私とマリヤの世界征服録

琴葉悠

文字の大きさ
27 / 30

奪還

しおりを挟む

 大企業といわれるマイヤー社の前にブラッドとレアは姿を出現させると、周囲の様子を見渡した。
「厳重な警備だな」
「どうする?」
「突破するまでだ」
「そうだな」
 二人そろって警備員のいる場所へと飛び込んでいく。
 警備員は銃口を向けて弾丸を二人に放つが、二人はそれを気にもせずよけて、警備員を蹴り倒し、気絶させる。
 建物の中に入るなり警報が鳴り響いたが、二人は気にすることなく進んでいく。
 ブラッドを先頭に、レアが続く形で建物の奥へ奥へと移動していく。
「おい、こっちで道は合ってるのか?」
「マリヤのいる場所は分かると言ってるだろう!」
「そうだな、マリヤに関しては貴様は犬より信頼できる」
「どういう意味だ!」
「匂いをたどる犬よりも誤魔化されないってことだ」
 レアとブラッドはいつもの調子で会話をしながら、警備員たちをなぎ倒していく。
 警備員側は、二人が異形の何かに見えているかのようにどこか怯え、冷静さを欠いていた。
 しばらく、警備員をなぎ倒しながら進んでいくと、頑丈な扉の前にたどり着く。
「……堅いな、これは『生物』じゃないから私には破壊できんぞ」
 レアは扉を軽くノックすると、困ったようなため息をついた。
「何簡単なことだ、私が壊せばいい」
 手袋を外し、鋭い爪と手を出すとブラッドはその異形じみた手で何回も何十回も扉を殴りつけた。
 すると扉はその圧に耐えきれなくなったのか最期には大穴をあけて壊れた。
「結構頑丈だったな」
「何回殴った?」
「56回だ」
「お前の攻撃56回も耐えるとはなかなかの品だな」
「たぶんマリヤが以前開発した金属を使ったのだろう、販売してたからな、こうして別の形でマリヤの発明品を目にすると改めて優秀さが分かるな」
 ブラッドは自慢げにいうと、そのまま穴から部屋の中へと入っていく。
 部屋の中には大量の培養管があり、その中には異形になった状態の何かが保存されていた。
「……全部壊したいのだが」
「後にしよう、私がすべて壊す」
 培養管の中の物を見て、気分を害したブラッドに、レアはそう冷静に返した。
「それよりもマリヤだ」
「そうだな、分かっている」
 ブラッドは部屋の奥へと進んでいく。
 再度同じ扉があった。
「今度は少し薄めだな」
「……ロックが不用心に外されている何かあるぞ」
「何か、か」
 レアの言葉に、ブラッドは神経を尖らせながら扉を開かせた。
 扉の向こうの部屋には拘束されたマリヤと――彼女を人質にとるかのように盾にしている男がいた。
「マリヤ!」
「ち、近づくんじゃないぞ!!」
 男は虚勢を張りながら後ろに後ずさりする。
「それ以上近づいたら、この女に新薬を投薬してやる! 特効薬でも効くか分からない代物だぞ!」
「……!」
 その言葉に、レアとブラッドは動きを止める、止めざるえなかった。
 そして動きを止めてマリヤを見る、意識はあるようだが、ひどく落ち着いているように見える。
「――ブラッド様、レア先生、私の事は大丈夫です。 ですからどうか、この人をぶちのめして下さい」
「お前……!」
 その言葉に男は注射型の薬を取り出し、マリヤの首に打ち込んだ。
「!!」
 空になった薬が転がった瞬間、男はブラッドの一撃で吹き飛ばされた。
「マリヤ!!」
 拘束されたマリヤを抱き抱えてブラッドは特効薬を取り出し、藁にすがる気持ちで首に注入した。
「は、はは! むだ……え……な、何で変化していないんだ!!」
「……この薬何でできたか分からないほど、私は間抜けではありません」
 マリヤはレアに拘束をとかれながら静かに口を開いた。
「お前、まさかわかっていて……!」
「いろんな発明品を作ってる中で、ブラッド様の細胞登録をする必要があるものもありました、その時気づきました。でも、ブラッド様は何も言わないから気づかないふりをしてました」
「……!!」
 ブラッドは驚きの表情を浮かべてマリヤを見る。
 マリヤは困ったような笑顔を浮かべてブラッド見つめた。
「だからいつ気づいたのバレるかなーってどきどきしてたんです、だからいつも急にでてくるブラッド様に驚いてしまったんです、それ以外もありますけど」
 マリヤは苦笑しながら続けた。
「『不老不死』――それを求めていたのに、いつの間にか兵器に此処ではすり替わってました。被害者だけが増えるのはどちらも同じでしたから」
「お前なら兵器でも『不老不死』でも実現できただろう!! なぜやらない!!」
「私、少し変わったヴィランなんです、臆病で、自分に自信がなくて――そして誰かが傷つくのがとても怖いヴィランなんです」
「ヴィラン?! それのどこがヴィランだ!!」
 マリヤは立ち上がり男を見据えた。
「――世界征服組織ブラッド・クライムに所属してますからねこれでも、だからどうであれ私はヴィランなのです。そして私はブラッド様のものです。あの日からすべて」
 その言葉に、ブラッドはニヤリと笑った。
「――と、いう訳だ。その我々に喧嘩を売ったのだから覚悟はできてるだろうな?」
 男の目の前にブラッドが指をやり、目線を合わせると、男は歯をがちがちならし、絶叫した。
「まだ化け物になりたくないいい! 薬は薬はどこだぁ……!!」
 狂ったように暴れだしたのを見ると、ブラッドはマリヤの元に戻り彼女を抱き抱えてレアと一緒にその場所を後にした。
「しかし、新薬が効かないとは一体何をしていたのだ?」
「特効薬も新薬がありますから、それを事前にワクチンとして注入していただけですよ」
「なるほど、さすがだマリヤ」
「だがあの男を挑発するのはやめた方がよかったぞ」
「ははは……ところで何をしたんですか?」
「ああ、あの男に新薬を注入する幻覚と化け物に変化していく幻覚両方見せただけだ」
「うわぁ……」
「えげつないな」
 やや青ざめた顔をするマリヤと、どん引きするレアにブラッドは少し怒りまじりの表情を浮かべた。
「私たちに喧嘩を売ったのだ、これくらいは当然だ!」
「ブラッド様……」
 培養液の中の物をレアが全て破壊してから三人はマイヤー社の中を少し歩いた。
 そして途中で、歩くのをやめて三人同時に姿を消す。
 すると屋敷の中に三人は移動していた。
「……相変わらず便利な能力だな」
「これくらいはできんとな」
「さて、私は大学にいって負傷者の治療と救助にあたってくる」
 レアはそう言うと、屋敷の外へと出て行った。
「……あのブラッド様……」
「――なんだ」
「二人っきりになれたので、話したいことがあるんです」
「いいだろう、折角だ私の自室で話すぞ」
「はい」
 ブラッドはマリヤを抱えたまま、基地の方へと姿を消した。
 それを見送ったのは、フミという猫一匹だった――




 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...