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夢遊病?
「このパン硬いけど、その分噛み締めると味が出てうめーな!」
少し硬いパンにかじりつきながら俺はアドリアに言う。
「そ、そうか……」
アドリアは、少しあっけにとられた表情で、パンをスープに浸しながら食べていた。
「ん? そうやって食べるのが普通なのか?」
「普通……といえばそうなるな……」
「なるほど」
俺も試しにやってみると、パンがスープの味を吸ってより旨くなっていた。
「うめぇ、うめぇ!」
元いた世界の味と比べるとやや質が落ちるがそれでも普段の食生活に比べたら何倍も増しだったので俺はアドリアの料理を残さず食べた。
「あー美味かった! ありがとうな! お礼に何か手伝うぜ!」
「なら、食器を洗って欲しい」
「いいぜそのくらい」
アドリアに言われて、俺はキッチンに案内されると、現代の台所とよく似た形状をしていた。
「水道でも引いてるのか?」
「いや、水の魔術核を使用しているんだ、水を浄化し再利用する仕組みを作っている。トイレも同じような仕組みだ」
「魔術かよ、ますますファンタジーだな!」
俺はわくわくしながら蛇口をひねり水を出すと、食器の汚れは綺麗に落ちていった。
布で拭き、食器棚にしまう。
「他に何かやることはないか?」
「今は特に……いや、暖炉の薪割りを頼もうか」
「それくらいお安いご用だ」
「ガイ……お人好しと言われたことはないか?」
「全く! 恩人相手にこれくらいなら普通だろ?」
「そうなのか……」
アドリアは考え込むような仕草をした。
「いや、でも明日にしよう。今日はもう遅い。お前は人間だ。夜は眠るのが良いだろう」
「そうか? ああ、確かにそうだな。じゃあ今日は寝ることにするよ」
「待て、風呂も同じようにあるから入ってから寝てくれ」
「おお、マジか、ありがとうな、アドリア」
俺がにかっと笑うとアドリアは顔を伏せた。
──何かやったっけ俺?──
とか考えながら、俺は宛がわれた部屋へと戻った。
窓の外から月を見上げる。
俺がいた世界と同じように見えて、違うのは、月らしき物体が三つある事。
一つは俺がいた世界と同じくらい、あとの二つはその半分くらいの大きさだった。
「本当異世界なんだなぁ……」
そう思うと二度と会えない家族や友人達の事が少し悲しくなった。
泣きそうになるのを堪えてベッドに潜って目をつぶった。
明日から忙しいだろう、頑張らないとな!
空元気に自分を励ましながら眠りに落ちた。
早朝目を覚ますと、目の前でアドリアが眠っていた。
「ヴァー?!」
思わず声を上げる俺に反応して、アドリアは金色のまつげを震わせながら目を開けた。
よくよく見ると、ネグリジェ? っぽいのを着ていて細い脚が丸見えで、色っぽく見えた。
寝ぼけの表情もぽんやりとしていて、どこか可愛らしく見えた、男なのに。
「……」
「あ、アドリア?」
俺が声をかけると、警戒心丸出しの表情になり距離を取った。
「何故ここに居る?!」
「違う違う!! ここアンタが俺に宛がってくれた部屋!!」
「な……そん……」
部屋を見渡して顔を真っ赤にしたアドリアは部屋を勢いよく出て行った。
「……む、夢遊病持ちだったのか?」
それしか考えつかなくて、取りあえず着替えてからアドリアを探しに行った。
風呂場でバスタブに冷水で浸かってた、寝間着のまま。
──ダンピール水あかんだろう!──
と内心ツッコみつつ、バスタブから引き上げて寝間着を脱がせて念のため持ってきた俺用の服を羽織らせる。
「冷水は心臓に悪いからやめろ!」
そう言いながらわしわしとアドリアの長い金色の髪をタオルで乾かす。
「……その、怒らないのか?」
「あ? 夢遊病持ちを怒る気はないし、恩人だからな。まぁ、寝起きに疑われたのは慌てたけどな……」
「……」
俺はそう言いながらアドリアを見る。
美人と言われるような女優よりも美しい顔立ち。
細いが引き締まった体。
色白の肌。
──エロいと思う──
男の俺でもエロいと思うのだ、何か色々とあったのだろう。
「とにかく、体を大事にしてくれ、な?」
「……頼る当てが他に無いからか?」
「んな訳あるか、恩人が無茶してたら止めるだろう普通」
「……」
「全く、この世界というかお前はどういう人生、いやダンピール生を歩んで──」
最後まで言う前に、アドリアに俺はキスをされた。
ほんの数秒の事だった。
ほんのりと冷たいが、柔らかな唇の感触を感じた。
アドリアは我に返ったようにそのままの格好で自室に戻って行ってしまった。
「な、なん、なん?」
俺は戸惑うしか無かった。
その日、アドリアは俺の前に直接姿を現さず、食事だけが用意されていた。
アドリアの部屋に行っても反応はないし、扉は開かないので俺は食事を取って、皿を洗い、外の薪割り場らしき場所で薪割りをして一日を過ごした。
夜、目を閉じて眠りかけていると扉が開いた。
寝間着を着たアドリアが部屋に入ってきた。
目は虚ろで、泣きはらした痕があった。
アドリアは俺の隣に横になりぶつぶつと呟いていた。
「独りにしないでくれ」
と。
俺はアドリアが、置いて行かれたのか、それともダンピールだから独りにならざる得なかったのかは分からないけれども抱き寄せて呟いた。
「おう、俺がいる。アンタと一緒にいるから、だから泣くな」
そう言うと、アドリアは安心したように目を閉じた。
俺はアドリアの背中を撫でながら眠りに落ちた。
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