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命を奪う意味

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「死刑だ! 死刑!」
「そうよ、死刑よ!!」


「……」
 イロンは町民からの言葉に悩んでいた。
「こうなること位分かっていただろう、だから私は最初に殺すと言ったんだ」
 ゼロはイロンにそう言う。
「分かっていた、でも彼に生きて欲しかった……!!」
「……それも無駄な事だ」
「え……」
 イロンの茶色の目が大きく開かれる。
「あの魔方陣を書いた時点で奴の寿命は減り、私がとどめに減らしてやった。後三日ももたんだろう」
「……」
「それと、前町長を暗殺したのは貴方だな、イロン」
「……その通りだ。圧政、暴力私はそれに耐えきれなかったのだ……!」
「ならば貴方はよく政治をこの街でする必要がある」
「私を、責めないのか?」
「前町長が生きていたなら私が殺していた、それくらい分かる話だ」
「……」
「貴方は街の為に尽くせ、それが贖罪だ」
「……わかりました」


 断頭台に立たされるロファを皆が見つめる。
 憎悪を込めて。
 只二人が、憐憫の眼差しを向けていた。
 一人はイロン、もう一人は──
 ゼロだった。


『ロファは孤児だったんだ、そこをガゼリオに拾われて育てられたんだ』
『だから、命の恩人という言葉では生やさしい程にロファはガゼリオを盲信した』
『ガゼリオだけが、彼の絶対だったんだ……』
『私はこの町で育ち、良くしたいと役所に入りそこでロファと遭いまぁ、殴り合ったりする程度に友人にはなったんだ……』
『だが……私は友より、町の人を取った。そうするしか、無かったんだ……』


「ころーせ! ころーせ!」
「早くやっちまえー!」

 ロファは動かない、ただ下を見ている。
 ゼロはもう気づいていた。
 彼がもう──
 死んでいる事に。


 刃が落ち、首が落とされる。
 それを見終わったゼロは街を後にすることにした。


「ゼロさん!」
「何だ、町長……何だこの人だかりは」
「皆貴方に救われた方です、私はこの街をよりよい街にします! 街の皆さんと一緒に!!」
「「「「「助けてくださり有り難うございました!」」」」」
「気にするな」
 ゼロはそう言って背を向けて街を後にした。


 町長が用意した馬車に乗り、次の場所へと向かう。


「今回は大分大事になったなぁ?」
「仕方あるまい」
「……お嬢ちゃん、何を考えている」
「私を捨てた奴らが近いうち私を亡き者にしようとするのではないかなとな」
「げ、マジかよ」
「お前達と引き離され、牢屋に入れられて監禁されたらお終いだ。私の命は短い」
「あの連中の命を喰らってもか?」
「ああ、だから──」

「とびきり治安が悪い所へ行こうと思う」




「ほ、本当にここでいいのかい?」
「構わない、さぁ早く行って」
「気をつけなよ!」
 馬車が行くのを見送り、じろりとその場所の入り口付近を見渡す。
「いるんだろ? 来い。来ないならこちらから行くぞ」
 下品な笑いを浮かべる男達にゼロはナイフを向けて向かっていく。
 男達の足をシリウスが絡め取り動けなくした隙に、全員にナイフを切りつけた。

「やっちまった?」
「いや、殺してはいないが、命はすってやった」
 マグノリアにそう返すと、先ほどの街とは違い、治安の悪い場所へと足を踏み入れていった。




「結構命を奪えたな」
 ゼロは安全な場所を作り、隠れると果実をかじった。
「そいつはよかった!」
「だが、長いするつもりは無い。明日出るぞ」
「ずいぶん早いな、何かあるのか?」
「何も」

 ゼロはそう言ってシリウスにくるまるように毛布を被って眠った。

「嫌な予感がするねぇ、気をつけとくか」

 マグノリアもそう呟いて横になった。





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