164 / 238
イライラの元~本体への攻撃~
しおりを挟む「ん゛ー……」
その日、フエはベッドの上でもだもだしていた。
「フエ、どうしたんだい?」
「なんかイライラする」
フエは顔を上げて柊に言うと、もう一度ベッドに突っ伏してもだもだと動き始めた。
「何をしているフエ」
「あ、紅姉さん、なーんかイライラしてて……」
「本体の方に何かあったんじゃないか?」
「……ちょっと本体の所行ってきます」
フエはベッドから起き上がり、姿を消した。
「やっぱり異物が来てやがったか!」
本体の眠る場所の天蓋と四つの玉に攻撃を加える異形が居た。
「安眠妨害すんな!」
黒い触手の集まりのような異形をフエは黒い肉壁で包み込み捕食する。
しばらくジタバタともがいていたが、やがて喰われた。
「全くここに居る異形は歌ったり音楽奏でるしか能がないからなぁ……」
フエはそう言ってジト目で何もできずに居た異形達を見る。
「もっと結界強固にしておこう」
フエは天蓋と四つの玉の結界を強固な者にした。
それに満足し終えると、そのまま帰って行った。
「ただいまー」
会議室にフエは戻って来た。
「どうだった?」
「黒いうじゃうじゃな奴が私の本体たたき起こそうと攻撃し始めてた」
「何だと?」
フエの言葉に、紅は眉をひそめる。
「あ、でも、捕食したし大丈夫だよ」
「それなら良いが他は?」
「他はなんとも無かったよ、半径一億光年を感知したけど問題なかったし」
「そうか……まぁ、イライラの原因が分かって良かったな」
「うん」
「で、異形性の発露は」
「今のところ起きてない」
「なら、ちょうど良い」
「?」
紅の言葉にフエは首をかしげる。
「慎次から連絡が入ってな『俺では食い切れん異形が出た、押さえ込むのがやっとだ』とのことだ」
「慎次は零さんといるじゃん、やっべ!」
フエはその場から飛び上がり姿を消した。
「……相変わらず花嫁が絡むと慌ただしい子だ」
と、呆れたように紅は呟いた。
「ちっ、何だこいつらは」
「慎次大丈夫か?」
「押さえ込むのが手一杯だ」
人気の無い廃ビルの中で、零と慎次は共に居た。
慎次は何かの異形を抑え付けているようだ。
「じゃっじゃじゃーん! 呼ばれましたよフエちゃんです!」
「空気読め」
明るくテンションを上げて現れたフエに慎次は冷めた声で呟いた。
「うるさいなーそれより異形は?」
「そこだ」
無数の手で押しつぶされている異形を透視してフエは驚いた。
「私の本体起こそうとした異形と同じじゃん!」
「マジか」
「肉片残らず喰らい尽くしてやる」
フエはそう言って黒い肉癖で慎次の影を包むと慎次は影を消失させた。
するとジタバタともがき始めた。
「世界破壊企んでんじゃねーよ、このくそ異形!」
フエはそう言うと肉癖は異形を捕食してしまった。
「うっぷまっず!」
「口直しにお茶会するか?」
「あーそうだね、異形性発露してないし、お茶会でいいか」
「それじゃあ帰るぞ」
零と慎次の後を追い、フエは事務所へと向かった。
そこで軽くお茶をして、そしてニルスを呼びつける。
「ニルス、今回の異形アンタがなんかした?」
フエはじとりとニルスを睨み付けた。
「恐れ多いですが我が主を目覚めさせる等とんでもないことはいくら、破滅と混沌を好む私でもいたしません」
「となると、あの異形は?」
「この間貴方様が眠りについたときに生まれたのではないかと」
「マジか」
「異形の多くが破滅と混沌を望みます、お忘れ無きよう」
「アンタもその一人なの、忘れんからね!」
「これは手厳しい……」
「あーあ、本当休眠期に入るのどうにかならんかなぁ」
フエは疲れたようにいいその場を後にした。
「気づいてないようですが、貴方自身が破滅と混沌を望んでいる一面がある事が異形を生み出している……」
「まぁ、私が言ったところでどうにもなりませんがね」
ニルスはにたりと笑ってその場を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる