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懲罰室からの開放~「花嫁」への不満~
しおりを挟む「あー漸く出られたー!」
懲罰室の鍵が開き、フエは飛び出した。
「フエ……!」
「柊さん、会いたかったよー!」
懲罰室の扉の横に居た柊がフエを呼ぶと、フエは感激して抱きついた。
「でも、何で懲罰室の扉の横に?」
「……紅が、多分飛び出してきて膝蹴り喰らうから横に居ろと……」
「紅姉さんグッジョブ!」
「君の膝蹴りなら喰らってもよかったのに……」
残念そうに言う柊に、フエは慌てて首を振る。
「良くない! 下手すれば柊さん大けが! 良くない良くない!」
「フエ……」
フエから大事にされているのを思い、柊は安堵の息を漏らす。
「これからどうするんだ?」
「柊さんといちゃつきたいけど、その前に零さんに謝罪の菓子折差し出してくる」
「……『花嫁』だから」
「それもあるけど、零さんも私達の特別でもあるからね、怪我させちゃったからには謝罪しないと」
「……そうか」
「大丈夫すぐ戻ってくるから」
そう言ってフエは姿を消した。
「……部屋へ戻ろう」
柊は部屋へととぼとぼとした足取りで戻った。
「お帰りー!」
柊はずっこけそうになった、予想以上に早かったからだ。
「は、早くないか?」
「いやあ、菓子折とジャンピング土下座と、今後気をつけます、で帰ってきたから早いよー!」
「ジャンピング土下座」
柊は目を丸くする。
「だって、柊さんに会いたかったんだもん、柊さんに会えない一週間……懲罰室内では一ヶ月……きつかった」
「時間の流れが違うのか?」
「違うよー、ロナクがやらかした時は一ヶ月で十年近く懲罰室行きだったからなぁ、まぁロナクは今はロナが封印するって方法で仕置きされてるけど」
「……」
柊はぞっとした、自分なら発狂してしまう、と。
「大丈夫大丈夫、柊さんとか人間は入れないから、入れないから」
青ざめる柊をフエは抱きしめた。
「あれはあくまで私達用の懲罰室、だから柊さんは関係ないの」
「関係ないって……君が懲罰室に入れられたじゃないか……!」
「まぁ、それは私のやらかしが原因だから」
「じゃあ、何で『花嫁』は危険な事をする、大人しくしていればいいのに!」
「柊さん」
フエは柊の口に指を当てる。
「それ以上加熱して悪口になったら、色々問題になる、抑えて」
真剣な表情で言われて、柊は黙ってしまった。
「それは事実なんだけどねー、零さん異形で被害者が出るのはよろしくないと警察止めて探偵になって独自の繋がり作って異形退治の為に行動してるからさー」
「……異形の子等とは敵対してないのか」
「しないよ、異形の子等と零さんは同盟を結んでいるから。異形を倒すという一点においては」
「……」
「それ以外は『花嫁』だから異形性の発露した時鎮めるの手伝ってーって約束も結んでいるし」
「私では……駄目なのか……」
「駄目だねー、私が人畜無害の異形で柊さんが普通の人なら異形性の発露なんてないけど、私は『異形の子』。どうしても発露して他者を傷つける」
「……人畜無害な異形などいるのか?」
「いるよーマヨイのお父さん」
「道理でマヨイは治療行為が得意な訳だ……」
「まぁ、お父さんはマヨイが子どもだからあっちこっち移動してマヨイが捕食されないようにお母さんと一緒に神出鬼没してるんだけど」
「……」
「そんなマヨイでも異形性の発露が起きたら、隼斗さんじゃどうにもできない、異形性の発露ってのはそれだけ危険な事『花嫁』じゃないと鎮まらない行為」
フエの説明に柊は不満そうな顔をする。
「まぁ、ただの異形だったら私は柊さんと会えなかったし、今の環境で良いと思ってるよー……駄目?」
フエに首をかしげて微笑まれ、柊はむくれる。
「ずるい……そういうフエには勝てないのに」
「あはは、ずるくてごめんね」
そう言ってからフエは柊を押し倒した。
「会えなかった分、たっぷり可愛がってあげる」
服を脱がしながらそういう、フエに柊は悦のこもった笑みを浮かべた──
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