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異形の本能~逃れられぬ性~
しおりを挟む「銀おにいちゃん、ぬいぐるみであそぼ?」
「……」
銀は小さく頷き、薄い笑みを浮かべてりらとぬいぐるみあそびを始めた。
「マヨイ……そばにいてくれ……頼む」
「う゛ーう゛ー」
不安げな隼斗をマヨイは抱きしめる。
「フエ……」
「分かってるよ、はい、ぎゅー!」
同じく不安そうな柊を抱きしめていた。
「おにいちゃん、おなかすいた」
「ではこれが終わったら食事にしましょう」
「わぁい!」
空腹を訴えるエルに、ジンが終わったら食事にすると言い聞かせていた。
「……なんなの、これ」
「さぁな」
半数以上が不安定な番い持ちの状況に蓮は真顔になっていた。
康陽は冷静なままだった。
「番い持ちの異形の子等──異形少女達を集めて、会議しようと思ったんだが、これでは会議にならんな」
紅は疲れたように青い煙を吐いて、煙管を咥える。
「番いを連れてきたのがそもそもの問題じゃ……」
蓮がげんなりした表情で言うと紅は首を振った。
「番いとの状況もしりたくて呼んだんだ。そしてらこの有様だ、事情聴取などできんなお前以外からは」
と言って紅は康陽を見た。
「事情聴取」
「異形少女──お前の相手の状態だ」
「ちょっと紅姉さん?」
「本人が隠したがる内容を包み隠さず言って貰うぞ」
「やめれー!」
「本人がこうだからあまり言いたくないのだが……」
「双方に確認を取らねばならない、異常事態が起きているのを二人でごまかす──というのはいただけないしな」
紅の言葉に、康陽は息を吐き出した。
「分かった」
「康陽さん⁈」
「食欲に関しては人間の物で代用できている。時折仕事時に異形になって異形や悪人をくらったりしているがな」
「ふむ、極端では無いな?」
「ない。我慢している風では無い、基本人間の食べ物で満足できるが、時折本能が出てそうなる」
「なるほど、では性欲に関しては」
「性欲に関しては両方を満足させないといけないのが本人が苦痛に思っている。本能でそうなった場合は俺ではどうしようもないからフエと零に頼んでいる」
「うぐぐぐ」
蓮は頭を抱えた。
「ちゃんと把握しないといけないんだから我慢しろ」
「他は──、後で本人に聞くか」
「私なら、話ができます」
ジンがやってきた。
エルと手をつないで。
「……正直分からないが、やってみるか。よし話してみろ」
「はい」
ジンは話し始めた。
「エル様は食欲が大きく占めています、ですが少しずつですが人間の食物で代用できるようになっております、正確にはマヨイ様がお作りになった作物で」
「ふむ」
「それでも一週間に二人のペースで食べ尽くしてしまいます」
「一週間に二人ならまだいいな。三人だと少々きつい」
「マヨイ様の持ってくる果実とザクロで作るデザートがあれば多少の我慢は聞きます」
「そのデザートに、お前の血はいれてないか」
「一度入れてみましたが、見抜かれ食べてもらえませんでした、ですので純粋なザクロと他の果実でしか作っておりません」
「となると、三食に三時のおやつにそれらをやっていくしかないな」
「今それで食欲を抑えています」
「教えてくれて有り難う、他は?」
「ありません、性欲にかんしては……零という輩に本能的に行ってしまうようで」
苦虫を噛み潰したようにジンは言う。
「あー……零のところにか……」
「ロリおね? ロリおに? どっちだろう?」
「わ⁈」
急に会話に入ってきたフエに、蓮は声を上げて驚く。
「知るかそんなもん」
紅は呆れたように言う。
「零さん、中性的で上半身は華奢な男性的で、下半身は女性だからロリおねかな」
「いいからフエ、一端黙れ」
「お口チャック」
そう言ってフエは黙った。
「う゛ーう゛ー」
隼斗の世話をしていたはずのマヨイがやってきた。
「マヨイ、どうした。……今本能丸出し状態だな」
