クトゥルフちっくな異形の子等の日常~番いと「花嫁」を添えて~

琴葉悠

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ロナとロナク~「花嫁」を傷つけるのは御法度~

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 顔を持たない異形の子──ロナは、口が裂けているような口にギザギザの歯を持ち、包帯であちこちを隠している弟ロナクに説教していた。
『ロナク、貴方また零さんのところに行って怪我させたでしょう?』
「いや、その、怪我させるつもりはなかったんだって、嫌本当だって!」
『でも怪我させたでしょう?』
「うぐ……」

「ロナクの奴、実の姉のロナの言うことだけには逆らえないんだよなぁ」
「言うことを聞くとも言う」
 フエと紅はその様子を眺めていた。

『貴方がそんなことをするなら、私は貴方をしばらく封印しますよ』
「げー⁈ 姉ちゃんごめん、しないから! 気をつけるから‼」
『できるなら最初からやりなさい』
「いや、その興奮しちゃって……」
『貴方、抑制剤を飲んでからしなさいという言いつけを破ってたのね!』
「わー! しまった!」
『ロナク、一週間封印します。反省しなさい』
「ぎゃー!」
 白い無数の手がロナクを包み込み、そして消えた。

「ありゃ、封印されちゃった」
「仕方ないだろう」
 封印される様子を眺めていたフエと紅は納得したような顔をしていた。


『ロナクがしでかしたことは私の責任、菓子折を持って謝りに行かなければ』
 ロナはそう言って責任を感じている声を出す。
「ロナー菓子折私が買って来ようか?」
『フエ姉さん、良いの?』
「いいの、いいの。気にしないで」
『じゃあお言葉に甘えて』
 ロナがそう言うと、フエは一瞬で姿を消した。
 そして数分後。
「はい菓子折」
『これは……ゼリー?』
「うん、お花の形のゼリー。結構高級品。喉やられてそうだし、ゼリーがいいでしょう?」
『そうですわね、じゃあ私持って行ってきます』
「あ、私も一緒行くよ」
 フエが言う。
『でもそこまで……』
「いーのいーの、じゃ行こう?」
『はい……』
 ロナはそう言うと、フエの手を掴んで、姿を消した。

「さて、ロナクの封印が伸びるか否か、伸びるに賭けるか。康陽お前は?」
「俺も伸びるに賭ける」
 いつの間にか会議室にやってきていた康陽がそう答えた。
「賭けにならんな」
「全くだ」
 二人はそう言って苦笑いを浮かべた。




 探偵事務所は今日も営業をしているが、所長である零の姿はみられなかった。
 零は二階の居住スペースのベッドの上で寝込んでいた。
「零さん、大丈夫──?」
「げほ……大丈夫に、見えるか?」
『見えません、ロナクが申し訳ないことを』
「ロナ、か。貴方の所為では無いよ」
『いえ、私のしつけがなってない所為で……あの、これどうぞ、ゼリーです。食べて下さい』
「こほ……有り難う、いただくよ」
「じゃあ中身冷蔵庫に冷やしておくねー!」
「ごほ……フエ、助かる」
 フエは箱を開けてひょいひょいと冷蔵庫に入れていった。
『あの、零さん』
「げほ……なんだ?」
『傷を見せてはいただけませんか?』
「……」
『お願いします』
「……分かった」
 布団からでると下着姿の零の体にはあちこち傷が出来ていた。
 かみ傷、爪の傷などが痛々しく赤く残っていた。
 それを見たロナは無言になる。
「うっわーこれは酷い。酷いからマヨイ印にお薬あげるよ、塗り薬」
「……おいフエ、つまりソレは──」
「うん、マヨイの唾液からできてる。あの子の唾液とか体液って治療効果高いからねー」
 フエはしばし考えるような仕草をしたが、ふぅと息を吐いて手を出した。
「マヨイのなら問題あるまい」
『あ、あの。お薬ぬらせて下さい!』
「ああ、構わない。背中も痛いんだ塗ってくれると助かる」
 そう言って零が背中を見せると背中もかみ傷の爪の傷が大量にあった。
『……』
「ロナ、此処で怒るのはステイ。やっちゃ駄目ね」
『分かってます』
 人には分からないが異形の子同士分かるのか、フエは怒り心頭状態のロナを抑えて薬を塗り始めた。

 透明なクリームを塗ると、数分もしないうちに傷が消えていった。
「あと、辛いのは喉、だけか……ごほ」
「ここに同じくマヨイ印の飲む薬液体があります」
「成分は言わずもがなだな、いい。くれ」
「かしこまりー」
 フエはコップに水を入れ、液体をちょこっとだけ垂らした。
「はい、どうぞ」
「希釈して使うのか」
「うん」
 零は液体を口にし、飲み始めた。
 飲み終わり、数分してから──
「あー、あー……うん、大丈夫だな。これで仕事が──」
「仕事は今日はお休み、いーい?」
「……分かった」
 零はまたベッドに横になる。
「零さん、零さんが私達のことを気遣って我慢してくれてるのは分かるけど、あんまり無理しないでね?」
「分かっている」
「本当かなー」
「あんまり長居をすると、フエお前の番いが不安がるだろう、帰れ」
「そうだね、じゃあ帰ろうか」
『はい』
 ロナとフエはそう言って姿を消した。

「……たまに惰眠を貪るのもいいか」

 零はそう言って目を閉じ眠った。




『姉ちゃん、反省したから出してー!』
 一週間後、ロナの影から悲鳴が聞こえた。
『いいえ出しません、貴方零さんに「花嫁」あんなに傷をつけて……! あと三週間は封印します、反省なさい』
『うわーん!』

「異形の子の中でも比較問題児のロナクでも姉のロナの前では形無しだな」
「だねー」
 修羅場になっている様子を紅とフエはのんびり眺めながらお茶をしていた──




 異形故に傷つけてしまう。
 仕方ないことだと諦めるのは許せない。
 それに対策があるのならなおさら。
 例え、弟でも「花嫁」を傷つけ、苦しめるのは許さない──





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