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マヨイの社~収穫祭を配信なんて許されない~
しおりを挟むマヨイの社で収穫祭が行われていた。
村でとれた野菜等を調理し、それをマヨイの社に奉納していた。
いつものように行われているその収穫祭に異物が混入していた。
配信者達だ。
農業が盛んだが、広く毎年豊作で、そして村でありながら若者の数が多いという、限界集落とは真逆のこの村に訪れ祭りをカメラで撮っていた。
「若い子一杯いるし何奉ってるんでしょう!」
「聞いてみま……」
「おい、そこの若いの」
顔をしかめている年寄りが配信者達に詰め寄った。
「ここの社の神様は人目を避ける神様じゃ、そういう事はせんでくれ」
「しないでくれっていっても、俺達これで飯くってるんで──」
「そうですよ、撮るのは辞めた方がいいと思います」
巫女服の女性が現れ、穏やかにいう。
「此処の神様は怒ると、怖いですから」
圧のある言葉に、配信者達はぞくりと何かを感じ取ったのか逃げていった。
「全く近頃の都会の若者はなっとらんの」
「権蔵さん、そう怒らないで」
巫女服の女性はそういって社を見た。
「かなり、ご立腹だから配信できなくなりますよ、見たところ編集するような動画の撮り方ですし」
「そうか、神様の怒りっちゅーもんを身をもってしるいい機会じゃな」
老人はかかかかっと笑った。
「全く配信編集できるところがあんまりねーな」
「……んおい、俺のスマホからデータ消えてるぞ」
「え?」
配信者達が車の中で作業をしていると、異変が起き始めた。
ぶつっ
「お、おい、ちょっと待てよ俺の編集データも全部消えたぞ何なんだよ?」
「はー? こんな辺鄙な所にまで来たのにこんなオチ……ん?」
「ど、どうしたよ」
「女の子いねぇか? 裸足の」
「本当だ、裸足だ」
顔が見えない女の子がワンピースに裸足の格好で立っていたがゆっくりと車に近づいてきた。
「な、なぁ、ヤバいんじゃねーの⁈」
「く、車出そうぜ……ってエンジン動かねぇ⁈」
「そ、外に出て逃げるか‼」
「馬鹿野郎! こんな時に外に出て逃げると死亡フラグだろうどう考えて」
べた!
『ゆるさない』
『ゆるさない』
『まつりをけがした』
『ゆるさない』
無数の目のない少女が車の窓中にはりつきそう言う。
「「ぎゃあああああああ‼」」
車から男達の悲鳴が聞こえた。
翌朝──
「あれ、俺等なんでここにいるんだ?」
「わかんねぇけど、なんか恐ろしい目にあった気がする、帰ろうぜ」
「ああ、そうだな……」
男達は村を出て行った。
「村の祭りの配信はないよマヨイ」
「ありがとう、フエねえちゃん、脅かすのも手伝ってくれて」
あれはフエがマヨイの姿見を移して作成した生身のある分身をつくり、車を襲撃して、記憶も奪ったのだった。
勿論データも。
「まったく、マヨイガの社なんだから人目についたら不味いんだっつーの」
フエはそう言いながらノートパソコンを閉じる。
「なのー」
「こうして、村で奉られてるのがギリギリよ、名前のない神様として奉られてるのがギリギリ。大勢の人が来たらマヨイはあそこに居られなくなるんだから」
「そうだから、内緒がいいの」
「村の人は内緒にしてくれてるから有り難いよね」
「うん!」
マヨイは満面の笑みを浮かべた。
「わざわざそういうのの調査を私の自室でする意味は?」
紅茶を飲んでいた零は不満げに言った。
「零さんの護衛も兼ねてるんだよ、今ニルスとレオンと慎次いないでしょう?」
「まぁ、そうだが」
「だから気にしないで」
「全く……」
零は疲れたようにカップの紅茶を飲み干した──
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