レオン、どうしましたか?」
「女性陣の気配が扉からする」
「……入れてあげましょう、寝るまでくらいは」
「そうですね」
「そうだな」
「そうするか」
 レオンは扉を開けて、女性陣が三段重ねに倒れてきたのを見て目を丸くしていた。

 その後、寝るまで私達は話し合い、語り合い、遊び、夜の食事を済ませると、そのまま別々の部屋で眠りについた。

 私が目をつぶると、男性陣は起き上がり、それぞれ頬にキスをしてベッドに戻っていった。
 私は寝たふりをした。
 そしてそのまま眠りについた。


 翌日帰宅する時は今度は女性陣に自分達の部屋で寝て欲しいと言われたので、了承した。
 じゃないと男性陣をひいきしていることになるから。


 夜三人の部屋に向かうと、パジャマパーティが始まった。
 今は男性だけど、前世は女性、憧れだったパジャマパーティが楽しめて良かった。


 そしてベッドに寝ると、三人も私の頬にキスをして自分のベッドに戻っていった。
 私は寝たふりをして、それからそのまま眠りについた。


 翌日、課題をやることを始めた。
 皆で、本を読み合って課題をこなす。
 屋敷にはたくさんの書物があったので課題を順調に進めることができた。

 課題があるので、実家に帰った皆も大半は夏休みの半分くらいで学園に戻り課題を進めていく。

 が、ここではその必要が無い。

 安心して課題を進められるのは良いことだ。

 課題は一週間で全て終わり、自由時間ができた。

 皆で森を散策したり、もう裸は見たからと混浴の露天風呂に皆で入ったりといろいろあった。
 混浴風呂は誰が私の背中を洗うかでもめたが、一日ずつ交代で洗うで妥協してもらった。
 中途半端な場合は私が自分で洗うことも約束してもらった。

 皆平等に接したい。
 恋愛感情は無くとも、皆大切な存在だから。
 だから──


 私の復讐心でけがなどをさせたくない。
 傷をつけて欲しくない。
 だから本当にこれは一時の夢と思うことにする。

 ヴァイエンの事だ、きっと皆を傷つける行為を私にさせようとするだろう。
 私を孤立化させるため。
 そんなことはさせない。

 ヴァイエンの企みが何であれ、私は奴の企みを阻止する。
 そう決めたのだ──





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