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異形性に耐えかねた子~異形と異形の子~
しおりを挟む『もう嫌なの、異形性のせいで人を喰らわなきゃいけないのは嫌なの』
『だから木になるの、桜の木に』
『さようならフエ姉さん』
「……」
フエは目を開けた。
「さくら……」
「誰の事だ?」
ぽつりとフエが呟くと先に珍しく目覚めていた柊が不機嫌そうな顔をしていた。
「……妹よ、もう異形の子じゃなくなった妹」
「何になったんだ」
「桜の木よ、何もしなければ綺麗な雪のように綺麗な真っ白な桜を咲かせるの」
「白い桜か……」
「写真とったから、あるけど見る?」
「ああ」
フエは写真を撮りだし、柊に見せる。
「これは見事な桜だ……美しいな」
「でしょう、とっても、とっても綺麗な子なの、その桜みたく」
「私はフエが一番綺麗だがな」
「ふふ、柊さんはそういうと思った」
柊の言葉にフエは苦笑すると、思い詰めてような表情になった。
「本当に綺麗な子だったわ」
「どんな子だったんだ?」
「雪のような真っ白な髪に、桜のような肌、薄紅の目と唇」
フエは思い出しながら言う。
「この桜のような綺麗な子だったわ、心も──」
「だから──」
「自分の異形性に耐えきれず、木になってしまった。人を喰らう異形性に耐えきれず木になってしまったの」
「……そういう異形の子も居るのか?」
柊の質問にフエは頷いた。
「大抵の異形の子は人を食うことに耐えきれず自死だったり違うものに変化するわ、さくらが桜の木になったように」
「君は……大丈夫なのか?」
「私は大丈夫よ、喰うのが悪人だけだし、めったに喰わないし」
「今居る子達は人を食うのにためらいがないか、喰わなくてもいい子だけ、そうじゃない子は居なくなるの」
「耐えきれず、か」
「そう」
フエは写真を見る。
「でも悲しい事に、木になっても人間を捕食する能力が残ってしまったのかソレを勘違いした連中に勝手に利用され続けた」
「勝手に?」
「そう、恨み姫という名前をつけられ、生け贄を出さなければ村は全滅する」
「なんてくだらない風習を作られて、彼女は殺された女性達を取り込み、赤い桜を咲かせ続けたでも──」
「今回、零さんが生け贄にされそうな女性をつれてくれたおかげでそんな風習をしている村人全員を逆に喰らわせた、彼女も怒ってたのよ、木になっても怒っていたのよ」
「『私をそんな風に利用しないで! 私はそんなことしない! そんなに望むならお前達を喰らってやる』」
「ってね」
フエはそう言って、写真をしまった。
「……異形の子も大変だな」
「大変よ、異形の子は自分の異形性と向き合わないといけないのだから、生まれた時から」
「君もか?」
「そうよ」
「苦しくは無かったか?」
その言葉にフエは首を振った。
「苦しいとかなかったかなー、父親に相当する異形に喰われそうになったから逆に食い殺して権限とか諸々奪って大変になったなー位」
「本当に?」
「本当だって」
柊に詰め寄られ、フエは苦笑する。
「後、親殺しも異形の子の大半が経験するわね」
「……」
「経験してないのはマヨイとクラルの兄妹くらいかしら、あの二人の父親の異形は人間の味方って言う不可思議な異形だから」
「……味方も、いるのか」
「そうよ、稀に、だけど」
「でもほとんどは人間を食い物とかおもちゃ扱い、だから異形に簡単に近寄ろうとするのは愚かな行為」
「異形は人間を利用するだけ利用してすてるんだから」
「君もか」
「まさか」
柊の不安そうな声に、フエは笑って答えた。
「何、私も異形の血が流れてるから心配になっちゃった?」
フエは柊の頬を包み込む。
柊はこくりと頷いた。
「大丈夫よ、異形と異形の子は別物だからね」
「……」
「愛してるわ、柊さん」
そう言ってフエは柊にキスをした。
柊はうっとりとした表情になった。
「さて、朝ご飯にしましょうか!」
キスを終えると、フエはそう言ってキッチンに向かった。
その姿を見ながら、柊は唇を触る。
「もし、捨てる感情が出たなら、そのときは私を殺してくれないか──?」
そう呟いた柊の言葉をフエは聞かないことにした。
番いを捨てるなんてあり得ないことだからだ──
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