「う゛ー」
「分かった隼斗の奴は私が連れて行くから行ってこい」
「う゛!」
マヨイは黒い影の中に溶けるように消えた。
「マヨイは、マヨイは零のところへいったのか、いったのか?」
絶望したような声で隼斗が言う。
「異形の本能がマヨイも稀に出る、それを抑え付ける為には零のところにいかねばならない」
「俺では駄目なのか、俺では駄目なのか」
すがるように紅の服にすがりつき、隼斗が言う。
「壊れてるお前では駄目だ、それに本能だと花嫁以外は傷つけてしまう」
「傷、つける?」
隼斗が信じられないという顔になる。
「マヨイがお前を傷つけるというのを信じられないだろうが、本能丸出しの時に、ロナクが近づいたら、ズタズタにされた件がある。本来ならなついているのに。異形の子等同士でも危険なのだ、まして番いにそのような目に遭わせることなどマヨイはしたくないだろう」
「……お前は理解しているだろう、マヨイも異形の子だ、異形の本能からは逃れられんよ」
「じゃ、じゃああの娘はどうなのだ」
隼斗はりらを指さす。
「ばっちり本能丸出しになると零のところに行って零を襲うぞ」
「そ、そんな風には見えないが……」
うろたえた様子の隼斗に紅は言う。
「私とて本能にはあらがえぬのだ、だが花嫁が死んだ時のみこの本能は落ち着く……」
「……」
「お兄さん、零さんを殺すとか考えたら許さないよ」
「私たち、全員が」
先ほどまでずっと口を閉ざしていたフエがそう言って隼斗を見る。
「マヨイも幻滅するよ」
「そ、それは嫌だ」
「だったら我慢しなさい」
「うう……」
「とりあえず今回は解散だ」
紅はそう言って隼斗を引きずって連れて行った。
「ごめんね康陽さん、本能には逆らえないの」
「いや、いいんだ。苦しいのは君だろう」
申し訳なさそうにする蓮を、康陽は労りながら部屋へと戻っていく。
「エル様、戻りましょう。そしてお食事にいたしましょう」
「うん!」
ジンはエルを抱きかかえて部屋へと戻っていった。
「銀おにいちゃん、おへやでぬいぐるみあそびしよ?」
「ん……」
りらと銀は手をつないで、部屋へと向かっていった。
「……フエ」
「ん、なぁに柊さん」
「君に本能が出たの時、傷ついてもいいから──」
「駄目」
柊の言葉を即座に否定した。
「何故……」
「言ったでしょう、番いを傷つけてしまうから」
「傷ついても──」
「馬鹿! 深い傷がつくの、人間なら癒えることがないくらいの」
「……」
「零さんはそれをしってて、自分なら大丈夫だから体を貸してくれるの。柊さんの事は勿論大好きよ。その次くらいに『花嫁』である零さんが大好きなのそういうこともあるから」
「……一番でも、それは避けられないのか」
「うん、私は父親食べちゃったから本能が強く出やすいの他の子より」
「……」
「その本能を抑える為にも花嫁は必要なの」
「花嫁がいないと……どうなる?」
「人間を捕食しにいったりするわ、なるべく悪人を選ぶけど、それでも厳しいのよ」
「……」
「ごめんね、柊さんを傷つけたくないから傷つける結果になって、幻滅した?」
「いや、愛されているのが分かってほっとした」
「それならいいの」
フエは柊を抱きしめた。
柊は、自分が「花嫁」だったら良かったのにと思ってしまった。
「つかれた……」
呼吸をし、胸を上下させながら零は疲れたように言った。
「ごめんね?」
マヨイが上にのっかり零の頬を撫でる。
「いや、いいんだ。これでマヨイ、お前はお前の番いを傷つける必要がなくなる」
「うー……」
「でも私がこうだって? 気にするな、なれてる。さ、帰りなさい」
「う!」
マヨイが影に潜るように居なくなると、零は起き上がり、シャワールームへと入り、シャワーを浴びると、そのまま体を拭いて、裸のままベッドにダイブし、毛布を被って眠った。
泥のように眠るのだ──
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