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過去の影
しおりを挟む雨が降る日、マリヤは屋敷から不安そうに外を見ていた。
「……雨が強いなぁ……雷は怖いから落ちないといいなぁ……」
「何だ貴様、雷が怖いのか」
「あびゃあ!」
いつものように背後から声をかけられ、マリヤはひっくり返りそうになった。
それをブラッドが受け止めて、事なきを得る。
「ぶ、ブラッド様、背後からいきなり音もなく近づいて声をかけるのはやめて下さいな!」
「いや、これは私の楽しみなのでな、すまんが断る」
「そ、そんなぁ……」
却下され、半泣きのマリヤをみてブラッドは邪悪に笑うが、その直後後頭部を何かにはたかれた。
ブラッドが後ろを振り返れば、そこには仏頂面のレアが新聞紙を片手に立っていた。
「貴様はいつもいつも……!」
「お前に言われる筋合いはない」
そう言って新聞をブラッドの顔にたたきつけてから、不機嫌そうに部屋を出て行った。
ブラッドはその様子にわずかに眉を潜めると新聞を開き、一瞬目を見開いた。
そして舌打ちすると、新聞を一瞬で燃やしてしまう。
「ああ、まだ見てないのに……!」
「貴様はみなくていいニュース満載だ、みる必要もない」
ブラッドが少し語気を強めていうと、マリヤはびくっと身体を振るわせてから頷いた。
ブラッドはその様子をみて舌打ちする。
「すまん、私らしくもなかったな……」
ブラッドはそう謝罪すると、呆然とたっているマリヤをおいてその場から姿を消した。
「おい、レアあのニュースは何だ?! 不老不死の研究再開だと?!」
ブラッドはレアの家に向かうと、すでに家に戻っていたレアに問いただす。
「私が聞きたい。まだアレが残っていたと考えると私の失態かつお前の失態でもあるがな」
「ぐ……! 研究者の中にあの爺の名前がないのはありがたかったが、それがないとなるとまた『失敗』するのが見えるぞ!」
「『失敗』するだろうな、前のことで懲りてないらしい、それに懲りてないどころか悪化したようだ」
レアが深いため息をつく。
「また、『正義の味方』をするつもりか?」
「『正義の味方』をするつもりはないぞ、ただ火の粉は払うだけだ」
緊迫した会話が続く中、それを壊すようにチャイムの音が鳴り響いた。
レアは舌打ちし、チャイムに応答する前にモニターに移る訪問者をみる。
そこにはジョシュアと仮面の男――ダーシュがいた。
「何でこいつ等がここに?!」
「……」
驚くブラッドとは反対に冷静な顔をしているように見えるレアは、なにを思ったのかドアをあけた。
「おおーいたみたいだね、よかったよ」
「ニュースになるまで放置していた貴様等の顔を拝みに着たぞ」
「なんだと……!」
「ブラッド、事実だ、受け止めろ」
「ぐっ……」
唸るブラッドとは反対に、レアは冷静に対応していた。
「あの事件についてはもう終わったものだと私達は判断していた、結果がこうなったのは否定できない」
「そこまでいうことじゃないんじゃないかな、あの事件は少なくとも君たちのせいじゃない、当事者がまだ懲りてなかったのが問題だからね」
「しかし、このままだと世界規模で大災害レベルの被害が生まれるぞ」
「ああ、じゃから君らに依頼にきたんじゃよ」
「依頼?」
「そう、ヴィランとしてこの計画、ぶっこわしてほしいんだよね。レアくんかブラッドくんのどちらかがやってくれればいい。マリヤくんはなーんにも知らない部外者だから、彼女には知らせないように対応してほしい」
「わかった、では私がやろう」
「レア?」
ジョシュアの言葉を聞いたレアが颯爽と名乗りをあげると、ブラッドが驚きの声をあげる。
「私が完全処分しそこなったのが原因だ。できそこない達全員の。ならば私が行こう。患者に被害がでる前に、二度も出させはしない」
「そうか、では頼んだよレアくん」
「わかった。そういえばダーシュ、お前はどうしてここにきた?」
「……そこの老人に貴様の家を聞かれたのだ。多分そこにいるとな」
「……食えない爺さんだな、貴方は」
「ほっほっほ」
レアが渋い顔をすると、ジョシュアは朗らかに笑った。
「新聞ではああ言っているが、まだまだ手のうちようはある状態なのは把握ずみだから、頑張ってくれると嬉しいよ」
「解った」
「……では私はなにをすればいいのだ」
珍しく不機嫌丸出しのブラッドに、レアは呆れのため息をついた。
「いつも通りマリヤに張り付いて、あの子を外にださないようにしろ。部外者を通すな、全て私がやる」
「……」
「――今回かぎりは、貴様のおいたを見逃してやる、好きにしろ」
不機嫌な顔のままのブラッドに、レアは疲れたような顔をして答えると、ブラッドは目を丸くしてから邪悪に笑った。
「ならいいだろう、大人しく待っていてやる」
「そうしろ」
ブラッドが姿を消すと、レアははぁとため息をついてから、仮面の男の渋い顔をみて、すこし呆れた笑いを浮かべた。
「何だ、貴様もマリヤが好きなのか」
「あの才能がもったいないと思っているだけだ」
「そうか、そういうことにしておこう」
「ほっほっほ、マリヤくん、モテモテだねぇ」
楽しげな老人の言葉に、レアとダーシュはそろってため息をついた。
二人がいない間マリヤは一人、屋敷でフミと遊んでいた。
「ブラッド様たち遅いねぇ」
「誰が遅いだと?」
「ぷぎゃぁ!!」
ブラッドが顔を見せると、マリヤはソファーにさらに身体を沈めて驚きをあらわにした。
「ぶ、ブラッド様! 驚かさないでくださいよぉ」
「いや、すまん、やっぱり貴様のその顔をみていると気分がいい」
「え、ええ――」
マリヤが不満そうな顔のまま起きあがると、ブラッドは彼女の隣に座り彼女を抱き寄せる。
「ぶ、ブラッド様?!」
「今日は気分がいいんだ、最悪の気分から最高の気分になった」
「いや、訳がわかりませんて――!」
混乱するマリヤをよそに、ブラッドは気分良さげに高笑いを続けた――
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