星を取りに行こう!

古紫汐桜

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チィ、星を取りに行こう!

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 翌朝、まだお空にはお星さまが輝いていて、薄い紺色の世界が広がっている時間に、ニィはベッドを抜け出しました。
こっそりとテーブルにあるパンに、チィの大好きなレタスにチーズとベーコンとトマトを挟むと、お弁当箱に詰め込みます。
「途中で喉が渇くかもしれないな……」
ニィは冷めたお湯を水筒に入れて、自分のリュックにぎゅうぎゅうに詰め込みます。
小さなチィには身軽で歩かせたいと思い、ニィは大切な荷物は全部、自分のリュックに詰めて額の汗を拭いました。
すると、一面を紺色に染めていた世界が、ゆっくりと紫から白けた朝の空に変わり始めました。
ニィはそっとベッドで眠るチィを起こすと
「チィ、星を取りに行くぞ」
眠そうに目をこするチィに、ニィは満面の笑みを浮かべてそう言いました。
すると、眠そうにしていたチィはいっきに目が覚めたのか、まん丸の大きな目を更に大きく見開いて
「本当に? お星さまに触れるの?」
とチィは呟きました。
 ニィは何にも言わなかったけれど、チィにはニィの満面の笑顔だけで、嘘では無いのだと思えました。
 チィはニィに手伝って貰いながら、パジャマから洋服に着替えると、まだ寝ているトトとカカの寝室を覗き、そっと外へと飛び出しました。
 さぁ!二人の冒険の始まりです。
しかしこの時のニィは、星が住む泉まで行くには、子供の足では相当時間が掛かる事を知りませんでした。
 明るくなる空を見上げると、ニィとチィはワクワクしながら手を繋いで、星を取りに出掛けました。

 二人が星が住む泉を目指して歩いていると、牛乳屋の三毛猫のおばさんとすれ違います。
「おはよう。あら、ニィとチィ。こんな朝早くにお出かけ?」
大きな牛を連れて歩くミケおばさんに
「うん、お星さまを取りに行くんだ」
と、チィが笑顔で答えました。
するとミケおばさんは笑顔のまま
「危ないから、二人だけで遠くへ行ってはダメよ」
そう言うと、2人に新鮮なミルクとチーズの入ったパンを分けてくれました。
二人は朝ごはんを食べて居なかったのを思い出し、二人はミケおばさんにお礼を言うと、近くの芝生に並んで座りチーズの入ったパンと牛乳を頬張ります。
一口牛乳を飲むと、甘いミルクの香りが口いっぱいに広がり、硬いパンに四角く切られたチーズの塩っぱさが美味しいチーズパンは、ミルクとの相性がバッチリでした。
「ニィ、美味しいね」
口の周りにパンくずを付けて笑うチィの口元を、ニィはリュックからハンカチを取り出して拭ってあげると
「ニィは本当に、良いお兄ちゃんだね」
と、ミケおばさんは微笑みました。
二人が食事を終えるのを見届けると、空の牛乳瓶を受け取りながら
「良いかい。星が住む泉は、ユニコーンに乗らないと行けない程、遠い場所にあるんだよ。悪いことは言わないから、もう帰りなさい」
そう言い残し、配達に向かうミケおばさんに手を振って二人は分かれました。

チィは歩きながら、ニィが『やっぱり止める』と言い出すのでは無いかとハラハラしてしていました。
でも、ニィは真っ直ぐ森の先へと進む道を見つめて歩いています。
真っ直ぐ前を見つめるニィの横顔を見上げ、チィはニィが自分のお兄ちゃんで良かったと嬉しくなりました。
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