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そして親になる

跡継ぎ、子作り

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『なるほど、だがお前は次期国王。跡継ぎの問題は避けられんぞ』
「ですよねー」
 跡継ぎの問題はどうやっても避けられない。
 神様の言う通りだ。
 だが、それでも子どもを育てていく自信が無いのはどうしようもない。
『お前は子どもを育てていく自信が無いというが、お前一人で育てるわけでは無いのだぞ』
「まぁ、そうなんですけど……」
 確かに、王族の子どもだ、跡継ぎだとかは一人で育てる訳では無い。
 皆で育てるのだ。
「ただ、ここで疑問なのが」
『何だ?』
「誰との子が私の跡継ぎになるか、です」
 そう重要な事。
『あー……私が適当に調整するからお前はそれを待っておけ』
「えー?! 心構えできないんですけどー?!」
『お前に言うと余計な心労になる』
「ちくせう」
 ごろんごろんとのたうち回る。
『取りあえず、正直に言っておけ。子どもを育てる、親になる自信がまだついていないと。それだけで、向こうは納得してくれる』
「納得はしてくれるけど?」
『それでも、向こうは押してくるぞ』
「ファー!! どないせっちゅうんじゃ!!」
『向こうの言葉を良く聞き、先ほどの私の言葉を思い出して言葉を選べ、違ったら叱る』
「おーにー!!」
『神だと言ってるだろう、分かったら、目覚めるといい』
「ちょっとー!」
 話したい事は山ほどできたのに、それをさせて貰うことなく、私の意識は覚醒した。




 目を覚ますと、皆が側で眠っていた。
 体を起こすと、全員が目を覚ましてしまった。
「ダンテ様、お目覚め、ですか?」
「ええ。と言うより、皆さんを起こしてしまったみたいですね」
「気にするな……」
 エドガルドが眠そうにあくびをした。
「今日はゆっくりしましょう」
「そうだな……」
「そうしましょう……」
 そう言って、再び皆で惰眠を貪った。




 翌日以降、アウトゥンノ王国の観光名所を巡り、土産を買ったり、エルヴィーノ陛下に呼ばれてお茶会をしたりと色々あったが、皆から「子どもが欲しい」発言は無かった。


 そして、季節が冬になり、インヴェルノ王国へと帰還するや否や──
「ダンテ」
「はい、何でしょう?」
「私達は、お前との子が欲しい」
「……えっとつまり子作りしたいと?」
 私の言葉に公式な伴侶達全員が頷いた。
 エドガルドは伴侶ではないので子どもを作ることができない。
 私は少し考え込んだ。
「ダンテ様、嫌、ですか?」
 エリアが不安げにたずねてくるので首を振った。
「嫌という訳ではないのです。私はまだ親になる自信が持てないのです」
「親になる自信?」
 アルバートの問いかけに頷く。
「ええ、皆さんと子作りした場合、私は生まれてきた子どもに親としてキチンと接することができるか不安なのです」
 神様に言われた通り正直に述べる。
「私は無責任な親にはなりたくないのです」
 そう言うと、エドガルドに拳骨を貰った。
「あいだ!!」
 続いてフィレンツォからも拳骨を貰った。
「何なんだ?!」
「無責任、お前に一番ほど遠い言葉だ」
「ダンテ様、貴方がそう考えているのであれば、既に貴方は親としての資格を得ているのです」
「エドガルド……フィレンツォ……」
 二人の言葉に、私はただただ、驚いた。
「分かったら子作りの覚悟をしろ、伴侶達に迷惑だろう」
「……あの覚悟はできたんですが、一つ懸念が」
「何だ?」
「……子どもができた途端父上が退位するなんてないですよね?」
「やろうとしたら母上と共に父上を叱る」
「リディア様にご報告しますのでご安心を」
 その言葉にほっとする。
「良かった……まだ即位はしたくない……心構えがない……」
「ダンテ様……素質はあるのに何故……」
 素質があろうが、無かろうが私には即位はまだ早い!

 子作りをして、ゆっくり子育てをしてから即位とか考えるから!

 そんな事を考えながらその日の夜やったのは──
 子作り前提のまぐわいだった。


 何故子作り前提かというと、同性の場合子どもが欲しいと思わないと子作りできないからだ。
 異性同士なら自然に任せて子作りになるのだが。




 そして、その日からまぐわう事が伴侶達にしばらく禁止になった。

 子どもができているかもしれないのに、まぐわったら流れてしまうからだ。
 なので、エドガルドが独占したがるのを我慢して、皆で裸になって体に触れあう程度の行為で終わるようにしている。

 そして一ヶ月経った頃──

「気持ちが悪い……」
「パンの匂いがダメ……」
「飯が食いたくてたまらない」
「何も、食べたくありません……」
 等など、症状を伴侶勢が訴え始めた。

 もう、そっからが私が大変、いやエリアとクレメンテとアルバートと、カルミネが大変なんだけど。
 母のケアをしていた侍女達も総出でエリア達のケアに当たった。
 私もオロオロしてばかりではいられないので、奮い立たせて、背中をさすったり、食べられそうなものを持ってきたりあれこれやってると──

『ダンテ様は皆様の側にいるのが一番です!』

 とフィレンツォに言われて、体をさすったり、苦しいと言う皆の側にいて声をかけたりするだけになった。

 まぁ、何故かそれのおかげで少しばかり皆の負担が和らいでいったのは事実だ。

 ちなみに父は母が妊娠中オロオロして役に立たなかったので、母が仕事とかに専念させたそうだ。

 父上……情けないエピソードばかり私聞いてる気がするんですが?

 と心の中で思うだけで父に言うことはなかった。




「それにしてもさぁ」
『何だ』
 神様に眠っている間私は問いかける。
「王族って不思議な存在ですよね」
『まぁ、この世界の女神達と主神の末裔だからな』
「へー主神……主神?!」
『そうだぞ』
「さすがにそこまでは書いてなかったですよ!?」
 その通りだ、女神の子孫としか本には書かれていなかった。
『女神がただの人と簡単に交わるなんてするか普通?』
「ぐうの音も出ない」
『だろう? それに神が自分の子を地上に遣わす、事がない訳では無かろう?』
「まぁ、確かにそうかも」
 神様の言葉に納得せざる得ない。
『それとなダンテ』
「何ですか?」
『この世界には不妊治療と妊娠の魔法がある』
「あーそういや父上から習いましたね」
『それは、王族がするものだ。王族が貴族や庶民の不妊と、同性同士の妊娠をさせる為の術を覚える必要がある』
「ホワーイ?!」
『まぁ、今後色々とあるだろうが頑張れ』
「ちょっとー!爆弾発言残してさらないでー!」
 神様は姿を消した。




 まじ、あの神様なんなん?





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