異世界転移して恋人に捨てられたら、伯爵様に見初められました

琴葉悠

文字の大きさ
1 / 1

異世界転移して恋人に捨てられたら、伯爵様に見初められました

しおりを挟む



「お前のスキルいらねぇや、俺はこの『魅了』スキルでハーレム作って過ごすからお前邪魔」
「そんな……!!」
 私は絶望の淵にたたき込まれたような気分でした。




 ある日の事、突然景色が変わったと思ったら私は恋人の健介けんすけと異世界に来ていました。
「異世界人よ、どうか魔王を倒して貰いたい」
 そんな事言われても私はどうすることもできません。
「貴方達にはスキルが備わってるはずです……『癒やし』と『魅了』ですか」
「俺が魅了?」
「はい」
 健介は何を思ったのか女性騎士に声をかけました。
「俺と魔王退治にいってくれない?」
「はい♡ 勇者様♡」
「よし、これならいけるぞ」
 健介は手当たり次第女性に声をかけました。

「け、健介……」
「お前のスキルいらねぇや、俺はこの『魅了』スキルでハーレム作って過ごすからお前邪魔」
「そんな……!!」
 健介はそう言って城から出て行ってしまいました。
 一人ぽつんと残された私は呆然とするだけです。
「お嬢さん、宜しければ私の屋敷に」
 優しい笑みを浮かべた男性が私に声をかけてくれました。
「でも、ご迷惑になるのでは……?」
「いいのですよ」
 私はお言葉に甘えることにしました。


「神からの加護たるスキルを持つと本性がでると言うがまさしくその通りだった」
「……」
「貴方を責めてる訳ではない、が貴方を責めてるように聞こえてしまうでしょう」
 男性──辺境伯様は、私に静かに語りかけながらワインを傾けていました。
「私のスキル『癒やし』……」
「『癒やし』は割と一般的なスキルです。神官ならば持ってるのが一般的です」
「……」
「ですが貴方の『癒やし』のスキルは他の『癒やし』とはかけ離れている気がするんです」
「そう、ですか」
「私の領地は魔物との戦いの最前線です、宜しければ来ていただきたい」
「……はい、私で良ければ」

 私にはそれしか道はありませんでした。

 恋人に捨てられ、それを追いかける勇気など、なかったのですから。




「あの者は別のルートを通るようです、こちらには来ないでしょう」
「はい……」
 馬車で移動しながらそんな話をしていました。
 会わないなら、心が乱れる事もないだろう、そう思いました。
 馬鹿にされることもないと。

 領地に着くと、辺境伯様は住民の方々に歓迎され、また自警団の方々がいらっしゃいました。
「済まないが、君の力を見せて欲しい」
「は、はい」
 そのときの私は期待に応えようと必死でした。

 負傷者だらけの部屋に通されると、私は「傷よ、怪我よ、治って」と願いました。
 すると、周囲が光り輝き、そして光は消えました。
「あ、あれ? おれの腕くっついてる!」
「俺の手が元通りだ!」
「俺の足もだ!」
 負傷していた方々の傷が癒えていました。
「ユイ、君の力は素晴らしい……! 本当にありがとう!!」
「いえ……そんな」
 辺境伯様に言われて、私はそんなことはないと思ってしまいました。
 本当に自分の力なのか確信が持てなかったからです。
「間違いなく、今のは君の力だ。誇っていい」
「あ、ありがとう、ございます」
 辺境伯様が言うなら事実なのだろうと私は受け入れました。

 それから毎日負傷者や病人を『癒やし』の力で治していきました。

 私の力は国中に知れ渡り、他の場所では治療が難しいと言われた方々も来るようになり、私はその方達も治療しました。




「ユイ、今日も治療お疲れ様」
「はい、辺境伯様」
「その、もし宜しければ私の妻になってくれないか?」
「え?」
 突然の申し出に私は驚きました。
「君の能力もあるが、私は君の献身ぶりに心を打たれた。君は多くの人々を治療してきた。多くの人々が君に感謝している」
「それは……辺境伯様が、私の能力を見いだしてくれたからです」
「だからこそ、君を他の者に取られたくない、君のような素晴らしい女性を奪われたくない。どうか、私の妻になってくれ」
「……私で、良ければ」
「本当かい?! こんな嬉しいことはない!!」
 辺境伯様は私を抱き上げてくるくると回ります。
「へ、辺境伯様」
「ロラン。ロランと呼んでくれ、私の可愛い妻」
「ロラン……様」
「ユイ……」
 月光の下で私達はキスをしました。


 それからすぐ、式を挙げ私は領民の方々に祝福されました。


 そしてまた病人と怪我人の方々の治療に没頭する日々が始まりました。
 夜はロラン様との時間を大切にし、日中は治療と共に、ロラン様の無事を祈って過ごしていました。


 そんな日々を過ごしていると、ある日見知った──
 いえ、二度と会いたくない人物が私の領地に連れてこられました。
「健介……」
「ゆ、優衣……た、助けてくれ……」
 見る影もなく、ぼろぼろの彼に哀憐の情は湧きますが、その程度です。
「一体何のようだ、この者を何故連れてきた?!」
 戻ってきたロラン様が怒鳴ります。
「『魅了』のスキルでいろんな女性を虜にして進んでいたんだが……恋人がいる連中からも奪ったらしくて恨みを買ってボコボコにされたんだ……ボコボコにされた途端魅了が切れて、女性達は全員戻っていったけど……」
「ユイ、治療するのか?」
「治療は、します。ですが──」

「その方を牢屋へ、二度と同じ事をしないように。女性を近づかせないように」
「わかりました……ですが彼と視線を合わせてはいけませんよ、貴方も魅了されてしまいます」
「はい」

 私は、健介を最低限治療しました。
 彼の方は見ないようにして。

「牢屋へ連れて行け!!」
「なぁ、優衣まってくれよ!! 俺が悪かった!! やり直そう!!」
「やり直す?? どうしてそんな言葉が言えるのかしら、私は嫌よ!!」
「なあ、こっちを見てくれ!!」
「見ないわ!! 魅了を使って私を操ろうなんて魂胆分かってるのよ」
 そう言い放つと健介は私に罵詈雑言を吐きながら牢屋へ連れて行かれました。

「男しかいない牢屋の奥深くに入れさせてもらった」
「そう……よかった」
「君はやはり慈悲深いね、あんな奴治療しなくても良かったのに」
「怪我人は見過ごせません」
「私はそんな君が好きだとも」
 ロラン様はそう言うと私にキスをしてきました。


 魔王は、次に召喚された方々に討伐され、世界に平和が戻ったそうです。


 ですが、私は怪我人を、病人を治療します。
 きっとそのために、私はここにいるのですから──





しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

処理中です...